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夢の中の出来事④

「まぁ、こんな感じかな」


薄暗い部屋の中心に四つのベットと布団が川の字に並び、その周りをどこから購入してきたのかわからない1mサイズの鏡が取り囲むように設置されていた。


「大丈夫かな、こんなデカいの勝手にいれて・・・・・」


「いざとなれば私が何とかしますから」


ふんす、と大きな胸を張ってティアが頼もしくアピールしていた。


「すごいね、ティアさん」


流さんは軽々と四つの鏡を運んできたのを見届けて若干引き気味になっていた。


「私の周りはこのぐらいは余裕でしたね・・・・・・・・ちょっと変ですかね?」


「「「強い」」」


「そ、そうですか」


「よし、これで準備は完了っと」


さっきまで魔法陣の端で何かの作業をしていたのが終わったのかもこもこのパジャマを着たアリサが眠たそうな顔で布団にのそのそと入っていった。


「やっぱりこの世界って異世界って感じしないんだよなぁ・・・・・」


「わかるなぁ、それ。慣れ親しんだ感じがするって言うか知ってるものも多いし」


「こっちにきてからもう数週間ぐらいたつんだけどな」


「それはそうよ、ここの上層部・・・・・・あいつがそういう風にしてるのよ」


「あいつ?」


「あぁ、あの人が。異世界から来た人に対するルールを決めたっていうひとだったんですね」


「誰・・・?」


「ほら、遺跡の探査から帰ってきたときにあったあの人です。会議室みたいなところで会ったあの」


「そうなんだ・・・・・」


縦二列に並んだ布団の中でもぞもぞとうごめきながら眠気が来るまでそんな他愛もない会話をしていると

徐々に仲が良くなってきたのか俺以外の三人がたのしそうに会話をし始めた。


「ところで夢の中に入るのに必要だからこういう風にするのはわかるんですけど・・・・・・」


「落ち着かない、なんか怖いしこころがざわざわするし。」


そう、寝るといっても大きな鏡に囲まれたこの状況。必要だとしてもこんな状況はそうそうあり得ないから故に安心して眠れない。


「ごめん、ホントはもっと楽なやり方が出来るはず・・・・・・なんだけどね。今回はこれで我慢して」


ふとこちらを横目で見て(ちょっといい?)とアイコンタクトで伝えてきた。


「ちょっと慣れてないだけでしょうから気にしてないです。流さんは大丈夫そうですか?」


「う、うん、今のところは」


「なら、大丈夫ね。あ、ちょっと最後にトイレ行ってくる」


「あ、いってらっしゃい」


「・・・・・直球過ぎませんか」


「え、なにかあった?」


「女の子だったらもうちょっと言い方が・・・・」


「あ、う、うん。俺もちょっと準備しなきゃいけない事を思い出したから行ってくる」


布団から出て、アリサの後を追うようにトイレの方へと歩き出した。







廊下は電気が付いていなく、それほど長くはない廊下の突き当りをトイレの明かりがぼんやりと照らしていて突き当りを右に曲がったところで彼女は壁に身を預けるように立っていた。


「あいつはどこ?」


「わからないんだ、少なくともこの建物の中には気配は感じないんだ」


「そうなんだ・・・・何やってるんだかわからないのはアレらしいわ」


「ちょっと探してみる」


意識を集中させどこにいるかを意識して探してみようと眼を閉じ、魔眼を使う準備をした。


今まで行ったところを片っ端から探る、家から事務所といった良く知ってるところは細かく確認し、都市の中は地下から複雑に広がった迷路みたいな道とさまざまな魔術道具や呪物、さらには人の気配が多すぎて、軽く見ようとすること自体は何も感じなかったが問題は長く細かく見ようとすると目が痛くなり、凄まじい頭痛が襲ってきて意識が白く染まった。


「────────」


そして気が付くと白と黒の世界に放り出されていた。


「一体、ここは・・・・・」


「おや、どうしたんだいマスター」


そこにアーシャはいた、何をするわけでもなく何故ここにいるのかと聞くわけでもなくいたって普通にそう聞いてきた。


「あぁ、言わなくても分かるよ。手伝ってほしいんだろ?」


「まぁそうなんだけどさ。それよりもここは一体・・・・・・」


それよりも今、立っているこの場所がどんなところなのかだけが気になっていた。何もない白と黒のはざまを光が射しだした。


「気にしなくていいさ、じゃあ戻ろうか」


「一つ聞きたい事があるんだけど・・・・」


「ここで何してたって話かな。ちょっと昔を思い出してただけだよ・・・・・・・・・・先に戻ってるよ?」


畳みかけるようにそう言うとあっという間に姿が消えて、この白と黒の空間に俺だけが残されてしまった。


「・・・・・何も言われなかった」


ここに来たことを注意するそぶりすらなかった、俺が後継者とかそんな扱いだからなのだろうけど。だったらこの場所の説明もしてくれてもよさそうなものなのに。


「───────?」


視線を感じた。他に誰もいないはずのこの空間で既視感を感じた。不思議と懐かしさを感じた。白の部分は虹がかかっているし、黒の部分では星が降っている


「神秘的でとても綺麗だけど・・・・・・・・・・・・・・・・どうやったら戻れるんだろう、これは」


ここにいるだけで徐々に焦燥感が襲ってきた。


「こういう時は来た時と同じ方法をやれば・・・・・!」


眼を閉じ、意識を集中させる。そして目を開けば────。


「あれ?」


相も変わらず何もない空間が眼前に広がっていた。


「終わった・・・・・・」


声が空しく響いた。


《そんなところで何してる?》


そんな時にどこからか声が聞こえてきた。最初に聞いたときはそれはまるで加工された人工音声みたいな、次に聞くと二重に聞こえるエコーが掛かっているような、男性の声だった。


「よ、良かった。あ、あのここから戻る方法は知りません?」


《おや、もしかして迷子か》


《どうかしたの・・・・・あれ、こんなところに生きてる人間の子供なんて珍しいわ》


「どうにかして戻らないといけないんです、何か方法はありませんか」


《すぐに返してあげるから安心して待っていたまえ、聞きたい事もあるしな》


「・・・・・・・・・俺からも一つ聞いても良いですか」


《うん? 何かしら》


「ここっていったい何なんですか」


それを聞いた姿が見えない彼等からは戸惑っている雰囲気を感じた。


《気になるか》


「えぇ、まぁ」


《といってもなぁ・・・・・・》


《もうなにもないのよねぇ、ここは もう終わった場所だし》


「終わった場所?」


その言葉に引かれ、もう一度周りを見渡すが。町があったとか文明があったとかそんな名残は感じられないし、空のように広がる白とそこに架かる虹。夜空のごとく広がる黒と瞬く流れ星がこの神秘的な風景が終わった後に出来た風景なんだと。


《君はどうしてここに迷い込んだ、君のような子供が来れる場所では・・・・・・・・・・》


「人を探して目を閉じたら、気づいたらここに」


《人?》


「一応、元神らしいんですけど、ちょっと手伝ってほしい事があって」


《元神ねぇ、わざわざこんな所に来る人がまだいたなんて驚き》


《・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・フ、フ》


「あ、あの?」


《フ、フハハハハハハハハハハハハハハハ!! まさかこんなことがあるとはなァ!》


高笑いが、この空間を、終わった場所と言われる空間に響き渡った。その声は反響するわけでもなく、果ての見えない境界線にただ空しく消えっていくものだけのものだった。


《病気が再発したのかな?》


《傷つくがそれは否定できないな!》


しかし、たくましく反応する彼はどこか────。


「嬉しそう・・・・?」


《うむ!奴ら邪神もそうことをするのかと、やはり世界は面白いなァ!!》


《そんなことはどうでもいいから早く少年を返してあげようよ》


《いや、しかし。たくさん聞きたい事が・・・・・!》


《早くやれ?》


《う、うむ。で、ではさっさと始めよう》


この数分でどっちが上なのかわかるようなやり取りを繰り広げていた。


《では、眼を閉じてくれ》


「それはやったんだけど帰れないんです」


《なら何かが足りてないという事なのだろうな。まぁ我らが後押しするからすぐにでも帰れる》


《だから安心して目を閉じていればいいわ》


「あ、はい」


目を閉じ、その時を待つことにした。


「帰る前に名前を聞いておきたいんです」


《ふむ、殊勝な心構えだな・・・・・・・・本来だったら名前を教えているだろうが、もう意味はないのでな》


《すぐにここから立っちゃうし、二度と会う事はないでしょうから》


まるで出合わせたタイミングが悪かったら、ここから二度と帰れなくなっていたような言い方に冷たいものが背中を伝った。


「下手したらここから帰れなかったってマジか」


《フハハハハハハハハハハッ!!そういうことだな!》


《似合わないことはしてみるものね》


《そして最後に一つ》


さっきまでの楽しそうな雰囲気をまとい笑っていた男性の声がとても真剣そうな声音で訪ねてきた


「?」


()()の事をよろしく頼む》


「え?」


何故そんなことを言われたのわからずあいまいな答えでしか反応できなかった。


《そら、もう時間だ。行くがいい》


《ばいばーい》


声が遠ざかると同時に来た時とは違う無理やりガクンっと意識が引っ張られる感覚が突き抜け、足の甲が床材に触れそれに少し遅れて木質の床材の冷たさが足を伝ってきた。


「大丈夫?」


「あぁ、うん。それよりどう来てる?」


「ついさっきよ、眼を閉じてそれほどたってないけど・・・・・・目を閉じてる間に何かあったの? おとうさん」


薄く光る腕輪の光が暗闇の廊下を照らす。そのおかげでアリサが眉をひそめているのが分かった。それほど心配してくれているんだろうけど。


「・・・・・・・・・・大したことじゃないよ」


「なら戻りましょうか、アイツに手伝ってもらわなきゃいけないもの」


そう言い彼女は急ぐようにして寝室に戻っていくのを見て、急いで後を追いかけた。


「あれ、遅かったね」


「いや、だって帰り方教えてくれなかっただろ・・・・・それでちょっと色々あったんだよ」


「へぇ、色々ね・・・・・」


部屋に入るやいなや布団に寝っ転がりながらそんな軽い話をしつつ、眠たそうにしながらこっちを見上げていた。


「準備は終わったの?」


「それはもちろん、こんなの赤子の手をひねるよりも簡単なことだし」


「さすが元神様、どんなことでもお手軽に出来るんだな」


「・・・・・・・そうだよ、もっと褒めてくれてもいいんだよ?」


 ふふん、と自信満々にない胸を張ってアピールしだした。身長のせいか子供が親に褒めてくれるのをねだってるようにしか見えなかったのは内緒だ。


「ほんとにこういうことが得意なのは上位存在らしいわね・・・・・悔しいけど」


「いやぁ、気持ちいいね。褒めてくれるのって!」


「・・・・・・・普通にすごい事だと思うんですけどね」


ティアの言う事に同意するように思いっきり首を縦に振った。そんな俺たちの反応を見て驚きの表情だったのが、整った顔立ちが徐々に険しくなってきた。


「だって神様はこんなことできて当然だからって誰もほめてくれなかったんだよ!? ふざけてるよね!! そもそもね────」


昔の鬱憤(うっぷん)をぶつけるかのように愚痴を言い始め、夢に備えるために寝る予定だったはずなのに愚痴が始まりそうだったので、仕方なく布団に顔をうずめながら聞き流す準備をしようとした。


「はいはい、それはあとで聞いてやるから。今はさっさと寝ろ・・・・・・・・・子供じゃあるまいし」


「いや、でも・・・・・」


「寝ましょう、ね?」


二人の圧に押され、渋々と言った様子で何故か俺の布団に入ってきた。


「なんで!?」


「ちょ、ちょっと・・・・?!」


「マスター、使い魔の面倒はちゃんと見ないといけないからね。こんな時も仕方ないよね」


これが普通のパジャマとかだったら、何の心配もない・・・・・・ないか? はともかく、薄いキャミソールを着てるというのだから気が収まることもなく、鼓動が激しくなる。そんなこっちの状況を知ってか知らずか遠慮もなくスルスルと布団に入り込んできた。


「じゃお先~」


周りの事など知った事かと言わんばかりに寝息を立て始め、そんなことになってはっきりいって心臓の鼓動が激しくなっていた。


「くっ・・・・・私もやればよかった」


「アリサさん?」


「ほ、ほら。もう寝ないと・・・・・」


「そ、そうね。もう準備も終わってるし・・・・じゃあ、おやすみなさい」


なんか言葉の口調に憎しみを感じたがきっと気のせいだろう。おそらく・・・・。


「・・・・・・二人とももう寝てるし」


ティアの方を見るとこちらから背を背けるようにしていたがちらっと見える肌が赤く染まっているのが見えたので、寝る前なのになんでこんな憂鬱な気分でいなきゃいけないんだ、と思いつつとなりの使い魔さんがとなりから半目で半笑いでこちらを見ていた。


「・・・・・・・・何だよ」


苛立ちのせいか、そのまま話すと言葉が若干強くなりそうだったので何とか感情を抑え口に出すことには成功したようだった。


「そんな顔しないでくれよマスター。こっちだってちゃんと考えてこういうことしたんだから」


「それだけかなぁ」


「これだけだよぉ?」


そう、言ってはぐらかそうとしているものの。にやにやと笑っているのが面白がってこういうことをしているのが隠す気がないのがあからさまだった。


「・・・・・・・・・・ちゃんと寝れるかな」


「寝れる寝れる。心配することはないって、ちゃんと寝れるようにくっついていてあげるからね」


細い両腕ががっちりと胴体をホールドするのが伝わってきた。伝わってきたのだが白い肌がやけに朱に染まっているのが気にかかったけど、身長の問題でアーシャの方の表情は確認できなかった。


(・・・・・・・・まぁ、気のせいだろ)


そのまま目を閉じ、眠気に意識をゆだねた。


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