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PayPay3000  作者: かんじ87
13/13

ねぇ…ジョーカー


季節はめぐり近頃、涙をふと溢した


そう

それは食べること、息を吸うこと、全てを吐き出す事とは全く違く、涙をふと溢した


そしてそのあとすぐに、申蔵スピンオフを書いた

そして次にエピソード10の痺れを、書いた

先に痺れを、公開した

スピンオフ申蔵は、いまこれを書きながらいつ公開しようか思案中だ



あー

愛し続ける事が怖くて、小生は冬子の手を離した

抜け落ちた温もり

ボッカリ、わざと忘れた温もりが浮いてくる

でも奥様との暮らしで、そこに上書きした

消せるはずもないのに、名一杯、塗りたくった




あー

今日は冬子との25年ぶりのデートだ

あの清澄庭園から1ヶ月ぶりの再会だ

あの頃の1ヶ月とは、まるで違っていた

それぐらい僕らの時は、加速増し続ける

時の早さは恐ろしい

ここで、その恐ろしさを哲学者のやうに語ることも囁くことも、可能ではあるが

めぐる季節にふと溢す人類の、涙の関係図はまた違う機会に語らして貰う事に…しよう



やはり冬子からの誘いだった

学生の頃からそれは、なにも変わらない

デートする場所も時間も、座る位置も冬子が決めていた


あなたはここ

私はここ、

そう、ままごと幼稚園児のように

冬子はレストランでも、公園でも座る位置を決めた


今回は千葉県、流山のおおたかの森に素敵な岩盤浴があるからとの誘いだった

2人で早朝、総武線で西船橋乗り換え、武蔵野線、そしてつくばエクスプレスと小1時間かけて出かけた

都心から遠ざかる下りの為、車内は空いていて座れた

そしてやはり電車でも、子供の頃みたく冬子に座らせられ、途中霞んで見える富士山を冬子は、ふりかえって見てた

そしてこちらを見て呟く


ねぇ…先生の事好き?


え…


今も先生の事好き?


うん…そうだね

変わらないよ


先生変わらないものね

とっても綺麗だわ


君も変わらないよ


ほんと?


そうだよ…


小生はまだ振り向いて

霞んだ富士山、見てる冬子に言う


目も見ないで、冬子の足先だけ見つめて言った


ねぇ


え…


いつから先生、K君の事好きになったのか知ってる?


え…


知ってる?先生、良く授業中あなたの事、見てたのよ


え…


あなたの事、見てたの

私は見てたの…


小生の目をきっちり見つめた冬子


いつから先生

あなたの事好きになったのかなー


私の方が先に好きだったら

いいのになー


先に好き合って、キスもして抱きしめあったのにな…


もしかして先生のほうが先に好きになったのかなー

だからあなたをとられたのかな…



ねぇあの時、清澄庭園で言い忘れたけど

あなたが私は好きよ

今も変わらず、ずっと好きよ


可笑しいでしょ?

笑っていいよ


でも好き…



うん…



それに高校3年の時には、あなた隣のクラスの子や女子高の子とも付き合ってたよね


私が知ってたの、あなたも知ってるよね

私、それも知ってる…


うん

手紙、君に見られたよね


うん

私の部屋にあなた鞄、忘れた事あったよね


うん

それで君、謝ったよね


うん

勝手に鞄のなか見たって


うん

手紙


そう

何枚もあって


うん

何枚か


減ってた


うん

捨てた…


やはり…


うん…

でも好きな気持ちは変わらなかった

でも不安で相談した


うん…


彼に…


今の主人よ


え…


中学生の頃付き合ってた彼と

私、結婚したの


そう…


(晴海から聞いて知っているけど)


そうなんだ…



女は2番目に好きな人と、結婚すれば良いってよく言うけどね

その通りね

彼が2番って訳でもないけど

私は幸せよ


でも好きなのはあなただけ

1番も2番もないの…


あなただけ


私ね


小生を覗きこみ

冬子が言う



あなたを左の角度から見るのが好きなの

アシンメトリーな少しだけ垂れた右の目尻が大好き


だからあの日本橋のレストランであなたを見かけた時も私、震えて涙が溢れたの



だってなんにも変わってないんだもの

もう25年も経ってるのよ

なのに

なんにも…

変わって…ないんだもの


その焦げ茶色の目も好き

少しだけ見える焦げ茶色の下の白いところも好き


三白眼って

よくない人の目なのに好き


そうだね

僕は黒い天使が造ったクズだからね


え…


君から先生に僕は替えたんだ

それに今はまた

君に先生から隠れて会ってる


こちらを見つめる冬子の、ピンクの頬を見ながら呟いた


そして新松戸駅で、一気に人波は消えた

常磐線に乗り換えて、都心へと消えた

いや実際は消えたのでなく皆、都心へと仕事へと行ったのだ

車窓の向こう、舞い上がる太陽が光線を放ちながら、実社会に生きる、多数の人を照らし更に強く舞いあがった


社会に貢献すべき、我々は誰がために生きることの本質を理解できないまま

常識と言う檻のなか、細やかな孤独や幸福を積み重ねた

映画を見たり小説、読んだり誰かの造った歌に泣いたりしながら重ねた

大衆ロマンの温もり、面影追いかけ、人は実力能力資本主義に捻れてゆく




ねぇ出よ!


新松戸を幾つか過ぎた駅で

冬子に手を引かれ

電車から降りた


散歩しよ…

こんなに天気良いし、もっとあなたと話したいし、岩盤浴はまた今度ね!


うん

いいよ…


知らない街を2人で歩いた

知らない人とすれ違い歩いた

皆、駅へと通勤、通学、急ぎ足だった


鳥が大きな輪を描いて、飛んでゆく

僕たちを追い越して、THANK YOUって描いたステッカーのバイクが大きく傾いてカーブ切ってゆく


時は過ぎて行く

季節は巡り過ぎて行く



ねぇ私、髪型変えたの

分かる?


そうなんだ…



少しだけ短くしたの


そうなんだ…



あっ…

ここ

入ろっぅ


冬子が足早に

古い赤色テントの玄関の喫茶店に

入っていった


すたすた、2階に上がり周りを見渡し冬子が


はい

あなたはこっち!


誰もいない右奥のアンティークなランプの淡い光のかかる席に小生を座らせた



そう、よく2人で学校、わざと遅刻して待ち合わせて

喫茶店に行った

そこも2階建ての喫茶店で、1階は常連の溜まり場となり、2階はいつも空いていた

だから毎回キスをした

店主の階段上がる音で2人は少しだけ離れた

でもまた、すぐにヒッツイてキスをした



そんな想いでの中

小生はタイムスリップをした




時を越え、本当にあの時の冬子が目の前に現れた


冬子が呟いた



私ね…髪切ったのよ


どこ?


前髪を少しね


わかんないよー


ほらー

ここ


あっ

すこし短いかなー


どう?


すごく似合ってる


ほんと?


うん

可愛い



嬉しい…


気付いてくれなかったけど

嬉しい…


ありがと


もっとこれからは

私を見てね…




うん…



そしたら急に鼻が詰まり、胸もひくひく苦しくなり痛くなり

目から涙が溢れ落ちた

目の前が霞んで真っ白になってく


どうしたの

K君

どうして泣いてるの?


高校生の冬子が尋ねる




ごめんね


冬ちゃん


ごめんね


卒業したら君と僕は別れるんだよ

ちゃんと君を見つめる事が出来ない

弱い僕を…


なんにも気付いてあげられない僕を…


ごめんね…


何言ってるの

意味わかんないよ…


そんな悲しい嘘やめて


よく見て

冬ちゃん

僕を


ほら

もう

僕は43歳だよ


変な嘘

ふざけないで


本当に別れるんだよ

そして25年後に再会するんだよ


どうして別れるの?

ねぇどうして25年後なの?

ねぇ私の事、嫌いになるの?


25年も待てないよ


ねぇねぇねぇねぇ…、…。…。




階段の音がした…


短いタイムスリップだった



店主は冬子に微笑み、レモンティーを

小生にはアイスコーヒーをそっと淡いランプの光の下に置いてくれた


あっ泣いてない

夢か?

高校生の冬子が消えていた



ねぇねぇどうしたの?

目が遠いよ

視点が合ってない

何処見てるの?


君を見てるんだよ

前髪をすこし切った君だよ

とても似合ってるし、とっても綺麗だよ


ほんと?

嬉しい


気付いてくれて

ありがとう…



夢のようだね

また

こうして君と喫茶店いるなんてね


前にあなたが言ったじゃん

夢のような毎日だけど、そばにいてくれる?

って


そうだね

僕は夢のような日々を

夢のように

造り変えたんだ

週に少しだけ

警備員として働き、

後は全部あの頃と

変わらず歌を書き続けてるよ


先生はそれで何にも言わなかったの?

生活はそれで成り立つの?


そうだね

先生は今じゃ教頭いや

今の言葉で言う副校長になり、毎日しなやかに暮らしてるよ


君の方はどう?


私は専業主婦よ


いいね

彼、稼ぐんだね!


青山の商社よ


伊藤忠ね


そう


なかなか入れないよ

あんなとこ

頑張ったんだね

大学は?


東工大よ


おー

理系かー


理系で商社かー

なんか真っ直ぐな感じがしていいね


営業と言うよりはきっと、システム関係とか何か特殊な業務なんだろうね

僕みたいな物書きとは真逆

王道資本主義社会のど真ん中…


やめて!

彼の話しはしたくない…


ごめんよ…


とてもいい人

でも話したくない…


うん

もう聞かないよ


あなたの話

聞かせて


うん


幸せ?


うん


最近は歌より小説ばかり書いてるよ


そうなんだー

どんな小説?


そうだね

そんな大それた事、言わない小説だよ


なにそれ…


御飯が美味しいとか

不味いとか生活感たっぷり

アイスが歯に染みて痛いとか

毎日が夏休みのような小説だよ



へぇ

あんまり面白くなさそ


そうかもね

あとは

旅行ばかり行ってるよ



へぇー

いいなー

誰と?


先生だよ


仲いいね


うん


ずっと先生?

他に好きな人出来なかった?


えっ…

隠さないでね


だってこんなにシビレル顔面の人はいないもの


私ね、高校のころから

色んな角度であなたを、毎回楽しんできたわ

今日はね…

ランプの光が斜めに、さしてる

あなたの口角を楽しんでるの

悪魔みたいに照らされた

あなたはまるでジョーカーよ


ねぇあなた…


見てるだけで

分かる?



え…

何が?


冬子が真っ直ぐ小生を見つめて言う


あなたを見てるだけで

気が遠くなるのよ


あなたが言ってくれたように

ホントに夢の中へいっちゃうのよ



人は皆、想い出の中、生きるのよ

想い出は切なくて、なんて事ない毎日が過去となり時間が経つ度、魔法かけられたみたいに美しくなってゆくわ


でもあなたは違う

想い出のあなたより

今のあなたのほうが

もっと綺麗…


冬子は泣いていた


悲しませた訳じゃない

ただ小生を真っ直ぐ見つめて

泣いていた…


あなたを見ていると

魔法にかけられたみたい


胸が痛いの


ねぇ

あなたはジョーカーよ

どうしてそんな、寂しい綺麗な目で私を見つめるの


あなたを独り占めなんて

出来ない


きっとあなたを好きな、女性は他にもいるわ

先生はそれを知ってるの?


え…

どうしてそんなこと聞くの?


あなたは器用な人

そして悲しいぐらい美しい人

女がほっとく訳ないわ


ねぇその女性きっと、とっても綺麗な人ね




私は駄目

もうおばさん、もうすぐ生理も終わるし

老眼で近くもぼやけちゃうし

皺も増えてくばっかだし



なのにあなたはあの頃のまんま

悲しいぐらいあの頃のまんま


愛して欲しいとか愛してるとか

いつの間にやら今の時代

白けた感じだけど

でも好き

あなただけが好き



こめんよ

冬ちゃん


なに?


淡いランプのせいだね

今ついさっき

あの頃のここによく似た喫茶店に

高校生の君に合ってたんだ



そして何度も謝ったよ

卒業したら別れる事

髪型気付けない事

いろいろ…


知ってるよ



え…


何度もあなた謝るんだもの

新しいTシャツも

バンツもバックも髪型も

全然気付いてくれないんだもの

ごめんって

何度も何度も何度も

卒業したら別れるって

あの頃の私に謝ってたわ



私、この25年間

何度もあなたの夢をみたのよ

頭の悪い女、演じてあげる

他に好きな人…

いてもいいよ…


古びたランプの真上

ONKYOスピーカーからは


山下達郎の悲しみのJODYが流れてた



JODY君の事

もっと知りたかった


だけどもう遅過ぎる


OH JODY


二度と会えない


君のこと


忘れない


いつまでも


OH JODY


君を


JODY


君を


OH JODY


君を


OH JODY


君を


OH JODY


君を


OH JODY


君を


OH JODY


君を


OH JODY


そして冬子が小生に背中に回り込み

頬寄せて呟いた




ねぇ悲しみのジョーカー…



ホテル行こ…







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