とあるのどかな日の依頼 1
二人に置き手紙を残し、依頼人・・・・・シイナさんとともにとある海岸沿いの高級そうなマンションの前に来ていた。
「ここにあってほしい人がいるんです」
そういわれ案内されるままにマンション内に案内され一階、二階、三階と階段を上っていき少し歩いたところの部屋の前まで来た。
「ちゃんと起きてるかなぁ。そもそも寝てない可能性も・・・・」
「どうしました?」
「え? あ。いやなんでもないんです」
玄関の扉を開け、案内された部屋の中は綺麗に整理整頓されていて清潔感に満ちている部屋だった。
「あれ?」
少し部屋の見渡したのち、二つある部屋の扉を両方覗き込んだ後ちょっと呆れた様子でこちらに振り返り。
「す、すいません。ちょ、ちょっと待っててください・・・!」
「え、あはい」
そう言われたので、仕方なく席について待つことになってしまった。
✱
待つこと数十分。慌てたようにせわしなくあっちこっち行ったり来たりするシイナさんを横目にボーっとしていると。
「お、お待たせしました」
何かをしていたのか疲れた様子で戻ってきた。
「だ、大丈夫ですか・・・・?」
息を吐き、落ち着かせるように息を吐くと
「大丈夫です。ちょっと妹の準備に時間が掛かっちゃいまして」
まだ疲れているのか、まだ肩で息をしている様子だった。
「まさか会わせたい人って・・・・・」
「えぇ、私の妹です」
✱
人と面を向かって会話するのはいつぶりだろうか。
最初に頭に浮かんだのはそんな言葉だった。
「はぁ・・・・」
身体が動かない。いや、どちらかというと動かしたくないというのが正しいのだ。
さっき無理やり姉に起こされたのもあるが徹夜でゲームをやっていたのもあって未だに眠気が襲ってきている。起こされて勝手に服を着替えさせられてもベットで寝ていかったけれど、そこまでして起こされなきゃいけない理由に思い当たりがなかった。
「何か言ってたような、言ってなかったような・・・・ま、いっか」
記憶は朧気で何を言っていたか全然思い出せない。服だけは無理やり着替えさせられたのもあって着衣が乱れている。
「しょうがない起きよう」
起こされたということは誰か来てるんだろう、待たせてるのも悪いし。
適当に着衣を直し、近くにあるだろう眼鏡を探し億劫な気持ちと戦いながら重い足をなんとか動かし部屋の扉の前にたどり着いた。
未だくすぶっている眠気に心を引っ張れながらも扉を開き、居間に歩を進めた。
✱
「あ、やっと起きてきた」
扉が開く音が聞こえ、音がした方を見るとそこにいたのは特徴的な青と黒のツートンカラーのぼさぼさの髪に眼鏡をかけた女性・・・・・・淵ヶ原 流さんだった。
(なんてこったい・・・)
未だに忘れられない深夜のレストランでの出来事を思い出し、強烈に逃げ出したくなる衝動に襲われるが依頼という事もあって思いを抑え込んだ。
「それで依頼というのはですね・・・・・・・・・・あ、ちょっとすいません」
そういうと少し黙ったあと耳に手を当てるとホログラムのモニターが現れ、そこに書いてある何かを少しの間読んだあと。
「どうしよう・・・・」
そんな思い悩むようなしぐさを見せた、こっちと流さんの方を何回か見て覚悟を決めたようだった。
「ちょっと緊急な用事で今すぐ行かなくちゃいけなくなって、当分帰ってこれないだろうから何とかして・・・・・・・」
席を立った後、せわしなく動き回って白いスーツに着替えたあと、何かの準備をしたあとこちらにふりかえったあと。
「妹の事を当分お願いします!!」
それはもう、とても素晴らしいと見とれてしまうほどのお辞儀をしたのち心配そうにこちらを振り返った後、走っていってしまった。
最初は緊急事態と走り去っていく後姿が閉まっていくドアに消えていくの見送ることしかできなかった。
「あ、え・・・えっと」
チラッと流さんの方を見ると顔色が悪くプルプルと身体を震わせていた。
「だ、大丈夫ですか流さん?!」
「・・・気にしないで」
そのあと流さんが落ち着くまで休んだ。
「ところで希堂さんはどうして、おねぇと来たの」
そういえば肝心のそこを聞くのを忘れた気がする。聞こうとする前に用事でどこかに行ってしまったし、でも────。
(妹の事をお願いしますって去り際にそんなことを言っていったけど・・・・・・・)
「流さんは何か聞いていたりは・・・?」
少し考えるそぶりを見せたあと、思い当たる節がないのか解らないというかのようにフルフルと頭を横に振った。
「私は大丈夫ですから・・・・」
ほっといてほしい、遠回りにそう言われている気がする。
「でも・・・」
「他にもお仕事とかで忙しいですよね?」
「い、いや別に・・・・・」
「お、お腹空いてきません?私のところにいたらおいしい食事取れませんよ?」
「軽く済ませるから大丈夫ですけど・・・・」
そのどこかテンパっているような慌ててるような感じの言い方で急かしてくるが依頼を受けている以上ほっとくわけにもいかない、あとでなんかあったらめんd・・・・大変だし。
「ちょ、ちょっとお茶でもどう・・・?」
「じゃあ、お願いします」
ちらちらとある一方向を見ながら焦るというかどこかウキウキしているような落ち着かない様子だ。
(ん?あぁ・・・・これは)
その焦っているというか、まるで何かから遠ざかようとするその姿勢はどこか見覚えがあった。
「もしかして・・・・・」
言葉をこぼすとビクッと分かり易く反応をしてくれたので余計に部屋の中が気になり、見に行こうと席を立ち見に行こうとすると、ドタバタとすさまじい勢いで目の前に立ちふさがってきた。
「ど、どうしました?た、大したものは何もありませんし? そ、それに人の部屋を勝手に覗き見るのは如何なものかとお、思うんですけど?」
何かを見つけられたくないのか動揺と焦りのせいで早口になっている。
「なんでそんなひどいことするんですか?!」
「妹の事をお願いしますって・・・・頼まれたのもあるけど」
「あ、あるけど・・・・?」
「まぁ、相手の事は知っておいた方がいいかなって」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ちょ、ちょっと待っててください」
彼女はそうして部屋の中を覗き、ちらちらとこちらを横目にしたあと。
「馬鹿にしない?」
ただただ頷く。
「じゃあ、どうぞ」
そうやって案内された部屋は暗く、パソコンらしき電子機器の光のみが部屋を照らしていたぐらいで別に変った要素もないいたって普通の部屋だった。
「暗い・・・・・・・」
入り口の近くにあるであろう電灯のスイッチを手の感触を頼りに探していると何か固いものを見つけ押すと部屋の中を光が照らすとそこにはたくさんのグッズやゲームソフトなどが数えきれないほど棚に並べられていた。
「ど、どう?」
恐る恐る聞いてくる彼女の態度とは逆に心には懐かしさを感じていた。
まさか、これでもかというほどのオタクっぷりに溢れた部屋を異世界に来てまでも見ることになろうとは思わなかったし、むしろ尊敬の念を抱くほどだった。
「普通にすごい。って言うかこれだけの作品を一体どこから・・・」
リベレア中にはこういったものを売っている場所は少ないわけではないが、大体そういう店は何故かいつも工事が入っていて店に入れないの状態になっているのが一か所だけだったらまだわかるというものだけど、他の店も全部同じ状態だったのが不気味さを感じ勇気を出して聞いてみたところ、いまは訳あって無理らしいとか呪物が埋まっていたらしいといった理由で出入りが出来なかった。
「これは・・・・・あ、あの。じ、実家から」
「なるほど」
「何も聞かないの」
「まぁ、聞いてほしくなさそうだし」
めちゃくちゃ表情に出ているんだけど、言わない方がお互いのためだろう。人に人の悩みがあるものだろうし。
それを聞いて安堵したのか、軽く息を吐いたあと椅子に座りゲームをし始めた。
(何のゲームをやってるんだ・・・・気になる)
ゲームを横で見ていること数十分。
ずっと立ち続けるのもめんどくさくなってきたので何か座れるものはないかと周りを見渡すと座れそうなものはないし、集中をして彼女はプレイをしているのでその邪魔はできなかった。
そうすると視界に椅子のアイコンが表示され、そのあとに後ろを振り向くとさっきまでそこには何もなかった場所に椅子が置いてあったのでありがたく座らせてもらうことにした。
すると流さんが「・・・・・・・・・やる?」といいそうな顔をしながらコントローラーを片手で差し出してきていたのでありがたくプレイさせてもらうことにした。
「オンラインゲームじゃ協力プレイとかできないんじゃ・・・・」
「そこは心配しなくて大丈夫」
流さんは机の引き出しをガラッっと開けるとそこには大量のゲームソフトが無造作に並べられていた。
「さぁ、やろう」
さっきまでのどこか気まずそうな表情とは違い、大切な遊び相手を見つけたかのような期待のまなざしでこちらを見てくるのでこちらも気合を入れてゲームに挑むことにした。
彼女はかなりゲームがうまく、なんかいやってもあっという間に追い詰められてしまい、こっちも熱が入っていった。
「これで終わり」
「・・・・・・また負けてしまった」
「あ」
何回かゲームをやっていると急に彼女がそんな反応をした。
「どうしたんだ?」
「い、いや。なんでもない」
そんなこんなで時間を忘れてゲームをしていると。
「やっちまった・・・・・」
窓の外をみるとすでに夜のとばりが落ちて、月の光が海を照らしていた。
連絡をし忘れたことに焦りを覚え、腕輪を見ると多数の留守電とメールが来ていたので確認しつつ返事を返していると。
「うん・・・・?」
その中の、一つのメールが目についた。
それは中身がなくまっさらで何も書いていない、中身のない普通の空メールだった。
(・・・・・アドレスも書いてないし)
何も書いてない、白紙で空っぽなのメールはそこはかとなく沈んでいくような不気味さを感じさせた。




