強襲っ! 後編
シュカーというらしい魔女はもう2体中型のカッパーゴーレムを呼び出したっ。
配下のアイマスクの綿のような物を纏う魔女、カマキリのような姿になる魔力、釘? を纏う魔女だった。それぞれその特性の眷属をワラワラ召喚しだす!
「話しもへったくれもないっ」
何はともあれハルベルトを取り出して組み上げる。防具は付けてねーや、ヤッベっ。
「あたし、復権派を抜けただけなんだけどなぁ」
不満気なディッカだったが、こちらも上空のメイニーとアッチとソッチが合流してきた。メイニーは喉を痛めたらしくポーションを飲みながらだ。
「カチコミだなっ?」
「やってやるぞっ?」
「けほっけほっ」
ポーションに噎せるメイニー。
「あたしと豆号でシュカーとゴーレムを引き受けるからっ、残り2体はささやきとチビ2人で! ダイスケは子分達と他の人達に指示よろしくっ。プロテクト! レジスト!」
ディッカはピクシー2人と俺に魔力耐性魔法と物理耐性魔法を掛けながらいった。同じ魔女のささやきには基本厳しいよな。
「・・かりました」
「わかったぞっ?」
「チビ2人って言うなよっ」
「了解っ!」
俺達は位置取りを始め、
「来いっ! ディッカっ!! もうお前の時代じゃないとわからせてやるよっ!」
シュカーもゴーレム達をけし掛けてくるっ。ディッカの時代とかあったんだ??
「冒険者組はパーティーごとにアイマスクの魔女達を頼む! 衛兵達は行商と馬を守ってくれっ!」
俺は居合わせた旅人達に呼び掛けた。
「わかった!」
「なんだよこの魔女達っ?!」
「任せてにゃんっ!」
「馬もかっ?!」
どうにか従ってくれるようだ。
「さてと!」
俺だけフリーだ。上手く立ち回ると期待してそうしてくれたに違いない。どうする?
「・・・」
シュカーとゴーレムと交戦を始めた姫号のディッカと豆号はややディッカが押されているくらい。だが、ディッカには雄牛号と例のパンチ技がある。
メイニーとゴーレムは普通にメイニーが優勢。ピクシー2人は素早さと小ささでゴーレムの攻撃を完封しているが、火力が無いから倒せはしない感じだ。
ディッカ達は一先ず大丈夫だな。
衛兵も未熟な若手、といった感じではあるが3人で行商2人と馬達くらいは守れるだろう。
「よしっ」
俺は子分魔女達を減らしに掛かることにした。
綿、カマキリ、釘・・ワーキャットの人のパーティーは釘魔女と戦っている。無意識に釘魔女の方に足が向きそうになるが、
「俺の武器は大振りのハルベルト! 大きさがあって形のハッキリした硬質な相手と好相性っ!!」
口に出して自分に言い聞かせ、カマキリ魔女に進路修正っ! ちなみにカマキリ魔女と交戦を始めたのはハゲのオッサンと筋骨隆々のオッサンと髭モジャモジャのオッサンで構成された、オッサンだらけパーティーだ! コンニャローっ!!
「助太刀するっ!」
「助かるぜっ」
オッサンパーティーは戦士職と僧侶職と射手職。いいバランス!
「眷属は任せた!」
カマキリ魔女は驢馬並みの大きさのカマキリ系モンスター、ネックハンターの強化体を20体以上使役していた。相手してられないっ!
俺は走りながら兜だけでもポーチから取り出して被りながら、爆弾を3個投げ付けて道を開けさせ、武器を旋回させる技、鋼車でハルベルトをブン回し、眷属達の鎌の腕を何本か跳ね飛ばして駆け抜けた。
「ふぁいああろー」
身体の形が変わり、既に飛行箒から降りていたカマキリ魔女は異様や声で8発の炎の矢を放ってきた。
避け、スライディングもして全回避してさらに詰めた。近くに着弾した炎が散って被ったりもしたが、レジストの効果でまぁなんとかなる!
距離が詰まるとカマキリ魔女は4本の鎌の腕を高速で振るって斬り掛かってきた。
技術はヘタクソだが速い。関節が攻撃する時伸び、腕が4本あり、五感も発達しているらしく反応はかなりいい。捌いて隙を伺うのに手間取った。
「復権派だかなんだか知らないが、抜けるって言ってんだから見逃してやってくれねーかな? それなりにペナルティも受けたろ?」
「ギリギリギリギリッッッ!!!!」
捌きながら話し掛けたが、カマキリ化した口で金切り音を鳴らしてきただけだった。こっわっ。戦闘中じゃなけりゃ仰け反ってるところだぜ!
「話し合えねーなっ!」
「ぽいずん」
毒気魔法を至近距離で放ってきたが、前転で回避しつつ思い切ってさらに近く詰める!
無理したから背中と兜、特に兜には強めに鎌が掠ったが、防御魔法とミスリル鋼の兜で受け切れた。
俺は起き上がり様に、
「スパークっ!」
全力で散々練習したスパークの電撃をカマキリ魔女の脇腹に放った。魔力の障壁を張っているがそれをガラスのように破って感電させる!
「ぎゃっ?!」
初めて人間っぽい悲鳴を上げるカマキリ魔女! 俺は手を緩めないっ。
飛び退きながら臭い玉を鼻先に投げて炸裂させ、悶絶させ、さらに爆弾を投げ付けて炸裂、着火、炎上っ! の卑怯コンボを決めてやった。
「ぎゃああーーーーっっ??!!!」
カマキリ魔女はこんがり焼けて昏倒し、カマキリ化も解け、アイマスクも砕けてブッ倒れた。素顔は魔女の格好をした田舎娘、ってとこだな。完勝っ!
カマキリ魔女が倒れたことでネックハンターの強化が解け、動きも散漫になった。
「眷属を片したら残りのアイマスクの魔女2人に対応してくれ! 相性良さそうな方からなっ」
「任せろっ!」
こっちはもう大丈夫だっ。衛兵3人もいけそうだな。行商達もクロスボウや投げ付けると燃えるファイアポーションで向かってきた眷属達に応戦し、馬達も逃げ回ってくれてる。
俺は魔法石の欠片を1つ使って魔力を回復しつつ走った。
メイニーは自分が担当したゴーレムを早々に倒し、ピクシー2人に加勢していた。ディッカは豆号を何がどうした? っていうくらい木っ端微塵に破壊されていたが、
「ギガ実体誘導パンチっ!」
左腕を失っていた雄牛号の右手から繰り出したパンチ技でゴーレムの胸にあった核を撃ち抜いて撃破していた! が、
「ハイブリッツ」
飛行箒に乗ったシュカーの圧縮爆破魔法で城壁の残骸まで吹っ飛ばされ、半壊して姫号のディッカと繋がった魔力の糸が全て千切れ、雄牛号は沈黙させられた。姫号を覆う荊はだいぶボロボロにされてる。
ハルベルトを捨て、銀の盾とミスリル鋼の戦斧をポーチから抜いて構えながら、ディッカの方に走った。
「ディッカ! 一瞬引き受けるっ。回復しろっ!」
ミルッカから話しが伝わってる前提なら、加速魔法で一気に詰める戦法はもう効かないだろう。
俺は投擲技、挽き肉で旋風をシュカーにぶん投げた!
この技は魔力の刃を伴ち、曲がり、俺が使うとめちゃ高速っ。
シュカーは迎撃か回避か迷ってる内に飛行箒の進行方向に戦斧の軌道を合わされ、掠めて2枚、魔力障壁を破られて飛行を乱された。
「あとでマシュマロ焼いてあげるっ!」
下がるディッカ。
「マシュマロうれしいな、っと!」
俺は銀の手槍を1本抜くっ。
「端役の人間は引っ込めっ! マナボムっ!!」
立て直したシュカーは飛行しながら小さな魔力の爆撃を猛烈に連発してきたっ。
俺は避けつつ、避け切れない衝撃は魔力を込めた盾で受け流し、槍の投擲技を撃とうとしたが、シュカーの魔法の連打が激し過ぎて撃てないっ!
「魔力底無しかよっ」
俺が釘付けにされていると、
「・・ァイアボールっ!」
「来たぁーっ!」
「主人公登場っ!」
ゴーレムを倒し、飛行箒で駆け付けながらメイニーが火球を連打してシュカーを牽制し、俺への攻撃を止め、ピクシー2人も飛んできた。主人公かどうかは知らないけどな!
「ええいっ、人形や4位の魔女を何人か退けたからといってっ!」
シュカーは箒を放り捨て、魔力だけて浮き上がり周囲に流動する大量の銅の渦を発生させ、メイニーの火球を全て受けきった。
「3位の魔女を侮るなっ!!」
銅の渦はシュカーを包み、渦は巨大なカッパーゴーレムに変形した。
デカ過ぎるっ! 衛兵3人は行商2人と馬達を連れて崩れた祓い所の城壁の隙間から外へ逃げ出していた。いい判断!
「潰れろっ!!」
巨大な拳を振り下ろしてくるゴーレムのシュカー!
避けられはするが、殴った地面は炸裂して破片が散る。この間の庭石な魔女以上だ!
「くっ、魔女って本気になると大味なヤツ多いなっ!」
俺やメイニーはともかく、ピクシー2人は防御魔法込みで掠っただけで即死だっ。
ここで、
「とりゃああーーーっ!!!」
回復して前衛に戻ってきた姫号のディッカが全身から荊を出してゴーレムのシュカーを捉えた。
「ぬっ?!」
「バインドっ! ストロングっ! メイニーとおチビ達は溜めて! ダイスケはなんかしてっ!」
ゴーレムのシュカーに輪状の拘束魔法を重ねて放ちつつ、俺に剛力化魔法を掛けるディッカ。
「・・かりました」
「よぉしっ」
「やるぜぇっ」
「なんかして??」
俺への指示がざっくり過ぎるだぞっ?
「ええいっ、なんかするぜっ!」
魔力の溜めに入ったメイニー達を尻目に、俺はゴーレムのシュカーの側面に周り、剛力化のパワーを上乗せして、手槍で投擲技、獅子鷹落としを放って相手の巨大な右膝に大穴を空けてやった。
体勢が崩れ、ディッカの荊で地面に引き倒されるゴーレムのシュカー。俺は続けてポーチから手槍を取り出し、今度は内部のシュカーの気配目掛けて撃とうとしたが、
「いい加減にしろっ!」
魔力だけで拘束魔法の輪を全て砕くゴーレムのシュカー!
「ハイブリッツ!」
荊は解けないまま、爆破魔法を俺とディッカに射ってくるゴーレムのシュカーっ。狙いは甘いが火力がマナボムより断然高い!
俺は盾で庇いつつ必死で避けた。姫号は特に魔力耐性が高く、ディッカは耐えられていたが、荊を破壊されるので、破壊された側から荊を足してゴーレムのシュカーを縛り続けるっ。
「槍、ダメかっ! それなら」
とても撃てない。俺は追加で出した手槍を捨て、変わりにイエロージェムを2つ取り出した。イチかバチかだっ!
「サンダーボルトっ!!」
俺はイエロージェム2個を対価に、盾を破壊されながら、これまでで最大の電撃をゴーレム内部よシュカーの気配目掛けて放った! ムチャな発動にジェムを持っている右手が焦げるが知ったことかっ。
「ごぉおおっ??!!!」
障壁を3枚は破ってシュカー本体まで電撃が通る感触があったっ。相手の爆破魔法連打が止まった。
「隙あーりっ!」
ディッカは防ぎきれずボロボロになった姫号の身体で、倒れたゴーレムのシュカーの身体を起こし、シュカーの気配のある胸部を前面の高い位置に晒す形を取らせたっ。
「・・きます!」
「行っくぞぉっ?」
「やっちゃうぞぉっ?」
メイニー達は3人で連携して宙に大きな魔方陣を発生させていた。
3人は声を揃え、詠唱するっ。
「エルグレイシャっ!!!」
最上位の凍結魔法を発動させるメイニー達! 魔方陣から凄まじい凍結波が放たれ、無防備な巨大ゴーレムの身体は凍り付き、砕かれ、内部のシュカーも凍結しながら吹っ飛ばされて地面へと落ちていった。
「がっはぁああーーっっ??!!!」
落下したシュカーは凍えながら白眼を剥いて痙攣していた。
ディッカは姫号から霊体の姿で抜け出て、
「プラスヒール」
焦げた俺の右手に回復魔法を掛け、痙攣するシュカーの前までスーっと移動すると、マグネットタクトでシュカーを宙に吊り上げた。そして、マグネットタクトを持っていない方の右腕をおもむろににグルグル回しだす。
満身創痍ながら気が付くシュカー。
「シュカーよ、シュカーちゃんよぉっ?」
「ぐぅぅっ、・・勘違い、するな? 手下の戦力の差で負けただけだ。今のお前等、ただの、残りカスっ」
「ミルッカに言っときな、あたしをダシにするんじゃないよ? ってね」
「黙れっ! この死に損な」
「真・霊体デッドオアアライブ・パンチっ!!!!」
「ごぁっはぁっ?!」
ディッカは荊を纏わせた拳で、夜空の彼方にシュカーを殴り飛ばした!!!
「あっ? シュカーっ! 待ってっ」
「覚えてろっ?!!」
冒険者達に押されていた配下の魔女2人は、カマキリの魔女を背負い、慌てて飛行箒で吹っ飛ばされていったシュカーを追っていった。
「あー・・しんどっ」
魔法石の欠片を9個も次々と使いながらゲッソリするディッカ。
「なんとかなったな」
俺は回復した右手の具合を確認した。
「・・りましたね」
「よゆ~っ」
「俺達の超必殺! 決まったっ!」
冒険者達も一息つき、衛兵と行商と馬達も様子を伺いながらほぼ破壊された祓い所に戻ってきていた。全員無事だな。うん。
問題はだ・・他の連中への迷惑料は払うとして、ここの祓い所の修復費用はどうしたもんかな? 魔法的な建造物だから材料の補填があればディッカ達のリビルドの魔法でイケるか? でもって事情の開示をどこまでするか・・
ワケあって凶悪な魔女達に絡まれてます、くらいでもいいか? ちょっとディッカの存在が怪し過ぎるところではあるが。なんにしても、
「眠っ」
そういや俺、魔法の稽古が終わった直後だった。もう頭が回らなくなってきたぜ。谷間を見たのも幻だった気がしてきた・・
数時間後、飛行島の館の客間で、呪いの首輪を嵌められ、上半身は復活していたが手足の替わりにハサミと苔むした石を生やした魔女2人を這いつくばらせ足置きにしたミルッカは、椅子に座って配下のフードの魔女3人と共に来訪者を迎えていた。
「復権派とかいったな。目立ち過ぎている」
対峙する外套の魔女が言った。覆面をした配下の4人の魔女と、呪いの鎖で縛られた凍傷まみれのシュカーと、アイマスクを失いやはり傷だらけで呪いの鎖で縛られた配下の魔女3人を引き連れている。
「外套の魔女、様々な交錯がある物だ。それはそれとして、人質交換には応じようじゃないか?」
「ジョキーっ! お助けぇーっ!」
「農園で靴の裏っ、ペロペロしますぅっ!」
叫んだハサミと庭石の魔女の背中を強く踏んで黙らせるミルッカ。
「そんな落第者2人と3位の魔女の配下3人では釣り合わないだろう?」
「では、こうしよう。1年、そちらの閥の懲罰農園で働き・・さらにその3人の成長の事実と高めた魔力をこの2人と釣り合うだけお前達にやろう」
「何?!」
「そんなっ」
「酷いっ」
「卑怯・・むぐぅっ??」
外套の魔女は拡げ操った外套でシュカー達の口を覆って黙らせた。
「いいだろう。これはモードォア閥とエルバエン閥、復権派の正式な取り引きだ。魔女の契約書にサインできるな?」
虚空から魔女文字で書かれた契約書を取り出してミルッカに突き付ける外套の魔女。
「勿論だとも」
ミルッカも虚空から鋭いペン先の羽根ペンを取り出し、自分の腕に刺し、シュカー達が声を出せないまま足掻く中、その血で契約書にサインをした。
「契約は成った。以後、反古にはならない」
契約書を虚空に消し、外套の魔女は代わって外套から宝珠を取り出し、シュカー達から光る何かを吸い取りだす。
「っ!!!」
「っっ」
「っっっ!」
「っ!!」
シュカー達はあっという間に魔力の殆んどを失い、幼い少女の姿に変えられ、大き過ぎる魔女の服に埋もれるようになった。
合わせて大きくなり過ぎた呪いの鎖の枷はすぐに引き締められた。
口を覆っていた外套を外す外套の魔女。
「あ、ああ・・なんということをっ」
「酷いっ」
「小っちゃくなってるっ」
「そんなっ、うわーんっ!!」
ミルッカは嗤った。
「シュカー、実は私も、身の程も知らずに私に匹敵しようとしてくるヤツを打ちのめしてやると胸がスッとするんだよ? ふふふふっ」
「殺してやるっ!」
少女のシュカーは殺気を漲らせたが、手下の少女の魔女達共々、外套の魔女が拡げ外套の中に取り込まれ姿を消してしまった。
「お前達も行くぞ?」
「ジョキぃっ、はひぃーっ!」
「手足を治して下さいっ、外套の魔女様ぁっ! 靴の裏、ペロペロしますからぁっ」
ハサミの魔女と庭石の魔女は這いつくばったまま、ミルッカの足をはね除け、外套の魔女に駆け寄っていった。
「・・はしゃぎ過ぎないことだ」
外套の魔女はそう言って、靴の裏を舐めようとした庭石の魔女を蹴り飛ばし、
「ありがとうございます!」
と礼を述べられながら、配下と這いつくばる2人を連れて客間を出ていった。
「上手くいったねっ!」
「いい気味だっ!」
「これでシュカーと近しいヤツらは上がり目無しだっ!」
盛り上がるフードの手下魔女達。
「だが、これでバカ姉は明るみになった。復活に手間取ると私に敵対する連中に巻き返される切っ掛けになりかねない、怪しまない程度に誘導してやれ」
「・・大丈夫かな? ディッカが復活しちゃったら」
「問題無い、アレは今さら閥には戻らない。動物は、野に帰る物だ」
ミルッカは笑みを浮かべ、足置きに足を置こうとしたがもう無かった為に空振りしてしまい、今後の手筈やシュカー達の悪口を話し込む手下達には気付かれなかったが、少しバツの悪い顔をしていた。




