夢の中の出来事①
「はぁ」
次の日、俺たちは事務所に向かうために移動していた、道中モノレールに乗り、目的の事務所の近くの駅に着き階段を降りたところでそんな憂鬱そうなため息が後ろから聞こえてきた。
「酔ったぁ・・・・」
「そんなに激しく揺れましたっけ」
「人混みが苦手なの私」
「あぁ、なるほど」
もうちょっと遅い時間でも良かったかな、と内心後悔しつつ。近くにあったベンチで休んでから行くことになった。
「ふぅ・・・・」
のどかな昼間の時間にもう二度と感じれないであろう少しの背徳感を懐かしみを感じながら休んでいると。
「・・・・・・・」
悩んでいるかのような仕草をしながら、こちらをちらちらと見ている流さんが見えた。
「な、何か?」
「貴公くんはなんでこっちの世界に来たのかなぁって思って」
「え?」
「それで?」
申し訳なさそうに悲しい表情でこちら見ながら謝ってくるのを横目にしながら答える。
「メール見てたら突然、放り出されて」
「気が付いたらここにいたって事?」
「う~ん、まぁそんな感じだったかな」
「私もそんな感じだったよ!」
よかったぁ。っとまるで初めて同じ感覚を共有できる人を見つけて喜んでいる人のごとく笑顔で答える彼女に不器用な笑顔を浮かべるしかできなかった。
(言えるわけがない・・・・空に放り出されて死にかけて助けてもらったなんて・・・・!)
「流さんは?」
「・・・・うん、私もそんな感じ」
ぎこちなく笑顔を浮かべ、そう答える彼女からはどこか安堵したように軽く息を吐いてベンチに手足を放り出すように寝っ転がったのでそのまま木陰で少し休んでから事務所に向かった。
✱
「夢かぁ・・・・」
いぶかしむような視線を放ちながらそう言い放った。
「まぁ、そんな気にするようなもんじゃないってアーシャは言ってたような気がするから大丈夫だと思うんだけど」
「ちなみにそっちの人は見たの?」
そう尋ねられると流さんはぎこちなく首を横に振った。
「ふぅん」
ばつが悪いというか何か剣呑な雰囲気が場に流れている状況でそんなやり取りが繰り広げられていた。
((なにこれ・・・・・)」
何故かアリサはずっと流さんをにらむように凝視しながら身を乗り出し、そんな圧から逃げるように身を逸らしているそんな状況に向かいにいるティアも疑問に思っているのかお互いに目を合わせていた。
「・・・・・・まぁ、いいわ。泊っている間の事は依頼が終わってからゆっくり聞かせてもらう事にするから」
話を元に戻すようにそこから少し間を開け、こちらに振り向いて。
「それで夢を見ただけなの?」
思い返すと引っかかることはあったのでその事を話すと、表情が固まった。
「話は聞いてるんでしょ、さっさと出てきたらどうなの」
苛立ちを含んだ声でアーシャを呼んでいるのはすぐにわかった。そして思った以上にすぐに返事は帰ってきた。
「はいはい、何か用?」
「あんたねぇ、夢の危険性ぐらいちゃんと説明したのよね?」
「危険性?」
「ちょっと難しいというかややこしいっていうか・・・・・・え~っと」
「してないよ」
頭を抱え悩んでいるアリサの事をあざ笑うかのように横やりが飛んできた。
「はぁ!?」
「そんなことをする必要なかったし、さすが後継者っていうだけあってすぐに適応しちゃったもん。うちのマスターは」
夢の中に急に放り出された時に感じた体が濡れる感覚に身震いするほどの水の冷たさ、底の見えない暗闇。それらは夢の中とは思えないほどの鮮明なモノだった。
まぁ、それを思い込みで乗り越えたって言うんだから、何とも言えない話だ。
「えぇえぇ、そうでしょうね。その程度のもの試練にもならないでしょうね」
苛立ちを含んだ口調でアーシャのほっぺたを思いっきりつねっていた。
「そりゃ試練にもならないけど良くない生きてんだから」
「そこには苛立たしいけど文句はない。でもそういう話じゃないの、あんただったらその程度塞げたでしょ?!」
この数週間、様々依頼を受ける中危険なことや怪異などと戦う前などは基本的にアリサが依頼の細かなところを確認してきてくれたおかげで一回も不注意以外で怪我や傷を負ったことはなかった、そんな心配心からの発言なんだろう。しかし────。
「だってそれじゃおもしろくないじゃん」
「こいつッ・・・・」
まるで子供のような無邪気で愉悦をにじませた声でアーシャは答え、それに突っかかるようにバッチバッチにぶつかっていくこの流れもこの使い魔もとい元神はこんな調子であざけるような答えることもこの数週間で学んだことの一つだった。
「・・・・・・・・・・・二人とも?」
そう言われて黙る二人もようやく見慣れてきた光景だった。
「それで夢についてですけど・・・・覚えてます?」
おぼろげな記憶を思い出すようにう~んう~んと唸りだした。彼女も何かしらの夢を見てたらしく口に出しても大丈夫なのか心配そうにこっちに目合わせしてきたので、背中を押すために頷くと重い口を開いた。
「・・・・・・・・・・・・・・明かりに囲まれていたってことしか。覚えているのはそんぐらいだけど・・・・・・こんなので大丈夫?」
「念のため、一応聞いておきたかったのでありがとうございます。それでですね、この後ちょっと時間あります?」
丁寧な敬語を使い満面な笑みを浮かべるティアを見た流さんは最初は戸惑った表情を浮かべていたが、徐々にその表情は青ざめたものに変わっていった。




