春霞の幻
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愛おしいと思える相手がすぐ側にいる
特に何をするわけでもなく、ただ一緒にいる
木の葉すら動かないほどの静かな風を二人で受けて
少しくすぐったくなった頬を二人同時に撫でる
隣に目をやれば、嬉しそうに庭を見ている君がいて
僕たちが座っている白いテラスすら
日だまりのようなぬくもりを持ちはじめて
青い空を舞う黄色い蝶が、不意に君の肩に止まったりする
そしたら君は
日だまりのような笑顔を僕に向けてくれる
そんな君が
世界の何より愛おしくて
君を抱きしめたくなって、僕はゆっくりと手を伸ばした
それは
日だまりの中で揺れる
春の霞のような
とても美しくて
何よりも幸せな
幻