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黒子の天使の異世界創造~幼馴染み熾天使はダンジョンマスター~  作者: 三河三可


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第51話 死神ジャック・オー・ランタン

 熾天使が堕天する時、魔界より多くの魔物を召喚する。まず最初に現れるのは、カボチャ頭の死神。堕天使の誕生を告げると同時に、見たものに死をもたらす。

 しかし、それは伝承でしかない。死をもたらすのであれば、死神を見たことのある者は存在せず、ザキーサもマリアナも死神を見たことはない。


 熾天使の堕天は、過去の歴史を遡っても数例しかない。堕天するような熾天使の大半は、業務失敗により神々の怒りを買い抹殺される。

 そうでなくとも、熾天使筆頭によって徹底的な監視下に置かれ、特にここ数千年の間はラーミウが熾天使筆頭を務めている。厳しくはあるが、ギリギリ実行可能な魔力獲得目標は、堕天するという余計なことを考える暇すら与えない。


 だから、遥か大昔の伝承でしかなく緊急時のマニュアルなんて整備されていない。ただ、カボチャ頭の死神が堕天使の誕生を告げると。





「効果音スタンバイ完了」

「A4・5エリア、スモーク準備OKです」

「B4・8エリア、幻影いけまーす」

「聖女マリアナ、転移魔法スタンバイOK」

「ブ・ランシュ店長カーリー並びに使い魔、所定の位置似到着」


「先輩っ、準備完了。死神マリアナ作戦、いつでも行けるっすよ!」


「よし、作戦開始してくれ」


「派手に行くっすよ。A4スモーク開始っ!」


 マリクの号令で、ヒケンの森には地中から黒い霧が溢れ出す。それが、空を覆い陽の光を遮る。突然の異変に、ざわつき始めるヒケンの森の人々。だが、魔物も出現しない森で、かつダンジョンで発生する魔物は最弱の吸血虫。ヒケンの森の暮らしの中で魔物を警戒することは無い。


「B4幻影、続いて効果音!」


 今度は黒く覆われた霧を貫くように、幾つもの稲光が迸り、少し遅れて雷鳴が轟く。


「B8効果音、続いて幻影」


 空に意識を向けさせ、次は大きな地鳴りを響かせると、無数の地割れの幻影を見せる。その地割れに飲み込まれた冒険者の姿もこだまする悲鳴も、黒子天使が作り出したもの。


「マリク、地上の各ポイントの様子をモニターに。各班は、現状を報告」


『A4エリア、地割れの幻影確認。ドライアドによる待避ルート遮断完了』

『A5エリア、地割れの幻影確認。トレントによる待避ルート遮断完了。転倒し怪我人が発生。使い魔を向かわせます』


「先輩っ、計画通りダンジョンに向かって続々と集まってきます」


「よしっ、死神投入」


「マリアナさん、出番っすよ。効果音も幻影も派手に行くっす!」


 稲光と共に火柱が上がり、大地が裂ける。一瞬の静寂の後に、大地の裂け目から出てきた人影。ジャック・オー・ランタンの頭に黒い翼、死神の大鎌を持ち宙で静止する姿は不気味だが、あまりにも異様な姿に人々の歩みは止まる。

 伝承を再現した姿は不気味ではあるが、どこか滑稽に見える。あくまでもジャック・オー・ランタンの顔の死神は、天使達の間に伝わる話でしかない。


 ただ、地上の人々にとって死神と共通するのは、大鎌を持っていることだけ。地上の人々の恐怖を煽ったが、今はざわめきの中には笑ったり馬鹿にするような声も混ざっている。


「先輩、大丈夫っすか。少し馬鹿にされてるっすよ」


「大丈夫だ、怒らせたマリアナは死神以上だろ」


 風の精霊達によって、地上のざわめきは全てマリアナに伝わっている。カボチャの被りもので中は見えないが、マリアナは確実に怒っている。

 宙に浮かぶマリアナを中心とし、風が渦巻きはじめるが、俺達が作り出した幻影ではない。堪えてはいるがマリアナの力が滲み出している。


「うるさい小蝿どもが、良く聞け! 我は死神ジャック・オー・ランタン、堕天使の誕生を告げる者。さあ、祝いの声を上げろ。魂を差し出すのだ」


 死神の大鎌を振るえば赤い軌跡が残り、それが蝶の羽となって地上へと降り注ぐ。その赤い光を浴びれば、嘲笑は絶叫へと変わり、次々と膝から崩れ落ちてしまう。どの顔も苦痛に歪み、一瞬で絶命してしまっている。


「死神だっ、死神が現れた!」


 黒子天使達が流した、死神の出現を叫ぶ声。そこで初めて、カボチャ頭が本当の死神だと理解する。さらにマリアナが奇声をあげれば、一瞬で混乱状態に陥ってしまう。


「皆、落ち着くのです」

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