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PayPay3000  作者: かんじ87
10/12

痺れ

まだ

エピソード9が完成したばかり

余韻中

なんども読み直し噛み締める時間…

なのに

事件が、おきた

嫌な事件、変な事件

そして奇跡もおきた


書くしかない




ねぇ


あなた

急いで


はい


早く

タクシーもう来てるわ


はい


何してるの?


戸締まりと

ガス元栓だよ


はやく


はい


奥様はせっかちなのだ

ゆっくりめの小生とは、いつも出かける時に気持ちがそこですれ違う


相性は良いばずなのに

すれ違う


玄関で待つ愛しの女性よ

雨に濡れて君のところへ

俺はゆくよ

待ってておくれ!


なんて気取ったフレーズ想いつきながらredシューズを履く

靴下もたつかせながら、もたつきながら履く


100センチ先、DOORの向こうでは貴婦人は少々ご機嫌斜めだ


さぁいけ!

さぁいくんだ

もたもたするな


高島屋にワインショップのエノテカとパリの名門レストラン、タイユヴァンが手掛けジョイントレストランにいいワインが入ったらしい

試飲して、いろいろ楽しみたいとのこと

小生はそれのお供だった



待たせながらタクシーにそっと、乗り込んだ

14号線を上って日本橋へ!と奥様は運転手さんにお願いした





馴れ合いのお喋りで

奥様と時を過ごすすがら


タクシーが急に止まった


両国橋を渡り左折して久松警察所過ぎたところ、急に割り込まれ止まった


反社会的、紫のジャージ男が突然飛び出し

止めたのだ

グレイのコンフォートタクシーは何の悪びれもせず、サインも出さず割り込み止まった

男はとっても下品に、大股にタクシーに乗り込んだ

とろとろと、もたつきながらそのグレイコンフォートタクシーも、下品に走り出した


バカだねー

あのタクシー

無理に割り込んでまで何故に

あの反射紫マンを乗せたいのか?


そうね

あんなの無視しちゃえばいいのに

今タクシー不足いくらでもお客さんはいると聞くわよ


そうだよねー


そうすね

食い気味に運転手さんが呟く


私なら乗せません!

こんな忙しいご時世、世の中、ご気分に

幾度乗せても、ああいう輩には馴れません

し、その後の営業にも支障きたしますから


そうですよねー


私はあの紫のジャージと蜂の巣みたいなパンチパーマが嫌だわ

センスの欠片もないわ

一生!そうやって周りのダサい反社達に流されてなさい!


なんて

ルックスの事まで言い出す始末


運転手さんも驚いてバックミラーにて奥様チラ見



反社紫マンの素性も何もしらないのに


言いたい放題の車内だった



坊主憎けりゃ袈裟まで憎いの世界

いや

彼の場合

坊主憎くもないけれど

服、髪型やっぱりダサいのご時世だ


永遠に反社紫マンはダサいのだろう

そう

それはいくら金を積んでも得れぬ人徳、尊敬に似ていた


徳を積み人の笑顔の為に生きていければ変わるかも

なんて思ってたら

コンフォートタクシーは、ノンストップで三車線の赤信号の昭和通りへと突っ込んで行った


スローモーションだった

大型ダンプカー避けきれるはずもなく

右に避けたその横っ腹を、コンフォートタクシーは突っ込んだ

ギュルギュルタイヤを磨耗滑らせたまんまコンフォートタクシーは止まった


あのタクシー運転手はきっと頭が空っぽになったんですよ


こちらのタクシー運転手が言う


急げ!とか、とろとろするな!

とか、言われ緊張の極致、極楽の反するところ白い煙に巻かれ、頭は真っ白になってそのままアクセル踏み続けたんですよ



確かに不運とは、何かタイミングの悪い事が重なり起こる事と、起こるべきして起こる事があるが、タクシー運転手は間違いなく、悪いタイミングの紫ジャージマンに出くわした事だったのだろう


幸い、後ろの自動車達まで巻き込まず

火もふかず事態は過ぎてゆく


小生達のタクシーは、現場を左に流しながら高島屋へとそれでも、向かった


中央通りを進み

永代通りを越えた所、曇り空の下

タクシーから降りた

日曜日のお昼過ぎ、日本橋界隈は凄い混みようだった

観光客とビジネスマン、メインに

御高齢の方々も、いた

軽やか方に、ヨボヨボな方

様々形態は違ったが、皆、幸せ気分にいた



先ほどのスローモーションを、チラッと思い出しながら高島屋へ、本館8階のレ・カーヴ・ド・タイユヴァン 東京へ、2人は向かった


ふとよぎる感覚

ダメな悪い感覚

真空パックに吸い込まれる感覚


エレベーターから吹き出る、湿っぽい風に押され、抜き抜けの階下を見下ろした

様々な群衆がそこにはいた

幸せ不幸せ喜び悲しみ

過去未來現在


レストランでいろんなワインを、確め嘗めながら

小生達はランチ3500円を、2人でめいめいに楽しんだ

皿にはポテトチップスが

お飾りのように入ってて

奥様はそれを小生の皿に、何も言わずにのせた


奥様は常に味は薄味好みで

小生とは、そこでもすれ違うのだった


小生は最後の晩餐は、

日清のカップヌードルしょうゆ味で

良かった


それぐらい塩分に心は占められ

満たされていた


あー黒い天使のクズが囁く


もしも僕を独り占めしたいのなら

恋人よ

僕を掌にのせろ

そしてぐしゃっとすればいい


先ほどのスローモーションと

クズの囁きが、ぐしゃっと重なる

いつまで晴美を、隠しきれるのか?

晴美を愛す小生を、隠しきれるのか?

奥様はそしてそんな、小生許すのか?


いや許さなくていい

答えはナッシング

許す奥様など見たくない!駄目だ

答えはナッシング

小生が許せなくなる


人は皆、罪を背負い生きてく

それが悪いと言う訳ではなく

悪いと思う性根が

罪を膨張させてゆく


聖人君子な我が理想の神よ

ポテトチップスを嘗めるがいい!

そしてその潔白な舌で

塩と油に痺れればいい!


大衆の造り出した、善と悪の狭間で痺れればいい!!


あなた!なにさっきからぶつくさつぶやいてるの?

痺れればいい!ってなに?


やば

聞かれた!


いやこのメインの

ガルビュール風リゾットさぁ

豆と小麦にお野菜たっぷりでいいんだけどソーセージの味が辛くて

痺れちゃうよ



言葉が

変じゃない?


痺れそう!とかでしょ

言うなら


痺れれば、いい!


って

あなたナルシストのマゾ?


いや

いや

その


あっ

小説の

セリフ

ちょっとしたフレーズ考えてたんだよ


やめてー

そんなサディスティックな事言うの!


私はあなたの

天然の焦げ茶色の瞳が好きなの

その自然のウェーブした

髪も変わらず好きよ

わかる?


はい

知ってるよ


そしてそのキャラメルみたいな

甘い瞳と同じくらい

甘いあなたの切ない唄のような

小説が好きなのよ


やめて!


そんな

痺れればいい!なんて


高圧的だわ


うん

考えとくよ


お願いね!


はい


なんて、もともと描く予定もない

セリフを検討すると垂れる小生も

やはり善と悪の狭間で

痺れ続けていたのだった


ちょっと

トイレ!


逃げ出すように走る小生だった


それを見つめる柔らかい

表情の変わらず綺麗な奥様


そして少し離れた

テーブルの向こうで

見つめる女性がいた

儚げに綺麗な淑女が

小生を見ていた


呆然と淑女は見つめていた…、

途方に暮れ見つめていた




酔い醒ましに、

トイレの鏡の中の己を眺める

永遠に覚めぬそれは、

夢のようだった

そう!人はトンネルのような、

グネグネと長い夢の中を生きていく

もしかしてさっきのスローモーションも夢だったのかもしれない


眠れない僕の手を取り…

いつかの君は大丈夫よと…

言ってくれた…

私がいるんだものと言ってくれた…


あー


夢なのかもしれない


奥様も晴美もそう

この黒い天使のクズの小生さえも…


すこし遅めにトイレから出た

ワインを燻らせながら

奥様はまだ食を楽しんでいる


少し離れたところから

こちらへ歩み寄る女性がいた

奥様からは見えない

こちらがすこぉし傾いて

すれ違えるように避けた

その一瞬、女性は小生の手を掴んだ

そして一言


K君…




冬子だった


小生は何も言わずにすれ違った


そしてとっても小さな手紙を

握りしめさせられていた…



帰りのタクシーの中の事は、もう覚えていない

個人タクシーだったのかJAPANタクシーだったのかも忘れた


あーただ1つ

タクシー車内、奥様に握りしめられた掌は

真空に閉じ込めらたようにチリチリと…

シビレテいた



久しぶりね

先生相変わらず綺麗ね…

幸せ?

私は幸せよ

K君 何にも変わらないね

ホントに歳をとってるの?


夢のようだわ…

またあなたに会えるなんて

ほんと夢かしら…


ねぇ…ちゃんと眠れてる…

とっても繊細なあなただから…

ねぇ

それがいまでも私

忘れらんないよ…


ねぇどうしてTELしなかったか

わかる?…


それはね


またあなたに会えると思ってたから

だから

しなかった…


私の番号あの時のままよ


もし

あなた

覚えているなら

私に…


何時でもいいの…


電話かけて来て


ね…



1人部屋に閉じ籠り

冬子と再開した

手紙を通して

甦る冬子の透き通る白い肌

違う女性を抱きしめた時も

最後は冬子の透明感を想う小生だった


そう

それは今も昔も変わらなかったし

これからも変わる事はないのだろう


1人部屋で冬子を感じた

これは罪なのか

身体が熱くなる…

電話番号はもちろん、ほとんどのことは忘れていやしない

それは罪な事なのか?


きっと電話するだろう

そして会う約束をするだろう


何か見えない力にひっばられてゆく…




さぁ皆さん

小生をどう思いですか?



わたくし作者は出来れば

晴美も奥様も冬子も

傷つけたくないのです


もちろん

巻頭のコンフォートタクシー運転手も

反射紫マンも

大事故にはせず、死ぬことは避けました


そしていつの日か

ワイドショーにて

あのコンフォートタクシー運転手を

出演させること、思案中でございます。




太陽の降り注ぐ土曜日の午後


少し遅れて清澄庭園の交番前で

冬子と会った

なんにも言わずに、冬子は小生の手を引っ張りぐんぐんぐんぐん

庭園の中へ入ってく


痛いよ!

冬ちゃん


どうしたの?


怒ってるの?


当たり前でしょ

こんな、いたいけなレディ

何分も待たせて


ごめん!


謝らないで!


ごめん…


小生の手を引っ張る

ぐんぐん引っ張る

庭園内を2人は歩いた


なんにも喋らず歩いた


時折引っ張る手が強くなる


半歩前ゆく冬子が

こちらをチラッと振り返る



泣いていた


冬ちゃん



雨みたいに冬子の涙が、腕にふりかかる

チラッと振り返る冬子の涙が、ふりかかる


冬ちゃん…



ずっと何周も冬子に手を引かれ、

庭園の大きな池の周りを、歩いていたから

足は鉄の棒みたい…に

なっていった


でもそれで良かった

鉄の塊になりたかった…

風そよ吹く

夕日浴びるカモメの空


ポツリと冬子が発した


あなたの子供欲しかったわ

私ね…娘がいるの…

もう二十歳よ

とっても綺麗な娘よ…

あなたも覚えてるよね

中学からのあの人

あの人にとっても似てすごく優しいの…

愛してるわ


でもあなたの子供が…

ほんとは良かったなぁ



あなたがいない事以外は

私は幸せだった

優しいあの人と、とっても可愛い娘が

生まれたから


あなたがいない事に

次第になれていったのよ

時はとっても…

せっかちね

待ってくれなかったの

忙しくってね

家族つくるため、娘育てるのため

寂しい気持ちも

待ってくれなかったわ


だから馴れていったの

あなたのいない事に


でもね…

あなたがいないと想う気持ちには

馴れなかったわ…

事実あなたにサヨナラ貰ったのにね


いないと想う気持ちは…

日々膨れていったの


だから時々泣いたの

泣いて膨れてく気持ち抑えてね

でも娘にもあの人にも、見られちゃった…


駄目な女ね…


鉄の塊は冬子に引かれた痺れた掌を

じっと見つめていた


そして鉄の塊が呟いた



冬子を抱きしめ呟いた



夢の中だけど

そばにいてくれるかい?

今も忘れられぬ人だから…



冬子の涙は拭って

呟いた


眠れないあなたの手を取り…

私は言うの

大丈夫よと…

何も心配しないでね…


私がいるんだもの…


冬子の涙がふわっと翔んで

熱く痺れた小生の掌を冷まして…くれていた…



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