幕間その3 アイリスとライオニール
「ちっ!腹立たしいぜ!」
ローランドとの試合が終わってからずっと、ライオニールはイライラしていた。
「勝ったのは俺様だ!それなのにあの女!
俺様よりあの弱虫の方が強いだぁ!?
ふざけやがって!」
周囲の人がヒソヒソと話をしている。
「あ!?何をコソコソ話してんだ、テメェら!?」
ライオニールは周囲の人間を威嚇し、その場にいた者たちは逃げたりそっぽを向いたりした。
すると、目の前に1人の女性が現れた。
「ライオニール様、試合お疲れ様でした」
「あ?誰だテメェ?」
「私、アイリスと申します。
今回は残念でしたけど、ライオニール様は頑張ましたわ。私にはわかります」
「……は?何言ってんだ?」
ライオニールはアイリスと名乗った女性に言われた言葉の意味を理解できなかった。
実は、アイリスは試合を見ることが出来なかったのである。
だが、転生前にゲームをプレイしたアイリスは、
このイベントの内容を理解している。
その記憶を頼りに言葉をかけたのである。
「今回負けはしても、次は大丈夫ですわ。
必ずローランド様に勝てますわよ」
アイリスは満面の笑みでライオニールに励ましの言葉をかける。
だがそれは、今のライオニールには絶対にかけてはならない言葉であった。
「負けた!?俺様が!?」
「……へ?」
アイリスはきょとんとしている。
「ふざけんな!!テメェも俺様がアイツより弱いって言いやがるのか!?
勝者は俺様!負けたのはローランド!!
俺様より強い奴はいないんだよ!
どいつもこいつも俺様をコケにしやがって!!」
「お、落ち着いてください、ライオニールさま…」
アイリスは慌ててなだめようとするが、怒れる獅子は止まらない。
「うるせぇ!とっとと俺様の前から失せやがれ!」
完全に腹を立てて去っていくライオニールだった。
ゲームでいうところの、恋愛フラグ…というものは完全にへし折られた。
…………………………
「クソっ!イライラするぜ、まったく!」
1日に2回も、しかも女から弱いと言われるなんて…
そんな屈辱は味わったことがない。
ライオニールの腹の虫は全く収まらず、誰かれ構わずぶっ飛ばしたい気分だった。
そんな時、太陽の光が遮られたのを感じ外を見る。
すると、黒い巨人が街の外れの森に向かっているのが見えた。
「ほぅ…面白そうじゃねぇか…
ちょうどいい!このイライラはアイツをぶっ倒して
晴らさせてもらうぜ!」
ライオニールは腰にある短剣を取り、叫んだ。
「来やがれ!ライオサンダー!!」
その発声と共に現れたのは、大きく鋭く、それでいて刺々しい金色の獅子、聖剣神ライオサンダーであった。