第1話 わたくし、異世界転生しちゃいましたわ
僕の名前は佐藤創真。
どこにでもいる普通の会社員だ。
毎日、上司に怒鳴られながら、同僚に白い目で見られながらも、自分なりに一生懸命、働いてるつもりだ。
どんなに辛い職場環境でも、僕にだって趣味の一つくらいはある。それは…
(はぁぁぁぁ…新発売のガ◯プラ…かっこいいなぁ…)
そう、僕はいわゆるロボットオタクなのである。模型店やおもちゃ屋でショーケースに並べられているフィギュアやプラモデルを見るのが趣味なのだ。
人間ドラマを重視している、いわゆるリアルロボットも好きではあるが、個人的に好きなのは…
(おおおお!!アルティメットダ◯クーガ!!キタコレ!!カッコいいぃ!!)
そう、あらゆる常識を覆し、無敵の力で世界を守るために闘うスーパーロボット。
僕はこの強さに、偉大な姿に憧れているのである。
いや、恋焦がれてると言っても過言じゃない!
なんせ、スーパーロボットの魅力ってのは…
…おっと、語り出すとキリがないや…
(いやぁ…眼福眼福♩)
気分よく帰路に着く僕。
このくらいの寄り道くらいは許してほしい…
「ただいまぁ」
「遅い!!」
帰ってくるなり、怒鳴られてしまった…
彼女は佐藤光里、僕の妹だ。
父と母は10年前、僕が中学3年生の時に他界している。
僕はまだ小学生だった妹を養うために、中学卒業後、すぐに社会人となったのだ。
「ごめんね、ご飯は…」
「いらない!友達と食べてきたから!」
反抗期…なのだろうか…
最近は妹とあまりまともに会話ができていない。
「…父さん、母さん…」
僕は家族4人の写真を見ながらため息をついた。
とある日の朝。
「もう!着いてこないでよ!」
「い、いや、朝はほら、行く方向、同じだし…」
「いいから!離れて歩いて!」
スマホを触りながら歩く光里。
注意しても、うるさいと一蹴されてしまい、イヤホンをつけて完全に会話をシャットアウトされてしまった。
参ったなぁ…と、思いながら歩いていると、猛スピードで走ってくるトラックが目に入った。
おい待てよ…あれ、信号変わっても止まらないだろ。
まぁ、大体の人が気づいていたから、青になっても渡らなければいいだけの話だ。
そう思っていたのだが、自分の近くにいた人物が歩き出す。
…光里!?まさか!気づいていないのか!?
スマホを操作しながら歩く光里、イヤホンをしているからか、車が近づく音も聞こえない様子だった。
「光里!!!!」
間に合え…間に合え…
そう願いながら、妹に手を伸ばした…
急激なブレーキ音が聞こえ、それを最後に、僕の意識は一旦途切れることになる。
………………………
ドン!という衝撃と共に目を覚ました。
目の前には見知らぬ天井…
あれは…シャンデリア?
それに随分とまぁ、洋風な部屋に、大きなベッド…
少し驚いたが、ゆっくりとその身を起こす。
(…あれ?目線が低い…?)
「…ここは…?」
(…??声が…高い…??)
改めて周りを見渡すと、大きな鏡がある。
僕はどうなったんだ…?
気になったので鏡の前に…
そこには、
青みを帯びた鮮やかな紫の長い髪、赤い瞳、
背丈的には…5〜6歳くらいの少女…
…少女???
僕は鏡にくらい付き、目に穴が開くほど見回した。
(え!?誰!?!?まさか!?これが僕!?!?!?)
戸惑っていると、ドアを叩く音と女性の声がする。
「ゼクシア様!いかがいたしましたか!?」
誰だろ…これだけの部屋だ、使用人かもしれないが…
開けますよ、との声と共にドアが開いた。
そこには、露骨なまでのメイド服の女性がそこには立っていた。
「大丈夫ですか、ゼクシア様」
ゼクシア…どこかで聞いたような…
とりあえず心配させないように、
「ベッドから落ちてしまって…」
「そうでしたか、どこか痛いところはありませんか?」
「ええ、大丈夫よ、ありがとう」
とりあえず、安堵したメイドは、何かあれば呼ぶように、と告げ下がっていく。
それにしてもこの髪色、顔立ち、そして、ゼクシアという名前…
…思い出した!
これ昔、妹にやらされたゲームのキャラだ!しかも悪役令嬢の!!
……いや、落ち着け…少し頭の中を整理しよう。
僕は佐藤創真…
26歳の会社員。
でも、
私はゼクシア・クロムウェル…6歳。
伯爵、レーベン・クロムウェルの1人娘。
そうか、僕、いや、私は…異世界転生したのか…
6歳までのゼクシアの記憶はある…
さっき落ちた衝撃で前世の記憶が蘇った…のか?
…いやいやいや、落ち着いて整理しても意味がわからん!?
トラックに引かれて目が覚めたら悪役令嬢!?
ベ、ベタすぎる…嘘だろ…こんなことってあるのか…
…というか、このままだとマズくないか?
だってこのキャラ、悪役令嬢だぞ?死ぬんだぞ?
いや、確かに死なないエンディングもある。
でもよくてお家追放、悪くて一家まとめて処刑…
破滅しか待ってないじゃないか…
さ、最悪だ…このままじゃ…
…いや、待てよ?
僕はゲームのストーリーを知っている。
ってことは…少なくとも破滅エンドは…回避出来るな…
いや、それどころか…
僕は脳をフル稼働させて、前世の記憶を遡る。
…そうか!そういうこともできるぞ!!
「ふふふ…うふふふふふふ…」
どうしよう…笑いが止まらない…
今思いついたことを実行しようものなら…
僕の…いや、私の中の佐藤創真の魂が燃え盛っているのを感じる。
「オーッホッホッホッホッホ!」
ついついお嬢様特有の笑い方をしてしまった。
ゼクシアのクセなのだろうか…
しかしそれくらいには笑いが込み上げる。
喜びが停めどなく溢れ出してくるのだ。
「やってやる!破滅エンドを回避しながら、長年の夢を叶えることもできる!!
僕…いや、私ならやれますわ!
オーッホッホッホッホッホ!」
真夜中の屋敷に少女の高らかな笑いが響き渡る。
こうして、6歳の少女であるゼクシア・クロムウェルの物語は動き出す。
自らの破滅を回避し、自らの夢を叶えんとする物語が。
初めての投稿作品になります。
ちょっとでも面白いと思っていただけたな嬉しいです。
後書きには書けたら裏話なども書いていこうかなと思っております。
投稿頻度は未定ですが、可能な限り早く投稿していこうと思っています。
どうぞ、よろしくお願いいたします。