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とあるのどかな一日の出来事

その翌日、事務所で窓を開けのんびりと過ごしているとき、あ。と事務机を整理していたティアが大声を上げた。


「どうかしたぁ・・・・・・?」


反応してたのは前日まであっちこっち走り回っていたせいで、ソファーで枕に頭をうずめてだらっとしながら返事をした。


「そう言えばやってなかったなって思いまして」


昨日一日、リベレア場を走りまくっていたのに疲れた素振りすら見せずに事務所の棚を掃除していたティアがふと思い出したかのようにそんなことを言い出した。


「「「なんかあったっけ・・・・・」」


「訓練ですよ」


この前、手に入れた本は魔法関連のものから体術、家具といったもの関連の本を棚に差し込みの手を止めてそう言った。


「そんなもの魔法も魔術も属性だけ覚えておけば何とかなるわよ」


「・・・・・そういうものなのかなぁ」


「そういうものなの」


絶対。と言いたそうな真剣な表情ではっきり言われてしまった。


「何でそう思うんだ? 魔力がすごいからなのか?」


「まぁ、それもあるけど・・・・・・・・・それ以上に」


視線をずらした先にいたのは俺の横で寝っ転がってどこから持ってきたのか分からない漫画をつまんなそうに読んでいる元神様ことアーシャだった。


「・・・・・・ん。何か用かな」


「あんたはちょっとぐらい動きなさいよ」


「僕には向いてませ~ん」


「本当にこいつは・・・・・・・・はぁ、寝る」


気だるそうにゆっくりとベットのある隣の部屋に向かっていった。


「あとで模擬訓練とかしませんか?」


「・・・・・やる気が起きないんだけど」


「絶対やらないからね!!!!」


「体力づくりの軽い運動みたいなものなのに・・・・」


「この前まで依頼で走り回ってたし、今度にしない?」


「・・・・・体を動かすの楽しいのに。そういえば最初に出会ったときにあんなに運動神経抜群に見えたのはどうしてなの?」


「あ、あれは。神経とか筋力とかを丸ごと魔力で補ってただけだもん」


「へぇ、そんなこともできるんですね・・・・・・私にもできるでしょうか」


「もう十分じゃない? おかあさんはどこ目指してるの?」


そんな何気ない(?)会話をしていると窓から入ってくる風が吹きつけた、射す陽光も心地よくつい眠りたくなる。学校のない事に万歳したいほど穏やかな気持ちだ


「心地いいですね」


そんな言葉を呟きながら手元にある封筒を開いていた。


「その手紙は・・・・」


「えぇ、両親からです」


親が元気なのを安心した様子で軽く息を吐き手紙を読んでいた。手紙を読み続けているうちにその表情に呆れているような雰囲気が混じり始めた。


「ホントに元気なんだから・・・・・」


それでも無事なのが嬉しそうだった。そんな嬉しそうなティアの様子を見ていると嫌なことを考えてしまった。


「どうしました?」


「い、いやぁ。なんでもない」


「もしかして、この手紙を書いたのは別の人とか考えたりしましたね」


「なんで解ったんだ・・・・」


「やっぱり・・・・・顔に出てるから。晃樹君は分かり易いね」


そう指摘される顔が熱くなるのを感じた。


「私の両親は文字が独特な書き方をしていますから、それをマネできるとは思いません・・・・・それに」


何か意味深な言い方をしたあと、本を重なっている本の山に乗せた。


「それに?」


「気になりますか」


「そ、そりゃね」


「そうですね・・・・・それじゃ私の両親と出会ったときのお楽しみにね」


腕を伸ばし軽く欠伸をしたあとスッと立ち上がり。


「ちょっと私も寝ます」


そういって隣の部屋に入っていった。ベットの上ですぅすぅと寝息を立てているアリサが見えその寝顔はどこか嬉しそうでとても安心した表情だった。


「そりゃ、みんな眠たくなるもんだよなぁ。この穏やかな日差しの中じゃ」


同い年であろう少女のその寝顔に何処か幼さを感じるのは、妹にしていたみたいについ癖で頭をなでたくなる衝動を我慢させつつ、ふと頭の中に沸いた疑問が口から出た。


「親子、か・・・・・」


親子・・・・・その、何とも慣れない感覚を味わいながら考える。


前の自分は一体どうして、この二人とそういう関係になったんだろうか、興味も疑問も尽きないけれど確信していることが一つだけある。


────それはこの疑問は解けないという事。


それはなぜか、高速飛行艇で無人島に向かっていた時、アリサに『おとうさん』といわれた時。区切りをつけようとする意志が感じられたからだ。


だからきっと一生、昔の事は分からないだろうし。疑問が尽きることはないだろうが。それでも、本人が区切りをつけようとしているのならそれでいいのだろう。


「それにしても・・・・」


大都市の中、人が多くいる街の中のはずなのに心地の良い風の音だけが部屋の中に響いていた。

それが余計に眠気を誘うので事務室に戻ると机の上には本が乱雑に重なっており本が開いていたのが見えたのでどうしたのかと思い近づいてみると。


「あ」


二人とも寝ているようだった。


「軽く片付けておきますか・・・・・」


軽く部屋を見渡すといるはずのアーシャの姿が見えなかったがいつもの事なのでいったん置いておいて。

それ以外の途中になっている本を本棚に戻す作業をして始めた。


「しかし、こっちには色々あるなぁ・・・・・・」


()()()は魔術関係以外にもSFとかに出てきそうな機械や何のためにあるのか分からない変なモノがここ数週間、依頼を受けリベレア中を動き回ってみてきて分かったことがあった。


「なんかこう独特と言うか、変なものが多いのは何なんだ?」


「もっと分かり易く言ってくれない?」


「そう、なんかこう独特な・・・・変わった感じの・・・・」


「変わった感じってどんな感じ? もっと詳しく」


「色々、混ざった感じって言えばいいのか・・・・・・・ん?」


そこまで口にして二人とも寝ているはずなのに今話しているのは誰なのか、そんな疑問が頭に浮かんだ。

ドアが開いた音はしなかったし、誰かがいる気配もしなかった。

が、この聞き覚えのある声・・・・・綺麗な声の持ち主は。


「シェイド」


「はぁい、なぁに?」


振り返る。そこに、さっきまで寝ている二人と俺以外にいなかったはずのこの部屋に、そのシスター服に似合わない悪い笑顔を浮かべながらこちらを見ていた。


「一体、いつからそこに」


「そんな事よりさ、合わせたい人がいるんだけど。どう?」


返事を待つこともなく、玄関のドアを開けようとしていた。


「・・・・・・面倒ごとじゃないよな」


せっかくの休みが面倒ごとでつぶれそうになることに若干、不満を感じながらもそれを押し殺した。


「そこまで警戒することでもないから大丈夫だって」


「これで何回目だと思う?」


「あれは、嫌な事件だったね・・・」


目の前のシスターは眼を細め遠くを見るようにいった。文句を言いたいのはこっちなんだけどな。そんなこっちの心情を気にする様子もなく。


「大丈夫だって、今回は相談したいっていう依頼だから」


「・・・・・どんな人なんだ。訳アリじゃないよな」


「さぁ、どうだろう。まぁ、すぐに来るから話はそれから」


「すぐに来るんだったら、二人を起こしてこないと」


「別に起こそうとしなくてもいいと思うな、私がベットまで運んでおくから」


きゃしゃな体に似合わず、軽々とティアの体を持ち上げ、ベットのある部屋まで運んでいこうとしていた。


「あ。変なこと考えちゃ駄目だぜ?」


クックッと笑いながら、そんなことを言ってきた。頭の中でいろいろ考えそうになるのを頭を振って振り払う。


「そんな度胸はありません!」


「そうかぁ、そうだよねぇ」


ソファーによっかかりながらニヤニヤといやらしいシスター服に似合わない笑みを浮かべていた。


「・・・・・・・そんなことはいいから、その依頼の人はどこにいるんだ」


「顔が赤いよぉ?」


「別に気するほどの事じゃないだろ?!」


「そうかな、結構大事だと思うんだけど。」


「けど・・・・?」


口角を上げ愉しそうにしながら、片づけようと思っていた本を適当に手に取り読みながら。


「そりゃおもしろいからね。シスターやってると人の()が分かるから」


「・・・・・・・・・・・・・・趣味、悪いな」


「失礼だなぁ、これでも評判はけっこういいんだよ? 実益も兼ねてるし。趣味が悪いのは否定しないけど」


実際にこの前の依頼でリベレア中を走り回ってる時にそんなことを聞いた気がする。大抵の人間関係はシスターに任せれば解決すると言っていたっけ。あのシスターは荒療治すぎるとも言っていた気がするが。


「え」


そんな風に考えているときにそんな声がドアの向こう。玄関の方からそんな声が聞こえてきた。


「お。来た来た」


次の瞬間、ドアがガチャっと開いた。そこに立っていたのは黒を基調とした制服を着たすごい美貌の黒髪の大人の女性だった。とても厳格そうな雰囲気を醸し出していて話しづらい空気だった。


「え、えーっと。相談室ってここで合ってますか?」


「(相談室・・・・? ま、まぁ似たようなもんか)合ってますけど」


「そうですか、良かったぁ。私の事はシイナと呼んでもらえれば」


「俺は希堂 晃樹っていいます」


アリサとティアの二人を起こしてこないといけないんじゃないだろうか、でも依頼者をほったらかすのもなぁ。


「ちょ、ちょっと待っててください。他の二人を・・・」


思った以上に話題を振られるのが早かったので、さすがに他の二人を起こしてこないと失礼かなと起こそうと立ち上がる。


「貴方に。()()()()()依頼をお願いしたいのです」


その言葉の意味が解らなかった。それ以上に頭が動かなかった。


こんなことはこの数週間なかったし、基本的に三人で動くとこが多かったからだ。


「・・・・・私には何もできませんでした。」


声音に後悔をにじませているのが初めてあった自分にも分かるほどだったが、何故、自分なんだろうという疑問が尽きなかった。

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