異世界にて:攻防の終わり
静寂に鉄と骨がぶつかりあう音が響きあう中、白銀の髪をなびかせながら逃げながら注意がこっちに向かないように適度に鎖を投げスケルトンを粉砕しこっちに注意を向かないように行動しているのを横目に。俺は目の前の難問をどういう風に解決するかを必死に模索していた。横目で銀髪の彼女の様子を見てみると逃げ回る彼女の後を無数のスケルトンが追いかけていくのが見えた
「これは・・・・・・」
焦ってどうしようもなく使い物にならない頭が混乱してる中で必死に考える、目の前のものは触れていいものなのか、触れてはいけないものなのか、罠はないのかあるのか、どうやって壊すのか。必死に考えていると。
「・・・・このタイプの術式は根本的に吹き飛ばすとかしないといけないくて、吹き飛ばす以外には陣としての機能を失わせるためには複雑に組み立てられた術式を解体するしかない・・・・・って教わりました」
まぁ、魔術とかに関しては苦手分野ですけど。と小声で呟きながらも説明してくれた。
「これを何とかできる気がしないんだけど・・・」
吹き飛ばすか複雑に組み立てられたものを解体するしかないっていう明らかにその手のプロでも厳しそうなもの(プロがいるのか分からないが)を俺ができるのだろうか。
横を見るとティアさんが六角形の棒に触れて魔法陣を展開している。
「今は何をしているんです?」
「これの術式が、どういう風に組み立てられているのかをちょっと調べていたんです」
「どうでした?」
「・・・・・魔術が苦手な私でも、少し調べただけで分かるほどの予想を超えた術式の圧縮がされていました。いったい誰が何の目的で、こんなものを・・・」
「そんなにヤバいものなのか・・・」
「えぇ、これをこのまま放っておいたら、術式が地脈に溶け込んで人々の生活に悪影響が出る可能性があります」
「なら、どちらにせよ、ほっとけないか・・・」
目の前の杭をどうにかしないといけない訳だが、手段も能力もないのにどうやって壊せば――――
「方法なら一つだけあるわ」
いつの間にか近くに来ていた銀髪の彼女が言った。
「あれ、そっちは大丈夫なんですか?」
「えぇ、頑張って何とかしたわよ。大変だったんだから」
後ろを見ると地に縛られたスケルトン一体一体の頭部に釘みたいなものが打ち付けられている。
「見える?私がスケルトンに刺した釘が」
見えるが、見えたところで何かが解るわけがない。そのはず、なのだが。
「何だ、これ・・・」
その釘を見た瞬間に俺の視界の端に、何かマップみたいなものと細かい文字の羅列が表示されていた。
その文字の羅列の意味もそのマップも意味も分からないはずだったが、頭の中に知識が流れてきた。
知識が目の前にある釘だという事は何故か理解できた。
「どうしました?」
「いや、何か視界に映るようになったんだ・・・」
「希堂さん、あなた・・・・」
「―――――――――」
二人とも何故か、こちらを見ながら驚いた表情をして黙ってしまったが、戸惑いか何かを振り払うように銀髪の彼女が言った。
「あなたの持っているソレと剣なら魔術陣をどうにか解体できるかもしれないわ」
「でも、彼の持ってる剣はただの剣ですよ?それと魔眼だけではこの魔術陣をどうにかできるとはとても・・・」
「大丈夫よ。か、エルティアさん、それは私の渡した剣だから」
「――――それは、どういう」
「その説明はあと、希堂くんと私とあなたで剣を持てば、あとは彼次第よ」
なにが何なのかわからないが、なんとなく彼女の言うとおりにすれば目の前の杭を破壊できそうな気がする。
「意識を集中して、希堂くんは眼と手を通して魔力を剣に注ぐの」
彼女のいうとおりに目で剣を見て、腕を通して力を入れると剣を持っている手に彼女たちが手を重ねてきた。
ふと、横を見るとティアさんの体からピンクと金色の光が、逆の方からは緑がかった白色の光が出ていて、それぞれの光が剣に流れ込んでいくのが見えた。
そんな二人とは逆に俺は、その魔力を出す感覚は何となく掴めたが、魔力の量が二人と比べ圧倒的に出ていないのだ。
その素質がないのか、はたまた引き出し方がわからないだけなのか。
「落ち着いて、自分を信じて精神を集中させてあげてください」
「あなたには才能があるわ。焦らないで」
まるで、焦る心を理解してくれているようなアドバイスを聞いて、俺は目を閉じ、精神を集中させていくと体の芯から湧き出るものを感じた。
「ねぇ――――何、これは周りが結晶化していってる。魔力量も凄まじい・・・・・・希堂さん、貴方は・・・」
「やっぱり―――――」
何も分からないまま、この世界に来てまだ一日もたっていないから何も知らないが。目の前の術式を壊すことで、誰かが平和に日常を過ごせるならそれでいい。
このささやかで悪質な事件を終わらせることが出来るのなら、この三人以外誰も知らないまま終わらせよう。
「出力をもう少し抑えることはできますか。このままだと、ここら辺一帯が吹き飛びかねないので」
「その補助はこっちでやるから、安心して集中して」
そう言われたので不安にのまれそうな心を抑え込み。
剣を握っている感触は不思議なことに思った以上に重くは感じなかった。
ふと、上を見上げると銀色の光の中心を突風が渦を巻いたけれど、そんな状況に似つかわしくない程周りの状況は異様に静かだった。
白く細い腕が光に照らされてる中、精一杯支えるように手の甲に重ねてきた。
「行くわよ!!」
その合図とともに思いっきり剣を目の前にあるものに叩きつけると、ソレは音もなく消滅し光は収まった。