嫉妬
芸術とは感動のたまものだ
感動無しに素晴らしき作品は
生まれやしない
でも裏っかわと言うのも実在した
近世の西洋
芸術は暇やお金が余ってる貴族の遊び、息抜きだった
ただフランス革命後の世界では、庶民も芸術に触れ、その力を享受できるようになっていった
そして苦労する作業は皆、下僕
下へ下へ下の方の
民へと流れ
歴史は、滅亡、争い、革命、進歩を繰り返して行った
いずれ今のホワイトカラーと
ブルーカラーは、ひっくり返るかもしれない
我が息子の
申蔵が言う
AIの台頭だ
小難しい一般大衆の作業は
AIに奪われてゆく
そう!それはブルーよりも
ホワイトの方がいとも簡単に
すげ替えられてゆくと言う
僕の英語の翻訳アルバイトも単価が安くなってきたしね
未來はもうないね!
だから先を見ているんだ
海外でチャットGPT通して描いた絵を紹介するシステム開発中なんだ
良ければ父さんのその小説の解説、紹介もどうだい?
うん
そだね
軌道に乗ったらよろしくだね
大学も学部を変えて長く在籍の申蔵
一般企業には
働く気はないと言う
もう2度目の4年生
就職活動も全くしていない
でもそれで良かった
社会の歯車とは、とても素敵な事で
奥の深い事だった
いい加減な奴は、はじかれてしまう
更に、はみ出す奴は
役に立つ訳もない
従順な柔軟な知的な平均的な
人材が適していた
焦げ茶色の瞳とウェーブした髪を受け継いた、特種な申蔵は不適切だった
小学生の頃
申蔵はわざとテストの答えを間違えた
早生まれの申蔵はとても小さく気持ちも優しく虐められやすかった
だからわざと点数を取らなかった
小学生なのに人間の嫉妬というのを見抜いていた
小生もそう
争いは悲しかった
前から人がやって来ると、間違いなく道を譲った
後ろから来るとわざとスビード落として抜かさせた
横断歩道も青になっても1歩遅らせて歩いた
急ぐ事はない…
この果てしない世界
窮屈にしちゃいけない…
よ…
そう!今回は争い嫌いな小生から派生して
息子の申蔵スピンオフを描くことにした…
僕の名前は申蔵
もちろんあだ名にきまっている
父さんに命名された
小さな頃は猿尾と呼ばれいた
それがどうしてなのかよく分からないが
申蔵と変化していった
あ
そう言えばの話だが
僕は
この世に生まれ落ちたその瞬間
あまりの喧騒さに、びっくりしてしまい
息が出来なくなってしまった
息が詰まるほどの
この騒がしい暮らしになんて
センチな歌じゃないんだ
ホントに息が詰まり、僕は気を失った
長い手術だった
助かる確率は3割と言われた
そりゃそうだ
肺はもう
ペッしゃんと潰れていたんだから
でも助かった
嬉しかった
…
でも
その代償に聴覚が壊れた…
父さんは言った、人は皆
どこか
ほんとは壊れていく生き物なんだ
お前の生み出すその芸術で助けてやれと
そう
壊れかけの父さんは言っていた
いや
ほとんど壊れていた
頭もルックスも良いのに壊れていた
仕事もたまにしか出かけず、家でギターばかり弾いていた
運動会も文化祭も来てくれなかった
でも寂しくなかった
次第に理解できたから
父さんは未だに少年だった
心の深いところ
誰もが子供なのだが、父さんは浅いとこから深いところめがけて、丸ごと少年だった
そして自分を俯瞰して、見つめる術も知っていたので
子供のふりをした
ちょっとイヤらしい人間だった
そのイヤらしさと来たら
そう
小学生の頃だった…
ろう学校の友だちと、
5家族で西伊豆いった時
夜、仲良く、皆で食事をした
話も母さん達メインに花がさいた
なのに父さんは、すぐにベットに行った
酔ったふりして、ベットに行って寝た
母さんも当たり前のように父さんを寝かせた
照れ屋でも口下手でもないのにだ
なんなら
愚たけた事を語らい、皆を笑いの渦に引き込む事も出来る器用な人間だった
なのに会話がそんなに
好きでないと言うへんてこな
人間だった
金もそうさ
警備の仕事ちょこっとしか、してないのに凄い額の金もちだった
父さんは言う
時の流れを汲み取れと
何でもすぐに飛びつくなと
人々に先に行かせて様子を見ろと
物事の裏と表を見抜け
ギャンブルはするな
人生はギャンブルそのものなんだ
小さな事に運を使うな
株もデイトレでなく…
そう
父さんはスイングトレードで
儲けまくった
出遅れ株を買った
たとえば商社株なら
三菱や伊藤忠が上がる相場が
来たらいずれ遅れて
違う業種の商社株、
例えばユアサ商事などが
上がると言った
あと、下方修正した株や
スキャンダラスな株なども、追いかけた
ニュース発表後の爆下げから
2週間ほどじっくり見つめて
日経平均と違う動きを見せた時を狙えと
ブロが仕込んでくるらしい
父さんは7割の
確率で儲けていった
薔薇色の未來なのだろう
金に金を生ませて勝手に
金は増え続けて行った
なのに警備員もやめず
切なさや脆さと言う甘えを
歌や小説にしてた
そして
1つ上に夏子と言う姉がいた
これが悪魔のような女だった
ほんとは菜月なのに
父さんは夏子とあだ名をつけた
気づけば家族も親戚も皆、夏子と呼んだ
そして名のとおり
月のような切ない女と
お別れをして夏の女となり
浅黒く逞しくなってしまった
気に入らない事があると
夏子はマッハでぶちギレて
僕のみぞおちに
パンチをぶちこんできた
腰の入った稲妻パンチだ
避けきれる訳もない
そして口癖のように
幼少の頃から
あなたは私のオモチャ
パバ大嫌い
ワンセット
呪文のように繰り返した
嫌われた父さんと
オモチャ身分にされた
僕は夏子は悪魔だ同盟を結束した
いつも夏子の悪魔っぷりを
おかずに語らい、結束を固めて行った
何故にあんなスローな父さんからギラギラ悪魔が生まれたのか、不思議でならなかった
母さんの何かと父さんの何かが
螺旋スパイラル絡み合い突然変異が起こったのだろう
家事も何にもしない、ぐうたら父さんと
何もかもそつなくこなし
いつも忙しく働く、社会的地位も高く志しも更に高い、教頭の優しい母さん
違い過ぎていた
性格も違い過ぎていた
が、しかしそれが
化学反応なのか
+の母さんは-だらけの父さんを
異様に愛した
学校から帰ってくると
一休みもなく、さっさと食事を造り
すぐさま父さんを
横に座らせ、手を握り
1日の様を日記のように語るのだった
少女のような瞳のまま語る
日曜日にはいつも出かける
食事やショッピングや、もろもろ
いつも母さんは父さんを横に置いた
あっ
そう
形も乱暴さも夏子とは
違うが見方を変えれば
父さんは母さんのオモチャだったのだ
そうだ
確かあの西伊豆の夜も
そうだ…
母さんは他のママ友に
父さんを見せたくは…
なかったのだ
ママ友達の何人かは
父さんだけにフレンドリーに
話しかけてた…
母さんは悲しいほど
父さんを愛していた
大人になった今だから
わかることだった
あー
父さんは
いつか母さんにコロサレるな
忠告しといてやらなくては!
父さんは女の匂いがした
かすれた声に焦げ茶色の瞳
女を惹き付ける匂いがツンとした
きっと女は他にいるだろう
予感ばかりふくれてゆく
あーコロサレルな
やばいなー
前も高円寺2人で出かけた時もモテまくっていた
古着屋の可愛い若いスタッフが
いろいろ語りまくってきた
私ー
地方出身なんですー
よくわからないんですー
ここによくくるのー?
ほとんど逆ナンだった
(僕は難聴とはいえある程度のことは聞こえているのです
父さんの声も砂粒みたいにざらざらしてるのもね)
夜の寿司屋でもそうだった
寿司握ってる硬派な女性店員がいた
で、帰りとなってレジでの出来事だった
あんなにテキバキ寿司握って無口だったのに
レジで父さんに
ご馳走さまーまた来るねって
言われただけで
堰を切ったように話し出した
父さんの着てる
石垣島のゲンキロックンロールTシャツ
褒めまくってきた
古着屋の街
高円寺だからのか?
わからない
沖縄の話に跳び
他にお客さんいるのに
ここぞとばかり少女になって
父さんに食らいついてきた
やばいなー
コロサレルなー
不安しかないなー
今度、
夏子は悪魔だ談義の会食の時に
父さんに何気なく確かめることにしよ
あっそろそろ出かけなくちゃ
後期の授業は今日からだ
ほとんど単位は去年とってるあるからなー
余裕だー
今週は確か今日だけだったはずー
卒論もだいたい出来たしなー
あー
しかし
めんどくせー
なんか
だんだん父さんに似てきたなー
ぐうたらだなー
俺
休もうかなー
初日から休んだらなー
やばいよなー
あー
ちょこっと寝よ!
ふとTVを眺めた
タクシーの車内動画だった
パンチパーマのイケナイ輩が乗り込んできた
そして
乗り込むなり1万円、運転手に渡した
運転手さん!すぐそこだけど
あげるよ
たまにはこんな客いてもいいだろ?
いい凌ぎが出来たんだ!
詳しくは言えないけど
とにかく俺はついてるんだ
そしてこれからも怖いもの知らずさ
運転手さんも
頑張りな
こんな仕事辛いだろ
でも
頑張りな
きっと良いことあるさー
そうパンチパーマが言った瞬間だった
ほとんど喋らなかった運転手が話し出した
お客さん
それで話は終わりかい?
どうして俺が辛いなんて分かったんだい?
あんた神様かい?
俺が不幸だなんて
何故に見下すのさ?
羨ましいねー
羨ましい限りだ
けどねーあんたの運も
たいしたーこたーねぇなー
ここでおわりだよ
そうさ
俺は今さ…
死ぬとこ探してたんだ
そして運転手
shoutしながら
赤信号突っ込んでいったー
悪いねーーー
長ーいshoutだった
一緒に死んでーーー
悪い夢のようだった
トラックにがっぷり突っ込んでいった
車内映像
ハリウッド映画さながら
ぐしゃっと潰れるタクシー
そして場面はワイドショーメイン司会者に
移り、真面目な顔を作り、司会者は繰り返した
あー
サラ金に追われたタクシー運転手の悲劇
で…
はなく…
偶然乗ってしまった違法金貸し業者の悲劇でし…た
でも
2人とも命は落とすことなく無事でした
良かったですねー
メイン司会者のすぐとなりコメンテーター
偉そうな顔でほざいた
でもね
死なず助かったってことはですね
やはりタクシー運転手さんにとってはねー
どうでしょ?
カメラがコメンテーターをアップで抜いた
そしてもっと偉そうな顔でほくろまみれコメンテーターほざく
やはり
サラ金に追われたタクシー運転手の悲劇ってことですねー
いやーな
コメンテーターのキメ顔でワイドショーはエンディング
申蔵もすやすや夢のなか
エンディング…
おしまい…
嫉妬とは怖いものさ
人を狂わせてゆく…