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傭兵と琥珀姫  作者: 大石次郎


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人形の補修と改修

俺達はケンタウロスレース騒動の損失を補填してから次の郷の行くまでに街道からちょっとズレ、近くの森に入っていた。

魔除けの香を焚きつつ、馬と銀毛種の騾馬でずんずん進む。暗森と違い、そこまで森の魔力は強くない。

モンスターより野生動物が目立つくらいだ。林道に沿わなくても香のゴリ押しでなんとかなる。


「ん~、ハーフエルフの隠れ里情報だとこの辺なんだけどなぁ?」


「勝手に使っていいもんか?」


「家主は仲間のハーフエルフ達がとっくに弔ってるし、直して家をオイソンの町のハーフエルフのコミュニティに知らせてくれるなら好きにしていいって言ってたもん」


この辺りにかつてハーフエルフの隠者(いんじゃ)が暮らしていたらしい。

隠しの結界を張る石もいくつか置かれていたが場所や合言葉を聞いていたので特に支障は無かった。

まぁ俺が1人で初見なら(この森、意外と深いな)くらいの印象で素通りしてたろうが。

とにかく隠しの結界の石を目印に探し周り、俺がそろそろ野営場所を考え始めていると、


「あったあった!」


「・・おお」


半壊して草やら蔓やらに覆われた家を見付けた。


「土に還りかけてるぞ?」


「いや、いい魔法素材が使われてるし、加工も優れてる。何より、家、の魔法がまだ解けてない。・・リビルドっ!」


人形のディッカが騾馬に乗ったまま建造物を復元する魔法を使うと、草や蔓が取り除かれ、潰れた家は独りでにすぐ住める状態になった。


「おお~っ! ギャンブルでダメな人だと思ってたがちゃんと魔法も使うんだなぁ」


「しつこいねっ! 懲りた、って何回も言ったでしょ?」


「どうだか」


「夜伽とかワーバニーカフェにすぐ反応するクセにっ! ムッツリ小姑っ!!」


「ムッツリ小姑っ?」


ヒドいあだ名だっ。


「もういいっ! 中を見よっ」


人形のディッカがプリプリ怒って騾馬を降りたので俺も続くことにした。

馬と騾馬を外に繋いで中に入ると、独りでに部屋に吊るされていた魔法道具らしいカンテラに灯が点った。

昨日まで人が住んでいたようだ。気味が悪いくらいだぜ。


「いいじゃない。あとは倉庫ね」


「ホントに持ってっていいのか?」


正統性云々ではなく、条件付け発動する魔法的なトラップを警戒してる。


「ちゃんと断ってるもん。家は後で引き渡すしっ! アンロック!」


床に一角にあった地下倉庫への扉の鍵を魔法て開ける人形のディッカ。

地下への階段や地下倉庫のカンテラは次々と点いた。


「・・アンデッドが出そう」


「ここに既にいるようだけど?」


「なんだよっ」


肘鉄を脇腹に喰らった。人形、結構パワーあるからなっ。


「イテっ」


「降りるよっ、ダイスケ!」


「はいはい」


地下へ降りるとまた鍵の掛かった扉があり、これもディッカが開けた。

防腐剤らしい臭いのキツい中へ入ると、すぐに魔力灯が点った。


「素敵っ!」


妙に広々とした中には精巧なドールゴーレムが2体置かれていた。

1体は姫のように美しいドレスを着た人形。もう1体は無骨な重戦士のような甲冑を纏った人形。


「隠者にして凄腕のドールゴーレム職人タルゴイエの最後の傑作! 姫と雄牛(おうし)! あたしの容れ物(いれもの)にピッタリっ!」


「それもいいだろうが、なんか、嫌な予感するぞ?」


この2体、死んでない。この部屋も耐久系の魔法が掛けられている気配だった。


「新ナ主・・」


「試シノ時!」


姫と雄牛は動きだした。


「タルゴイエは次のドールゴーレム職人か人形遣いにこの2体を託すつもりだったみたいね! テスト付きでっ」


「ディッカはそのどちらでも無いような気はするけど?」


俺はハルベルトをウワバミのポーチからパーツを取り出し、一瞬で組み立てた。


「明日の可能性は意外な形で現れる物だよ?」


ここで2体の人形達は俺達に襲い掛かってきた。姫は十指から細い魔力の刃を放ち、雄牛は単純に突進してくる!

俺とディッカは飛び退いて十指の刃を躱し、ついでに俺は突進してくる雄牛に爆弾を投げ付けて止めた。


「壊していいのかっ?」


「パーツの確保と構造を調べられれば十分っ!」


「了解!」


俺は雄牛に迫った。ディッカはレジストの魔法を自分に掛けつつ姫に突進する。


「ガガガッ」


雄牛は力任せに2本の棍棒で撃ち掛かってくる。これに入るつもりか? ディッカっ。


「よっと」


棍棒の連打を避けつつ、岩通しで左膝の関節を突き砕く。


「ガガッ」


雄牛は左脚をあっさり切り離し、右足を軸に棍棒を振り回しながら激しく旋回を始めた。


「デタラメだろっ?」


軸の右足を狙って爆弾を投げ付けたが、見切られたらしく棍棒で粉砕、爆発させられた。棍棒は無傷だ。マズったな、あの形態になる前に片腕でも潰しときゃよかったぜっ。


「ルールルッ!!」


姫の方は歌うように叫びながら十指の魔力の刃に加え、脚先からも斧のようなより強力だが射程の短い魔力の刃をディッカに放っていた。

しかも魔法に耐性があるらしく、ディッカの魔法が命中する前に四散する! あっちはあっちでヤバそうだっ。


「腹、括るかっ!」


俺は相手の回転に合わせ、狼狩りの薙ぎ払いで回転方向にハルベルトの鎚で棍棒を打って棍棒を片方すっぽ抜けさせた。飛ばされた棍棒は耐久の魔法の掛けられた壁に軽々とめり込んだ。

それでも回転が乱れ、攻撃回数も半減した! 俺は踏み込み、


「セェアッ!!」


大鷲返しでもう片方の棍棒を持つ腕の手首を斬り上げて切断し、真上に跳んで回転斬り下ろし技の大盾割りで雄牛の頭部を叩き割った。


「ガッ・・ガ・・・」


雄牛は活動を停止させた。


「実体誘導パンチっ!」


右の拳も砕けたが脇腹から胴体を撃ち抜き、姫の上半身と下半身を分断したディッカ。


「テレポート!」


浮き上がった上半身後ろに瞬間移動っ。


「振動カッターっっ!!!」


魔法の詠唱だけでなく技の名前も叫ぶディッカ! 左肘からだした振動する刃で姫の上半身を真っ二つにして機能停止させるディッカ。肘の刃も砕けたが、完勝だ!


「ふっふっふっ、魔法と接近戦を完璧に組み合わせ勝利したことにより、ダイスケのあたしへの敬愛度(けいあいど)を完全に回復せしめた!」


着地した側から言い出すディッカ。


「ディッカ、また全部思ってること口から出てるぞ? 敬愛度とか知らんからなっ」


「ええ~っ? 敬愛してよっ」


どんな要求だっ。


「いいからっ! この人形、直せるのか?」


ディッカは人形からスルっと上半身を出して壊れた姫と雄牛を見比べた。


「自立したドールゴーレムとして復活させるのは大変だけど、あくまであたしの容れ物だからねっ! ふっふっふっ!!」


人形から上半身を出しているから普通に悪い顔をしている霊体のディッカだった。



それから3日、ディッカはひたすらタルゴイエが残した資料を読み込みながら姫と雄牛、ついでにこれまで使っていた小型人形の補修と改修に専念していた。

俺は特にすることがなく、仕方が無いのでハルベルト以外にも短剣、小剣、長剣、戦斧、手槍、弓、盾、格闘、騎馬兵法の稽古をしたり、自分の食料や売れそうな素材を森で集めたり、人形に入ったディッカ用の飲み物の材料になりそうな新鮮な果物やハーブを集めたりして過ごした。


「・・・」


鉈で軽く小突く程度で簡単に薪を割りながら、俺はこの3日、自分がただ生活するだけでは力が余ってしょうがない、とつくづく思い知ったりもしていた。

成り行きで、かなりの変わり者とはいえ、旅立って早々にディッカと契約したのは悪くない巡り合わせだったかもな、と。特に敬愛はしてないが!

その3日目の夜、


「できたーっ!!」


ディッカは姫と雄牛の補修と、小型人形の改修を終えた。


「ほぉ」


ここも修理された地下室には大げさなドレスではなく魔法使い風のスカンツタイプのローブを着た姫と、鎧が簡略化されて棍棒の代わりに両手に護拳(ごけん)を装備した雄牛、そして小振りな薙刀を持った小型人形が置かれていた。


「名前は姫号、雄牛号、(まめ)号にしたよっ?」


「小さいの豆号になったんだ」


安易な命名。


「機能や使い分けも明確にした! 普段使いは姫号ねっ。豆号は狭いし、一応琥珀姫だから!」


「その呼び方有りなんだ」


「有りだよぉ? それにしてもタルゴイエの資料参考になったぁ~。特にドールゴーレムの製造や使役に拘ったことなかったけど、感銘を受けたわぁ。この分野に関してはあたしの師匠ねっ!」


「・・よかったな」


「全然興味無さそうじゃんっ?!」


「いやいやいやっ」


バレたかっ。


「ま、いいわ! ・・じゃ、早速・・とうっ!!」


ディッカは姫号の身体に入った。


「っ!」


人形の瞳に光が灯り、動き出した。


「ふぉ~っ! 身体がのびのびしてるっ!! 体型も実際のあたしに合わせたんだよっ? あたし、157センチだから引き続き騾馬ちゃんにも乗れるからねっ!」


「重くなるんじゃないか?」


「姫号の重さは人間と変わらないよっ! あたしの騾馬ちゃんはパワーあるもんっ!!」


ムキになる姫号のディッカ。確かに挙動が霊体のディッカに重なるところはあった。


「わかったわかった。君は重くないし、騾馬は強い。・・ディッカ、ここにはもう十分滞在した。そろそろオイソンに行こう。リラ程じゃないが発達してる。ユニコーンの角くらい買えるんじゃないか?」


「そ、ね。ただ人形でも、もう小さくないんだから、これからはもっと丁寧にあたしをエスコートしてちょうだいね? ふふんっ」


「はぁ・・」


「めんどくさそうにタメ息つかないっ!」


ガワが変わってもディッカはディッカだった。俺達はタルゴイエの家を後にして、オイソンへと出発した。

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