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次期公爵様に婚約を申し込まれましたが公爵夫人なんて向いてないと逃げようとしてたら別の人からも申し込まれました

 翌日、ヴィクトルにカフェでの昨日の騒ぎが耳に入っていないか恐る恐る講義室に入ったが、ヴィクトルと一瞬目が合ったが何も言われることはなかった。まだ知らないのだろう。

 ほっとしてレティシアはいつも通り三人で一日の講義を終えると学園の門を出て少し行ったところにある馬車止めに向かおうと門を出たところで一人の男性に声をかけらた。

「君がオブラン伯爵家のレティシア嬢かい?」

 二十歳前後で長身の男性だった。華やかな顔立ちだが眉毛が細くてちょっと嫌だな、とレティシアは思って見ていた。

「はい、私がオブラン伯爵家の娘ですが」

 男性はパッと破顔するとレティシアの前に跪いた。

「私はクララック公爵家嫡男サロモン。どうか私と婚約してほしい」

「え、」

 レティシアだけではなくルシールもソフィーリアも、更にその周辺にいる人たち全員が固まった。

 何故初対面のレティシアにこんな人前で婚約の申し込みができるのか。しかもクララック公爵家だなんて一番ないだろう。あの母にしてあの娘なのだ。伯爵家のレティシアに嫡男が婚約を申し込むなんて許すはずがない。

「折角のお申し出ですが、お断り致します」

 サクッと断るに限る。関わってはいけない家門だ。

「話も聞かず公爵家からの申し込みをそんな簡単に断ってはいけないよ。君の為にも私の為にもこの婚約は受けるべきだ」

「お話を聞くまでもありません。大変光栄なお申し出だと思いますが、私はクララック公爵家に嫁ぐつもりはありません。どうぞご理解ください」

 ルシールたちが成り行きを見守っている。

「クララック公爵家は国立研究所の理事をやっているんだよ。寄付金もしているし。お父上もお喜びになるだろうと思わないかい?」 

 そうだった。困ったな。それを出されると父の顔が浮かんだ。

「それに、私はもっと薬草薬の良い利用法がないか改良をこれから進めようと思っているんだ。レティシア嬢はそういったことが好きだと聞いているよ。

 ああ、妹がすまないね。君に失礼なことを言ったそうだね。でも妹や母のことは気にしないでくれ。結婚が決まったら王都に邸を買おうと思っているからそこに二人で住めば顔を合わせる機会も少ないだろう?」

 何故今こんな話を言い出したのか。タイミングがおかしい。

 もし本当に薬草薬の研究を進めるためだというならもっと早くに申し込みがあっても良さそうなものだ。父には申し訳ないがどうにも受け入れられない話だ。父なら理解してくれると願うしかない。

「申し訳ございませんが、ご辞退させていただきます」

 再度断りの言葉を言うと、サロモンの顔が引きつったのが分かった。それもムッとしたように。

「ああ、ジョフロワ公爵家のヴィクトルからも申し込まれているんだったね。でもそちらは断ると妹から聞いているよ。ヴィクトルにはこちらから断りを入れておこう。

 私たちが婚約するのが一番良い選択だと思わないかい?」

 レティシアは眉間にしわが寄るのを指で押さえることで我慢した。

「ご心配には及びません。それに妹さんに断ると言った覚えはありませんわ。何度も申し訳ございませんがお断りします。我が家を通して申し込みされましてもお断りすることには変わりませんのでこれで失礼致します」

 レティシアがその場を去ろうとした瞬間手首を掴まれた。

「まだ話は終わってないよ。公爵家の私の話を聞かずに立ち去ろうとするのは無礼だろ?レティシア嬢はちゃんと私の話を理解してなかったのかい?」

 掴まれた手首を振りほどこうとレティシアが手を引くがびくともしない。

「レティシアの手を離してください。そのように乱暴にするのはいくら公爵家の名が泣きますわよ」

 ソフィーリアが助け舟を出してくれた。そうしてやっと手首が解放された。

「淑女がそんな怖い顔をするものではないよ。レティシア嬢がちゃんと話を聞いてないから悪いんだよ」

 その言葉にゾッとするものをレティシアは感じた。男性が自分のしたことを女性側のせいにする。それは女性に暴力を振るうことを疑問に思わない男性がする言葉だと感じ、レティシアは掴まれた手首をさすった。 

「いいかい。クララック公爵家は薬学研究所に寄付金をしている。このお金があるから国費だけではまかなえない金額の研究を研究員たちはどんどんできるんだ。

 君が私との婚約を断ればそれは私の代で打ち切られるだろうね。だけど結婚して一緒に研究してくれるなら続けよう。君には初めから断る権利はないんだよ」

 笑顔で言っているがその目が笑っていない。こんな人と一生を共にするなんて嫌だ。

 薬学研究所にどれくらいの金額を寄付しているのかわからないが、家族ならわかってくれると信じている。レティシアの望まないことをさせるような家族ではない。

「いいえ、大変申し訳ございませんがお断りします。そのような脅しを受けて結婚しても幸せになれると思えません」

「聞き分けの悪い頭の女は嫌いだよ。脅しているわけではないんだ。これは提案だ。婚約すれば増額も考えよう。伯爵家から公爵家になれるんだ。どこも悪い話ではない。むしろオブラン伯爵家が良い面ばかりだと思うよ」

 息子も爵位で言って来るのか。それならそれでいい。

「嫌いでかまいません。お断りします。クララック公爵家から寄付金がなくなっても大丈夫なように私がします」

 レティシアが言い切るとサロモンの顔が歪んだ。

「それはジョフロワ公爵家に寄付金をねだるつもりかい?ヴィクトルの婚約を受けて。ダメだよ。ヴィクトルはうちの妹と結婚するんだから」

「ジョフロワ公爵家に頼るつもりはありません」

「へえ、じゃあどうやってお金を集めるつもりだい?そんな強がらないで私と婚約して、薬の研究の協力をしてくれたらお互いに利益があるだろ?」

「お断りしますと何度もお伝えしました。これ以上私に構わないでください。失礼します」

 レティシアは振り切るように走り出した。ルシールたちも付いてくる。

 場所止めまで来て振り返ったがサロモンの姿は見えなかった。

「何なのあれ?怖いわ。クララック公爵家の嫡男て優男風だと記憶してたけど今のでかなり印象が変わったわ」

 ソフィーリアが腕をさすってありえないと言っている。

「寄付金切られても薬学研究所は大丈夫なの?」

 ルシールが心配そうに聞いてくる。

「いくらぐらいかわからないから何とも言えないわ。でも元々が国立だから潰れることはないし、寄付金をしている家門は他にもいるの。ただ公爵家だから発言力はあるわね。

 お父様に相談してみるわ。もう断った後だけど」

「オブラン伯爵ならレティシアの嫌がることはさせないと思うからそこは心配してないんだけど、クララック公爵家が何をしてくるかね。そもそも何故今婚約を申し込んでくるのよ。おかしいわ」

「私もそれは疑問なの。私が家の仕事でしていることって、こんな薬があったらいいとか、その実験台になるとか、どういった保存瓶で売れば良いかとかで、薬そのものの開発に携わっているわけではないのに何故研究の協力なんて話になるのかわからないわ」

「そうね。私もアレン様に聞いてみるわ。クララック公爵家のことについて。気を付けて帰るのよ」

「うんわかった。ありがとう。じゃあまた明日」

 それぞれが迎えの馬車に乗る為に手を振って別れた。

 レティシアは馬車に揺られながら考える。このタイミングでしかも家を通さず直接言いに来るなんて絶対におかしい。明日の朝一番に正式に断りの手紙を出してもらおう。自分は今こんなことで立ち止まるわけにはいかないのだ。計画通りこれからやることを頭の中で整理し直した。


「レティシア様。またお出かけですか。最近多すぎると思います」

 レティシアは街に行くべく準備をしていた。今日は着ていく服は地味目にして、サラに化粧で少し年齢が上に見えるようにしてもらった。

「しかもこの化粧。レティシア様の可愛らしさが半減です!」

「そんなこと言うのサラだけよ。今日はこれでいいの。見つからないようにしたいもの。じゃあ言って来るわね」

 いつも通り家紋のない馬車に乗ると若い御者にいつものところに向かってと頼む。若い御者は元気に返事をすると馬車は動き始めた。

 今日はケーキを食べに行くわけではない。下調べに行くのだ。ヴィクトルからは一人で行動するなと言われたが、ちょっと見に行くだけなら問題ないだろう。

 いつもの場所で御者にお金を渡すとレティシアは薬草薬店に向かった。

「調子はどう?」

 店内に入るとローレンとフランが振り返った。

「レティシア様。どうされましたか?」

「うん、この前の話が気になって」

「その話ならレティシア様が伯爵様にお伝えしてくださったので直ぐに来てくださって、しばらく街の人たちの様子を観察するように言われました。その後詳しく調べると言われまして」

「どう?街の人たち」

「そうですね。うちの商品の売り上げは相変わらず少しずつ落ちてます。口コミで街外れの医者のところに行く人が増えているようですね。ほとんどの症状がすぐに改善すると言って。

 でも改善したあとも通わないといけないようですよ。効き目が切れるとまた症状が出るそうで」

「何よそれ。持病薬みたいじゃない。風邪や倦怠感とかで行くのに病院に通うなんていくらうちより安くてもかかるお金は増えてるじゃない」

「そうなんですよ。うちに戻ってきてくれたお客様に聞いた話では、病院には症状が悪そうな人がたくさんいるらしいですよ。

 それを見て自分もそのうちあんな風になるのかと不安になって通うのを直ぐに止めたそうです。

 何でしょう。街を見ていても疲れた顔をした人が街外れに向かっていくのが以前より増えた気がします」

 そこにフランが混ざってきた。

「僕もそう思いますね。僕は定期的に薬の配達で色んな家に行きますからこの話はよく耳にするようになりました。良く効くから体はしばらく楽だけど反動でまた辛くなると言っている人が多いらしいです。

 昨日行った家の奥さんも友人に聞いて気になっているけど反動があるって噂もあるから怖くてまだ行けてないって言ってました。

 もちろん奥さんにはうちのお薬の方が反動がないから良いですよって言っておきましたよ。

 街の人も色々ですね。通い続けている人もいるし、さっきの人みたいに怖くなってうちに戻ってきてくれる人もいますしね。ただ、若い人が比較的多いようです。通い続けている人は」

「うーん。おかしいわね。病院に行っても全然治ってないじゃない。うちなんて風邪薬を買いに来ても二回程でしょ?その後すぐに再発するなんてこともないし」

「ええ、欲目かもしれませんがだからうちの薬を使った方が良いと思うのですが、離れて行ったお客様も多いんですよ。

 お子様とか年配の方が服用するのは心配ですね。どれだけ良くても効き目がそんなに強いと拒否反応で飲んだ瞬間倒れるかもしれませんし。

 ああ、そうです。伯爵様がとりあえず調べてくださったことで分かっているのは、フランディー王国の医師免許は持っておりません。医師登録はバダルナ国とチューラバン国の医師免許になっているそうです」

「どちらも遠い国ね。何でフランディー王国に来たのかしら?」

「フランディー王国では一応どちらの国の免許でも簡単な病気の診察と治療は許可されてますからね。薬も発達してますし。コーランド王国とかは他国の医師免許では診察など一切できませんよ」

「そうなんだ。それでうちに来たのかしら?二か国分の医師免許を取るなんて結構凄いことじゃない?他国の街外れで町医者をするくらいなら自国ですればいいいのに」

「自国で問題を起こしたとかですかね?それでいられなくなって流れ着いたとか。どちらにせよ、そろそろまた伯爵様にご報告しようと思っていたので近日中にお伺いしますと伝えてください。

 いつもレティシア様に伝言をお願いしてしまって申し訳ありません。丁度いい時に来られますからついついお願いしてしまいました」

「いいのよ。手紙で今の話を書くより私が伝える方が早いしわかりやすいわ。でも自国で医師をできなくなったからってうちに来られてもね。なんだかちょっと迷惑ね。それにフランディー王国がなめられている感じがするわ」

「本当に。問題ない薬なら良いのですが」

「そうね。まあお父様に伝えておくわ。うちの売上も増やさないとだし。じゃあ帰るわね。気を付けて観察続けてね」

 レティシアは店を出ると歩きながら来ていたシャツを掴んでしわをつけよれさせた。そしてポケットに隠し持っていた黒のアイシャドウを目の下に店の窓越しに薄っすらと塗った。

「さて、向かうは街外れの病院。庶民に見えるって言われたし行ってみましょう」

 レティシアは一人つぶやくと街外れの病院に向かった。今日の目的はその薬を手に入れること。手に入れなければ何が使われているかわからない。

 これをスッキリさせなければ新しいことには向き合えない。気になったら自分で動く。それがレティシアの信条なのだ。

 かなり店から歩いたが例の病院はすぐにわかった。何故なら外まで人の列ができているからだ。病院名はアバーエフ医院と書かれている。医師の名前だろうか?このあたりでは聞かない名前だ。

 並んでいる人たちは様々だ。酷そうな人。噂を聞いてきたのかそこまで酷くはなさそうな人。立っているのもやっとの人。一様に顔色が青白い人が多い。

 病院の周りの店や家も何だか建物自体が疲れていそうに見えるのは気のせいではないような気がする。住む人が疲れていれば家も疲れて見えるものだ。

 反対に出てくる人は一様に明るい顔をしている。その差が違い過ぎて異様に感じた。

 しばらく待つと院内へと入ることができた。そして中を見てレティシアは驚いた。

 青白い顔をした患者が診察室から出てきて直ぐに渡されたと思われる薬の入った小瓶を一気に飲んだのだ。家に持ち帰って飲む時間が惜しいとでも言うように。

 そしてしばらくすると青白かった顔に赤みが増し溌溂とした表情に変化した。そしてその患者は会計を済ませるとさっさと足取りも軽く帰って行ったのだ。

 劇的な変わりようにそこまで効く薬って逆におかしい。とレティシアは思った。家の仕事で様々な薬の実験台を買って出ていたがあんな風に変化する薬は今の所この国にはない。

 腹痛を起こした時に試した薬も治まるのに30分はかかった。熱冷ましも夜寝る前に飲んで翌朝熱が下がりスッキリしているという感じだ。

 頭痛薬でも30分はかかるし、レティシアは実験台にならなかったが胃もたれ胸焼けの薬でも1時間はかかると聞いている。

 レティシアの家の店の栄養剤も、あくまでも体力が落ちている病人が一緒に飲めば飲まないより倍治りが早くなるというもので特効薬自体ではない。もちろん疲れを感じている時に単体で飲めば翌日には疲れが取れているのは間違いないが、この病院の薬の様に飲んで直ぐ効果がでるようなものではない。

 院内には座って俯いている人が何人もいる。中にはぶつぶつ言っている人もいて体調不良の人で溢れている状態だ。しかし出てくると直ぐに飲んで元気な顔で帰っていく様は異様だ。

 誰もこれを異様に感じないの?レティシアは不安になった。こんな人が街中にたくさんいるのだと思うと心配にもなってくる。

「セリアさん。診察室へどうぞ」

 レティシアのことだ。勝手に名前を使わせてもらった。ファーストネームだけで通してくれるのだからバレることもない。

「失礼します」

 レティシアは声を疲れた様に聞こえるように抑えながら診察室へと入った。

「初めての方ですね。今日はどうされましたか?」

 医者はフランディー王国にはない顔立ちの中年の男性だった。頭髪は後退し口髭だけが異様に目立つ。お腹は出ていて白衣ははち切れそうだ。口調は丁寧だがどこか寒々しい声に感じた。

「お邸勤めをしているのですが、休日が少なくて疲れが中々とれなくて。今日もやっと昼から休みをもらえてとてもいい病院があると職場の人に聞いたので来ました」

「そうですか。確かに目の下が少し黒いですね。疲れが溜まっているのでしょう。これを飲んで様子を見てください。治らなければまた来てください。お薬をまた出しますから」

「ありがとうございました」

 レティシアは薬の入った小瓶を受け取ると診察室を後にしようとした。

「そうだ。飲むのは早い方が良いですよ。だいぶお疲れの様ですから。なんなら会計までの間に飲んでください」

 レティシアは振り向くと軽くお辞儀をして診察を今度こそ出た。

 たったこれだけで診察が終わり?熱を測るわけでもなく脈さえ測らない。こんなの診察と言えるのか?しかも渡される薬はこれだけなのか医者の後ろの棚にはこの小瓶がずらりと並んでいた。

 怖い。レティシアはさっさと会計を済ませると病院を後にし、しばらく歩いた後走って馬車止めまで戻った。


 その晩。父と義兄の帰宅後家族会議が開かれていた。

「レティシア。よくやった!と言いたいところだが、もうこんなことをしてはいけないよ。うちの研究員にそろそろ行かせようと思っていたのに」

 父が優しく諫めてくる。

「そうだよ。レティシア。もし危険な病院でその場で飲むように強要されたらどうするんだい?もしそれで体調不良にでもなったらクラリスが泣くよ」

 義兄からも注意を受ける。

「そうよ!お姉様はそんなことを可愛い妹にさせたくないわ!何故お父様に相談なく突っ走るの!あなたの悪い癖よ!一人で何でもしようとして!

 前だってうちのメイドが恋人に殴られたと聞いて一人でその人のところにいって叩き返してきたじゃない!危険なことは止めなさいってあの時も言ったでしょ!」

 姉が一番厄介だ。

「薬をもらってきただけよ。口もつけてないわ。お父様これの中身を調べて」

「わかった。今から調べに研究室に戻るよ」

「お義父さん。僕も行きます」

 父と義兄が話していると母が割って入った。

「薬を商売にしているのだから早く解決したい気持ちはわかるけど、一人での行動は危ないのはわかるわね?レティシア。あなたは伯爵家の娘なの。途中で誘拐とかされたらどうするの?

 それから二人とも。もう十時です。睡眠は頭を動かす源です。今から寝て明日の朝早くに研究室に行ってください。焦っても良いことはありませんよ」

 わかりましたね、と父と義兄に言い聞かせる母は我が家で最強かもしれない。

「それから、クララック公爵の令息に婚約を申し込まれた件については断りの手紙を明日伯爵名義で出しておきます。そのような婚約の申し込みと言う名の脅しに屈する必要はありません。

 研究所の寄付金は細々と探せばいいのです。一括でドンと払うような家門でなくても寄付金を出してくれる貴族や商家の数がたくさん集まればそれに見合う金額になります。

 ものは考えようです」

「そうだな。クララック公爵には理事を降りてもらおう。アルゴン公爵に打診してみるよ。前から薬の研究に興味があるようだったからね。だからレティシアは心配せずにいなさい」

「さあ、お風呂に入ってさっさとみんな寝ること!健康は睡眠からよ」

 母の締めくくりで家族会議が終わるとレティシアは自室へと向かった。

「レティシア様。御者が驚いていたそうですよ。馬車に走って来るわ目の下は黒いわで。こっそりお一人で危険なことはお止めください。

 レティシア様に万が一のことがあったらオブラン伯爵家は崩壊しますよ」

「大袈裟ね。サラは」

「大袈裟なもんですが。きっとクラリス様と夫人は寝込むの確実で領地経営が立ち行かなくなります。伯爵とケヴィン様は悲しみの中その看病で研究もできなくなりますね。一気に崩壊です。

 そうならないためにもレティシア様はご自分を大切にしてください。もちろん私は後を追いますよ」

 サラの真剣な目にまさかこんなに心配をかけることの程だとは思っていなかったレティシアは自分の考えの甘さを痛感した。

 ただ、町医者に行ったことはないが危険な病院だと感じた。通っている人々の感覚が麻痺しているように思ったのだ。

 父たちの解析でどのような結果がでるのか。レティシアは良い結果はでないだろうと経験上思った。

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