第11話 新たな聖剣神ですわ
「…聖…剣神?」
目の前に現れた獅子は咆哮をあげた。
そして、ゼクスカイザーに向かってくる。
体当たりをして、ゼクスカイザーの上にのしかかった。
そのまま爪で切り裂こうとするところ、ゼクスカイザーは左手を獅子の脇に向ける。
「させませんわ!ソニックブーストナックル!!」
ゼクスカイザーの左腕は獅子に直撃し、吹き飛んでいく。
「女性を押し倒すなんて、お行儀が悪い猫ちゃんですこと」
ゼクスカイザーは起き上がった。
「へぇ、腕が飛ぶったぁ、なかなか面白えことするじゃねぇか!」
「!?喋った!?」
ローランドとセリオンは驚いた。
「やはり聖剣神でしたのね、でもその姿は…」
ゼクシアも半信半疑といった感じだったが、確信に変わった。
「その声…もしかして、あの時の紫髪の女か?」
3人は金色の聖剣神の声に聞き覚えがあった。
「その声…まさかライオニール?」
「お?その飛んでる小せえのから聞こえる声、ローランドか?
テメェら、グルだったのか」
返事をした…ということはライオニールで間違いなさそうだ。
「だがちょうどいい!
テメェにコケにされた借りを返してもらうぜ!」
金色の聖剣神が迫ってくる。
ゼクスカイザーも身構える…が、
「まちなさーーーーーーーい!!」
マーレインの声に遮られる。
「2人とも、今すぐ学園長室に来なさい!」
「は、はい…」
「は?なんで俺様が…」
映像記録の魔道具がライオニールの目前に現れる。
「き・な・さ・い!」
「…お、おう…」
ライオニールも圧力に負け、勝負は一旦お預けとなる。
…………………………
「さて、ライオニールさん、あれはいったいなんなのですか?」
「何って?ライオサンダーだと言ったろうが」
「そのライオサンダーとやらをどうして使えるのか、
を聞いているのです」
ライオニールはマーレインから質問攻めになっている。
ソファにふんぞり帰って座って面倒くさそうだ。
「あの聖剣をどこで手に入れたのか、どうして聖剣神を扱えるのか…
聞かれたことにはきちんと答えなさい」
マーレインもさすがにイライラしていた。
「…うるせぇババア…」
聞こえるか聞こえないかくらいの小さな声で言った
…つもりだったが、マーレインは机を思いっきり叩いた。
「!!…わ、わかったよ、話せばいいんだろ」
意外と女性の尻に敷かれるタイプなのかもしれない…と、ゼクシアは心の中で笑っていた。
ライオニールは身体を起こし、話し始める。
「ガキの頃、家の倉庫で見つけたんだ。
親父からは触るな!って怒られてたんだがよ…
あまりにも綺麗だったから、たまにこっそり見に行ってたんだ。
ある日、こいつを持って願ったんだ。
獅子のように強くなりてえって…
そうしたらアイツ…ライオサンダーが現れたんだ」
ようやく話したが、それでも1番肝心なこと、
どうして扱えるようになったのかの説明がない。
「なるほど、わかりました。
聖剣神は持ち主の創造した姿になるということですので、あのような姿になったのでしょうね」
聖剣神の設定はたしかにそうなのだが、ゲーム上のデザインは簡素な騎士型のロボットというようなものであった。
だから、ライオサンダーを見た時、ゼクシアも戸惑っていた。
名前はあっているのだが、見た目は完全に別物だったからである。
(もしかして、私が転生したことであちこちで影響が出てるのかしら)
マーレインはため息をついた。
「わかりました。とりあえず今後はあなたもゼクシアさんと共に魔獣と戦っていただきたいのですが」
「悪いな、お断りだ」
ライオニールは立ち上がり部屋を去ろうとする。
「待ちなさい!まだ話は終わっていませんよ」
「俺様に指図をすんなよ、俺様は強え奴と戦いてえだけだ。
まあ、今となっちゃ俺様が最強なんだろうがな」
そう言って、ローランドの方を見る。
「魔獣だっけ?あれも大したことなさそうだしな」
と、ライオニールが扉に手をかけようとした時、
「…逃げるのですか?」
と声が聞こえ、あ?と、ライオニールが声のしたほうを睨みつける。
声の主はゼクシアであった。
「私との決着はついていませんよ。
それとも、女が相手だとまともに戦えませんか?」
と、ライオニールを挑発する。
「面白え事言うじゃねえか。俺様がテメェごときに勝てないとでも思ったか?
あの時遮られてなけりゃ、俺様が勝っていたんだ」
「あら、やってみなければわかりませんわよ、
逃げるための言い訳だけはお得意なようですね。
勇ましい獅子とは、なんと程遠いお姿ですこと…」
「お、おい、ゼクシア…」
セリオンがゼクシアを止めようとする。
いくらなんでもやりすぎだ…が、もう遅い。
「…どうやら叩きのめされないとわからねぇようだな…
いいぜ、ゼクシアとやら!俺様と決闘しろ!!」