闇が降る
数か月前────とある研究室にて。
「・・・・・何度も言わせるな、これはすでに決まったことだ」
白衣をきた白髭の老人が椅子に座り真剣な表情で椅子に座り書類を睨みつけながら目のまえを相手に忌々しげにそう呟いた。
「なぜ、何故ですかっ・・・・・これほど素晴らしいものを発見した私が追放されるなど納得できるはずがないでしょう?!」
机に座った目の前の白衣を着た老年の男性はそれを見ながら呆れた表情でそれを見つめていた。
「君は君が開発したものの素晴らしさを思うぞんぶん見せつけ誇りたいのだろう。気持ちは分からなくもない。だがこの件に関してはそんなことは何の意味も持たない、君が結果を出すためにやってきたことの傲慢さが問題なのだ」
目の前の男はこれを納得しないだろう。老年の男性はそれを愚かなのだろうと思う事しかできなかった。それは沈黙の中でも鋭くある目つきがそれを物語っていた。
「しかし・・・・・・・・!!」
「ともかく」
その言葉には理由を知らない他人が聞いていたとしても、そこにどれだけの感情が含まれているのか、たとえその当人が冷静を装っていたとしてもすぐにわかってしまうだろう程に明確に表れていた。
「君を魔法研究会から・・・・・いや、都市から追放する。もうその顔を見ることはないだろうな」
✱
俺が台座に近づき女性が無事かどうか確認みるとどうやら意識は失っているらしく反応はないが一安心していると突如、視界の端がまるで危険を示すかの如く赤く染まり周りを見渡すと暗い闇の中にこちらを覗く赤く光る残光が複数見えた。
「何だ・・・?」
徐々にその赤い残光たちは月明かりのもとに正体を現した。
「あのスケルトン・・・・」
その姿を見た時に何か既視感を感じ、じりじりと近づいてくる相手を前に不思議と緊張を感じず戦闘に入る態勢にとりつつふと考えた
逃げるか戦うか────女性を守りながら戦うのはきっと難しい、あの時みたいに消し飛ばすのも考えたが女性にもきっと被害が及んでしまう。ティアたちが付くのを待つのが一番いいのだろうがそんな時間があるだろうか俺一人で守り切れるかどうかそもそもなんでこんな台座に縛られているのか────。
思考が加速する感覚の中でふとスケルトンたちが間を開けていき、その間から人影が現れるのが見えた。その人物がはっきりと解るところまで近づいてきた、それは眼鏡をかけ白衣を着たあきらさまに何かの研究者と言った風貌の男性だった。
「こんなところに子供が迷い込むとはこれは計算外だが、まぁいいだろう・・・・・・そこの君」
とっさに後ろにいる女性をいつでも守れるように近くまで下がる。
「そう警戒しないでほしいな。私は今、実験を行おうとしていたところでね」
「・・・あんたがこの人に許可を取ったようには見えないけどな」
にこやかな笑顔で優しく語りかけてくるがその語り掛けてくる雰囲気には笑顔に似つかわしくない・・・まるで相手に脅迫しようとする雰囲気を感じ取れた。
「なぜ、許可なぞとる必要がある。そもそも、そこの女は怠惰な生活を今までさんざんしてきたのだし、
どんな人間でも役に立てる実験に参加しているのだ、喜ぶべきではないか?」
✱
昔から実験を行おうとするたびに何故か邪魔が入る。私はいつもこの世界のために魔法の未来を案じているのに、どいつもこいつも理解をしないどころか腫物を見るような目で私を見てくるのが理解できなかった。私の実験で役立ててやってやろう言うのに邪魔をされてきた。
(・・・・・この場所で結果を出せば奴らももっといい材料を仕入れてきてくれるに違いない)
だから目の前の素材たちには私の栄光のための贄になってもらわないと困るのだ。
✱
茫然とするしかなかった、それは目の前の男の身勝手極まりない主張とその本質が突然、テレパシーのごとく流れ込んできたことにそんな反応をするしかなかったからだ。
「役に立つとかじゃなくてその言い方が気に入らない、その傲慢さが気に入らない」
目の前の白衣を着た男はまるで信じられないものを見るかのように、あるいは理解できないものを見るかのようにため息をついた。
「・・・何故、無関係な君が見も知らずな赤の他人の命を救おうとする。ほっとけばいいだろうに」
「考えがまるわかりすぎるな、ゲス野郎」
「げ、ゲス野郎だと!?」
「そりゃそうだろ、そこまで関わらしたくないのはこの人の命を使う実験の邪魔をされたくないからだろ?」
「・・・・・・・・何故分かったのかは知らないが、やはり凡人の子供には理解できないか、この研究の素晴らしさが。所詮、魔力も持たないただの子供、この素晴らしさが分からないと見える」
「ならば、お前もこのじっけんのにえにしてやりゅッ・・・・!??!」
ゴガッと鈍い音とともにいきなり白衣の男の体が砂を巻き上げながら、くの字に曲がり飛んでいったのとほぼ同時に男が立っていた位置に二人の人影が突っ伏していた。
「も、もうなんで急に速度を上げたんですか・・・・」
「ご、ごめん・・・・ちょっと見過ごせないものが見えたから」
アリサは地に付した態勢から急いで立ち上げると少しフラフラとした足取りをしながら速足でこちらに駆けよってきたのと対照的に後ろのティアはしっかりとした足取りだった。
「おとうさん大丈夫?!」
「あの人は一体・・・」
近づこうとするティアの腕を掴んで止めながらまさかのおとうさん呼びとその勢いに押され、少し砂ぼこりを被りながらも白い肌に合う綺麗な銀髪、そして碧い瞳の整った顔がすごい勢いで顔に近づいてきた、その表情は真剣そのものだった。
「・・・・う、うん。ま、まぁ」
「ど、どうしたんですか?」
「二人ともアイツに近づいちゃだめだからね。おとうさんは何かされてない?!変な術式をかけられたとか・・・・そこらへんはアイツが勝手に弾いてくれるか」
話しについて行けないが、きっとこの話の流れ的にきっとアリサが言っているのは白衣の男の事なんだろう。
「あのゲス野郎の事?」
深くうなずき、少し考えたのち何かを吹っ切るかのように首を横に振った後、低い声音で。
「なんにせよ、もう一度ぶち込めばいい話ね」
「・・・・もしかして、あの白衣の人って」
「えぇ、あの大事件を起こそうとした張本人よ」
何かとてつもない事件を起こしたやっぱり禄でもない奴らしい。ほかにも色々聞いてみたい単語が聞こえてきたがとりあえず目の前の事を優先しようと脱線しようとした感情をもとのレールに戻した。
「スケルトンたちは・・・・」
周りにいたスケルトンたちを見渡すと止まったまま塵のように消えていった。
「・・・まさかこの術式をまた使う時がくるとはね」
手元に花が描かれた魔法陣が見えた。
「べ、別にあの時は使うの忘れていたわけじゃないわよ?!」
何も言ってないのにそんなことを言い出した、アリサが言っているのは初めて会った時にスケルトンに襲われたことを言っているのだろう。
「い、いや、あの時は・・・・色々あってね。あの、その・・・」
気にしてないのに頬を赤く染めて必死に言い訳をしていようとする姿がなにか無性に愛らしくて黙りつつも腕は動いて何かの作業の準備をしているようだったが、しばらくすると真剣な表情で作業をし始めた。
「一体、何を?」
「何かあったときのためにちょっとね」
「手伝おうか?」
「疲れてるけどこれだけは晃樹君にもやらせるわけにはいかないの私の・・・・私がやらなきゃいけない事だから、ごめんね」
作業の内容こそ言ってくれなかったが、真剣な表情の横顔には影が掛かりどこか執念を感じさせた、ふと周りを見渡すといつまにかティアの姿が見えなくなっていた、きっと警備隊を呼びに行ったんだろう。
「ここを・・・・こうして・・・・・・あぁ、もうそうじゃないって・・・・えっと」
作業をしながら試行錯誤をしているらしくうんうんと唸っているアリサを見ていること数分後、後ろから複数の足音が聞こえてきたので振り返るとそこにはティアが白色のスーツに天秤のマークのバッジを付けた警備隊の人を三名ほど連れてきた、そのうちの一人は見知った顔で金髪のエルフの女性だ。
「まさかこんなところにいたとはここら辺一帯は捜索したはずなんですが・・・・・」
警備隊の一人がついて早々に目の前の白衣の男がいることを信じられないようだったが警備隊の二人が興味深そうに見ていると気絶している白衣の男に一人が手錠を付けて連行していった。
「・・・・まさかこんな時間に見つかるとは、せめて陽が出てる時に捕まってくれたら良かったんだがな」
眠そうに欠伸をしながら黒上のオールバックに目つきが鋭い警備員がそう呟くと。
「そんなことを言わないの、早めに見つかっただけ良かったと思わないと」
「そりゃそうか」
金髪のエルフの女性が男性を注意をした後注意をされた男性がこちらを見ながら勝手に頷いた。
「・・・・・って言うかあなたも行かなきゃダメじゃない。今度こそ逃がさないようにしないといけないんだから」
「そうだな、じゃあ後の事は頼むわ」
そういうとあとを追いかけるように男性は走っていったのを見届けたあとエルフの女性・・・・フェレンスが
「そういえば台座に捕まってるって聞いてたんだけど・・・・」
そこに関しては警備隊が来る前に何度か台座から引き離入れて立たせようとしたのだが何故か何をしようともうんともすんとも言わなかった。
だったらと魔眼で見れば解決の糸口が見えるのではとも考え見てみたらバリンッという音とともにさっきまでの異様な重さが嘘みたいに引きはがせたので近くの木に持たれかけさせるように寝かせていた。
「怪我もしてないみたいだし問題もなさそうだけど・・・・ほっとけないし病院に運ぶしかないか」
「時間も遅いですし、警備隊の人に病院まで送ってもらえば・・・・」
「今、部屋が空いてるか医療機関に確認してみるわね」
フェレンスが病院に連絡をするために場を離れ、少しした後。
「ここは・・・・・」
意識が戻ったのか女性が体を起こした。
「意識が戻ったみたいね大丈夫?」
「え。あ、はい」
「申し訳ないけど今からちょっと・・・・」
そう言いかけた時、とても慌てた様子・・・・・というかテンパった様子で走り出し森の近くで止まりこちらを向き何回も頭を下げた後そのまま森の中に姿を消していった。あっという間の出来事だったので何の反応もできなかったが視界に映る魔力の痕跡がはっきりわかった。
「すごい勢いで行っちゃった・・・・話を聞かないといけないんだけど」
返事を待つこともなく後を追いかけるために先も見えない闇の中に向かって足を向けた時。
「私も行きます、探す人数は多い方がいいですから」
「右に同じ、それに・・・・・」
こっちをチラッと見たあと、溜息を吐いたあとちょっと嬉しそうな表情した。
「・・・・人って一回死んだくらいじゃ変わらないんだなぁって思って」
俺は前世と何ら変わってないらしい。マジか。
「彼女なりの事情があるのかもしれないけど、出来るだけ早く見つけてきてね」
彼女が申し訳なさそうに顔の前に両の掌を合わせてお願いしてきている以上やるしかない。
「はぁ・・・・・疲れたわ」
「どんな事情があるにせよ逃げる必要性は・・・・・」
「俺にはちょっとわかるかな・・・・・・逃げてしまうあの人の気持ち」
そんなこんなで俺たちは逃げた彼女を追いかけるように森の中を通り、彼女を探すために町の中に繰り出した・・・・といっても魔力の痕跡はまだ視界に映っているからすぐに見つかるだろうし。
『僕も彼女の事を目で追ってるか「すぐに見つけたほうがいいことに違いはないけれどね。また面倒ごとに巻き込まれないとも限らないんだし」
補足するようにアーシャの声がコードから聞こえてくると、それを遮った。
「・・・・・だったら急げばいいじゃん、ばぁか」
遮られたからか不満そうな返事をしたのち黙ってしまった。
「別に遮んなくても・・・」
ティアが注意すると黙ってしまった
俺がアリサの顔を見ると何故か顔を逸らしたあと、口を開いた。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・あとで謝ればいいんでしょ」
そんな言い合いをしながら俺たちは夜の街に人探しに駆けだした。




