私がおばさんになっても?
もし僕の考えが、
判断が、
正しければ…だ…
小生のことをマメな男と皆様は思いでしょう
過去には何人も女性と、同時に付き合い
現在も同じ変わらない気持ちで
何人かの女性に恋してる
マメな男だと
自分で自分のことは
鏡を見るようには
人々はわからないと、言う
でも小生はきっちり自分を理解していた
そう、、それは
どれだけ使わない言葉を
大切にしているかに似ていた
歌を書く時に使わない言葉達を
しっかり理解するやうに
自分を理解していた
そう、流行歌とは時を越え、
人々の心を掴み、離し
やがて消え行く
そう使わないでいる言葉
の、大切さ
それを小生は誰かに…
あなた
2週間の自分探しの旅はどうだった?
誰か可愛い女性に声かけられたりしてない?
大丈夫?
バカだなー
こんな40過ぎのおじさんなんか
モテるわけ…
何いってるの!
充分あなたは…素敵
モテます!
あ…
ありがとう
でも、大丈夫だよ
だいたい毎夜、寝る前に1時間近く
君に電話してて
何が出来るというんだよ
うん
…それも
そうね
だいたい君も僕の性癖、知ってるよね
え…
僕は
女性を喜ばせる術が無いことも
君自身も、、知ってるじゃないか?
あ…言わないで
そんな事
この
タクシーの中で
そう
我々は
勝鬨橋に向かっているのだった
奥様が屋形船に行きたいとのこと
夕方、誘われタクシーに押し込まれたのだった
小生は深くは語りたくないのだが
愛の営みが人並み以下と言うか、
全てがダメダメだった
キスもダメ
愛撫も、ダメ
唾液も、ダメ
清廉潔白な男だった
いや
違う違う違う
そうじゃない
極度の潔癖症だった
小生は闇を背負っていた
遠い過去だった
汚ない女の裸の絵を見た
そう、友達の兄貴の部屋の
ビニ本だった
行儀の悪い女は、うっすら笑って
恥部、局部を小生達に見せつけてきた
アメーバーのような、、女だった
ドス黒く、胃液の逆流を感じ
小生はトイレに駆け込んだ
そう
それ以来、小生は今に、まで
見ていない
誰のも、、見ていない…
うっすら陰毛を薄目で
眺めてるだけの所作に
留める小生であった
そして愛しき女性は
そんな小生を許してくれた
いや、誇らし気だった
陰部を、見ることも、触れる事も、愛撫することもない小生を、過去もろごと、自分の物に出来たからだった
タクシーの中
もぞもぞ奥様が迫ってくる
2週間会ってなかったからか
もぞもぞ迫ってくる
運転手に分からないように
迫ってくる
手のひらが、
あー、、熱くなる
個人タクシーだからなのか
平気でラジオが流れてた
都内の、タクシーは今やもう、車内はGOタクシーの宣伝ばかりなのに
ラジオの、おとが流れてた
ねぇ、あなた
なに
私の事好き?
もちろん
どれくらい?
えっどれくらい?って
私がおばさんになっても?
えっ
はじまったー
奥様のプレイだった
時折始まる奥様の幼稚なプレイ
人はどこかで息抜きが必要だった
小生の
手を握り
小生の髪をかきあげ撫であげ
迫り来る
タクシードライバーの事など
もう彼女には見えていない
気持ちはもう20代に時を戻していた
人は多くの大衆の嘘と幻想の中
きちんとした現実を、
立派な現実を、、、組み立ててゆく
教頭職という社会的地位を、確立させ
公の流れに対峙するあらゆる問題点
貧困エリアにおける
子供のような幼い親と
ゆとり世代を未だ滑走する
若い教員達
なんでも容易い今世の欲望が
欲まみれの泥沼にはまってゆく
これからの子供達の未來をと
選挙CARが吠える
くちびるの歪んだ選挙CARが吠える
でも奥様は違った
ホントに違った
真心で今世紀の子供達の未來を考えてた
学校から、帰ってくると
手早く夕食を作り
直ぐ様、小生に寄り添い
今日1日の子供達の事を
小生に話しかける
小生は頷くだけ
意見は言わない
長いと1時間は話す
夕食も冷めてる…
小生は頷くだけ
そんな毎日だった
でも
小生は心から奥様を、、
尊敬してた
だから、
可哀想に思う
若いだけの女性を
奥様と比べて
心から可哀想に思った
それくらい奥様が、
愛しかった
そして新大橋通りから
清澄通りに左折した時
ラジオからサザンオールスターズの
忘れ時のレイドバックが流れてきた
俺を溶ろかせる女でいてよ
抱かれたいようなしぐさ切なく…
ささやくだけでいい
よがり声にはなえてく
まるで誰か知らぬ人と
寝てるように 振るまえりゃ
指でさぐることなどつらい
In your socket
あ
運転手さん
そこのトリトンスクエアの角、
曲がったとこで停めてくれます?
はい
晴海通り右折ですね!
ええ
直ぐ様
小生の
手をひき
タクシーから
降りる
え、
お金は?
もう
払ったわ
え
ゴーPayよ
早いね
事前クレジット登録してるのよ
なるほどね
少し勝鬨橋まで
夕日が綺麗だから、歩きましょ
うん
夕日がでかいね
なんか
泣けてくるデカさだね
そう
なに?
その、泣けてくる大きさって?
でも、いいわよ
泣いてもいいわ
人は皆泣きたくなるものだわ
私も
貴方をただ想うだけで…
今も変わらずあなたが好き…
あまりに夕日が綺麗だった
奥様は泣いていた…
ごめんね
ずっと好きって想うだけで
泣けてくるの
小生は泣かなかった
ただ奥様の手をだまって引っ張り
勝鬨橋の坂をエスコートした
奥様だけの小生には
もう…なれない奥様に涙は
失礼だと想い…
泣かなかった
ねぇ
おばさんになっても私の事好き?
もちろんだよ
僕はね
今まで誰かに愛してますと言うことも
言われた事もなかった…
でも
君のことは…
好きだよ
嬉しい
老婆になっても君が僕はね…
永遠に好きだよ…
深い青さに、染まりゆく夕日
真っ赤な萌えた夕日が
僕の指先に止まって見えた
奥様の肩の上しっくり乗せた
僕の指の、先のうえ…