表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PayPay3000  作者: かんじ87
6/12

男前な悲しき色男


人はきっと人をどれだけ愛しく思えるかで

決まるのだと思う

幸せ

不幸せ

手の平を返すように


あー

今回は小生の兄についての話だ

兄は泣いていた


顔を両手で隠して泣いてた

昔ながらの悪友が死んだ

悪友は7年前に末期癌と、ドクターに告られ

兄に隠し続けて死んだ

兄とも他の友とも、全く連絡を取らず死んだ

ただ1人、独りの友とだけ

残りの7年間過ごして死んだ

何故にその独りの友だけと、小生は思った


兄に聞いた


兄が言った

弟よ

よく聞け


不幸を絵に書いたような奴だった

奴は見た目も、悪くなく運動神経も良かつた

なのに不幸そうな顔をしていた

そう!そして神はその通りに奴を操っていった

奴の名誉の為、深くは言わないが

小学生の頃からずっと、奴のドアを不幸はノックし続けた

中学の時のマドンナに高校の時、寂しさ紛らせの為、気紛れの数週間、付き合ってもらったり

すぐふられたり

優しい心はひっしゃげられてゆく


そして皆からゴネオと

呼ばれるようになった

山凡(兄の亡くなった悪友)もゴネオと

小馬鹿にした

そして決定的だったのが、ゴネオの母さんが男に騙されたことだった

もうその頃には俺は風になり、ゴネオとも山凡ともお前とも、親族誰とも会わなく、後で仲間に聞いた話だけどな


優しさ故の愚かさというのだろうか

いや愚かさ故の寂しさなのか?

悲しき、よくある出来事だった

男に貢ぎ、せっかくゴネオの亡き父さんが残してくれた100坪の古い邸宅を、愛する不醜悪男の借金の為に、売り飛ばしたのだ

兄はここで話をやめた

これ以上はもう、弟よ

もう聞かないでくれ


人の不幸を語って何になる?

人は人の喜びを願って生きなきゃ、ダメなんだ

そう!少しでも喜びを分かち合える自分を知らなきゃダメなんだ


弟よ

とにかく

良く聞け


山凡はゴネオの不幸な顔だけを支えに

7年間誰とも会わずに死んだ

山凡の古い仲間が、勇ましいと山凡を称えたよ

誰にも仲間と会わず寂しいだろうに

立派だと称えたよ


でもな弟よ


もう一度、よく聞け


もう、己の死が確定した時には、もう友はいらないのだ言う

人に依ると思うが友が眩しくて

もう友の存在は無いに等しいのだろう

兄が呟いた



奴はこの上なく卑怯で

情けなかったんだ

呪ってしまう己の運命の不甲斐なさに

奴は全てを、麻痺させてしまったのだ

誰も呪わぬよう、不幸を願わぬよう、不幸な顔のゴネオだけを残して消えた

さらに徹底したのが死んで、骨になってから俺は死んだと

皆に伝えろと言った

死に顔さえ見せたくなかったのだ

平凡な、幸せ仲間になんかは見せたくなかったんだ


弟よ!よく聞け


奴は愛して愛されたかった

お前のような色男でも

知的でも金持ちでもないのに

美人が好きだった

はかない夢のような事だった

金も美貌もないのに、面食いだった

そう、それは致命的な人生の敗北だった


よくいる臭覚の鋭い不醜な輩

弱った乙女の匂い嗅ぎわけ、心の隙間に入り込む、心は歌舞伎町ホストのような輩に山凡は、なれない

ただ

ただ

気持ちだけが男前な悲しき色男だった


弟よ、そして最後に聞け


よくゴネオが俺や山凡に唄ってくれた歌がある


人は真心で他のために

時には生きて行かなきゃ

自分の為にもならないと思う


それをゴネオは知ってたのかは

俺には知れない


ゴネオの崇拝する

北海道の果てしない男

松山千春の唄だ



夜明け



どれ程目をこらしたなら

明日が見えるのだろう


僕にもわからないけど

信じていたい


誰かをせめちゃいけない

もちろん君自身も


何かが狂っただけさ

よくあることさ


せめて君の夢がかなうよう

僕は唄い続けるこの唄を


せめて君の夢がかなうよう

僕は唄い続けるこの唄を



ゴネオとも未だ連絡つかないんだ


愛しき弟よ


そう、それは

誰がための夢も、山凡の夢も願うかのように…



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ