赤い疑惑
長々と過去話をしてしまいましたが。あの出会いからもう十年が経ちまして、俺たちは無事高校生になりました。ベリーショートぐらいだった髪型が中学に入ったあたりからロングになり、高校生2年生になった桃代姉さんはスタイルもなんというかすっかり女らしく(胸はそんにないけど)なり校内でもトップレベルの美人さんとして名を馳せてらっしゃる。弟の颯太は中2あたりで成長期に入り高校1年の今では190cm近い大男へと変身を立派に遂げやがった。
かく言う俺はというと成長期が少し遅れ気味で158cmで今のところストップ気味である。まぁこれから伸びるけどね!ぐんと伸びるけどね!別に強がりなんていってないんだからね!……失礼ちょっと取り乱しっちゃった!最近この二人と並んでるとよく弟に間違われることがるけど俺はくじけない。
そのすっかり美人に成長してしまった桃代姉さんなんですが今のところ彼氏は出来ずじまいである。理由は大方察しがつくだろうが小学校学区内が一緒だった人間(男子に限って)は恐怖が身に沁みているというのがしっくりとくる。中学ではガキ大将はなりを潜めた為少し遠い地域から来た人間は何人か告白してきたらしいがすべてKO、その中に少したちの悪いやつが居てその後もしつこく付きまとわれついに切れた桃代姉さんが実力をもってこれをTKO、さらにこれに逆恨みをして仲間を集めて桃代姉さんを襲撃この時は俺たちも居たから良く覚えてるが例の能力を行使してバイクを片腕で持ち上げ投げつけようとするという荒業をやってのけ相手を恐怖のどん底に突き落とした。
ちなみに俺らは何をしていたかと言うと必死で投げるのを止めていました。
そんなこんなでやっと冒頭に戻りまして、美人なんですが彼氏のいない桃代姉さんの夏休みの遊び相手とたびたび召集されているというわけです。
「麦茶で一腹もしたし、そろそろどう致しましょうか?てか、そもそも何するために呼んだのさ」
「この前水着買ったから見せてあげようと思ってね。海かプールいければって」
「ぷっ、そんな乏しい胸見て誰が喜ぶと」
「颯太お前なっ!聞こえるぞ!」
「大丈夫よ。ばっちり聞こえてるから」
ゾクッと寒気が背中を駆け抜ける
「じゃあ、そんな腐った目はいらないわね」
「ねっ姉ちゃん嘘だよ冗だっ、ぎぃやああああああああああ」
二匹の白魚が巣穴に変えるかのような自然な動作で美しい指先が眼球に突き立てられた!ひぃいいいい怖っ!
目を真っ赤に充血させながら床を転げ回る弟を見下ろし一通り悶えているのを確認した後、こちらに振り返り「和樹は私の水着姿を目に焼き付けたいわよね」と確認を取ってくる
「もちろんさっ!今日は桃代姉さんの水着を余すところなく愛でたいね」
「うんっ。そうかそうか和樹は素直でいいわね、じゃあ暑いけど出かけましょうか」
「「了解」」
いつの間にか颯太復活してるし、あいつ最近着々と打たれずよくなってきてんな。いや、そんなことなかったわ充血して涙がとどまるところを知らずあふれ出してる。
そんなこんなでやって来ました!プールさぁここでお楽しみの水着time今日の桃代姉さんの水着は膝下くらいまであるパレオを巻いた黒のビキニタイプ。パレオのスラックスから見える足がたまりませんね、はい。
胸がいつもより膨らんで見えるのはみてみないふり、女のプライドだそうですから昔指摘してプールに沈められたのは今もいい思い出
「水辺に着いたんだからまずはあれでしょ」
「「あれね」」
「せーの」、「「「海だーー!」」」
「ちがう!」、「間違えた!」、「のりで」
「じゃあもう一度」
「「「プールだーーー」」」
ばしゃーん!!!
「超気持ちe」
「生き返るわ~」
「そういやプールとか何年ぶりだろうね?」
「去年も来たからしかも何回も。お前色々大丈夫か颯太」
「そうよ。それに、颯太目が赤いわよ。カルキがもうしみたの?」
「いや、目が赤いの姉ちゃんのせいだから!さっきのまだ治ってないだけだから!」
恐ろしいな。俺なんかさっきの悲鳴が耳にこびりついてはなれないってのにやった本人は即効で忘れてるとか。まぁ、颯太だし心配することもないか、基本が丈夫だし。
「じゃあ少し泳ぎましょ、せっかく来たんだから。流れるプールの流れに逆らってやるという意気込みで泳ぎましょう」
「いいねぇ」
「じゃ、しばし自由行動!散開」
夏のプールはいいもんですね。辺りには裸同然の女性が水に濡れてるんですよ、女性が濡れてるんです。大事なことだから2回言いました。思春期の桃色の思考はこれくらいにして取り敢えずこれからどうしようかな一通り泳いで疲れたから少し休憩でも使用かな。ちょうどすぐ近くのベンチが空いてるしあそこで休憩でもしますか。
「ふぅ、あっちぃ」
「和樹はもう休憩?」
声がしたほうに目をやると桃代姉さんがベンチの隣に腰をかけようとするところだった
「桃代姉さんは?」
「私も少し休憩しようと思ってたところにちょうど和樹がベンチに座ったのが見えたから」
そう言って俺の隣に腰掛ける。水に濡れた桃代姉さんの黒く長い髪が体に張り付いていてなんとも言えない色気を醸し出していて少しドキリとしてしまった。
「疲れたのでジュース買ってきてくれる?」
「……えっ?」
「だからジュースを買ってきてくれるかしら?」
「えっ、ああ。いいよ、買ってくる。何がいいの?」
不覚にも見とれていたらしい。長年一緒にいるんだからいまさら意識も何もないもんだと思うけど?今日は俺疲れてるのかな。
「オレンジお願いしたいんだけど。ってなんかまたボーっとしてない、そんなに疲れた?やっぱり私行こうか」
「いや大丈夫だよ。オレンジでいいんだよね行ってくる」
そう言ってその場を少し急ぎ足で離れていった。何だったんだろ、桃代姉さんにいまさら異性とか意識しないと思うんだけどな