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傭兵と琥珀姫  作者: 大石次郎


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12/14

強襲っ! 前編

オスライテ平原北部のムウラク砦が陥落し追討戦でも連敗したゴブリン8部族は、2部族のゴブリンキングとゴブリンクィーンが討たれ交戦を諦め、遥か東の不毛の荒れ野へと敗走していった。

残る6部族はさらに北の痩せた森林地帯でゲリラ戦の構えを取っていた。

ここまで優先に見えたバハラ国連合軍は無秩序に森林地帯全域に拡大した戦線の維持と戦力の配分調整に手間取り、事態は消耗戦の様相を呈していた・・



その悲惨な地上の状況を上空の雲で隠された小型の飛行島(ひこうじま)に建つ奇妙な館の中で、監視する者達がいた。

エルバエン閥の残党、復権派の魔女ミルッカとその手勢らしいフードを深く被った魔女3名だった。

いずれも物見の玉で地上の様子を見ていた。魔女達のいる部屋には複雑多重魔法式に囲まれた巨大な発光する鉱石が台座に据えられていた。


「もう店仕舞いかと思ったが、ゴブリン達、粘ってくれるな」


「くくっ、死者簒奪(ししゃさんだつ)の水晶に力が溜まってしょうがない」


「エルバエンの塔の復活に我ら程貢献してグループはないぞ?」


上機嫌のフードの魔女達。光る鉱石は地上のキリも無いような死者達の魂を吸い上げて魔力に変換していた。


「・・北のオーク達にはゴブリンどもへ物資を売り付ける以上の行いは改めて固く禁じておけ。ヤツらまで参戦すると原因究明をする者達の活動に拍車が掛かる。この件はここまでだ。ゴブリンどもはこの枯れた森で壊滅する。学者や吟遊詩人どもが好き勝手に説を述べ、歌にする。それが結末だよ」


「わかってるよミルッカ」


「なかったこと、だよね?」


「私達に気付いたヤツはいなくなる」


「・・それで、いい」


魔女達がそのような企みを話していると、


「いい身分だな!」


長身の魔女がアイマスクをした手勢の魔女3人を引き連れて部屋へ入ってきた。

フードの魔女達がミルッカの前に出て素早く杖を構えた。


「シュカー、この浮遊島はこのミルッカが管理している」


シュカーと呼ばれた長身の魔女は鼻で嗤って収納魔法で虚空から取り出したハサミの魔女と庭石の魔女の生首をミルッカ達の前に投げ捨てた。

フードの魔女達は「ひぃっ」等と悲鳴を上げて怯む。


「モードォア閥の懲罰農園(ちょうばつのうえん)で見付け、逆らったので始末した。面白い記憶を待っていたぞ? 琥珀に封じたはずのディッカ・ルーンフォレストの霊体とオイソン付近で交戦していた。これはどういうことだ? ミルッカ・ルーンフォレスト」


「あれは元気の良いヤツだ。琥珀から出て暴れているんだろう」


「ハッ! よく言うっ。見逃したな! このシスコンがっ! これはお前のミスだっ。死者簒奪の水晶の手柄でいい気になっているようだが、次の魔女会でのお前の2位昇格っ! このシュカーのグループは反対するっ。既に賛同するグループも数多いっ! お前ばかりを昇格させんぞっ?!」


「嫉妬深いヤツだね。そんなに他人の足を引っ張ることが好きかい?」


「ああ好きだ! 私に匹敵するヤツが出世に失敗するっ。胸がスッとするっ! ・・ミルッカ、私はこれからクソ裏切り者のお前の死に損ないの姉を殺しにゆく。いいな? これは手柄だっ」


「好きにしろ」


「言ったなっ! せいぜい恨めっ。ハハハッ!!」


シュカーは手勢を引き連れ、高笑いをしながら去っていった。

ミルッカの手勢達は戦々恐々としていたが、


「・・リザレクション」


表情を変えずにミルッカは蘇生魔法を生首の2人に唱えた。


「ジョキィンっ???」


「ぶっはぁっ???」


首の傷口から各々多数のハサミや、苔むした石の塊等をいくらか露出させて意識を取り戻す生首の魔女2人。


「うわっ??」


「しぶとっ?!」


「気持ち悪っ!」


ドン引きするフードの手勢達。生首の2人は復活して混乱している様子だった。


「モードォア閥との交渉の足しにはなるだろう。感謝・・できるな?」


ハサミの魔女の首の頭を踏み、庭石の魔女の首を見下ろすミルッカ。


「ジョキィっ! 勿論ですっ」


「靴の裏っ、ペロペロさせて頂きますっ!」


「わかればいい」


生首2人に2人掛かりで片足の靴の裏を高速で舐められながら、ミルッカは物見の玉を操り、オイソンやその周囲の街道等を次々と映した。


「チッ、像のマーカーを切られたから居所が知れないな・・お前達、適当な使い魔を放ってバカ姉の現在地を探れ。動物みたいなヤツだ、どうせ行く先々で騒ぎを起こしている」


「わかったよ!」


「でもシュカーは目敏いよ? 先を越されるかも?」


「シュカーは3位の中でも腕利きだし・・」


まごつくフードの手勢達。


「この程度のことで終わるなら、それまでだ。私達のグループの手駒に必要無い」


ミルッカは冷然と言い放ち、


「ペロペロペロペロっ!」


「ペロペロペロペロペロっっ!!」


生首魔女2人に上げた片足の靴の裏を高速で舐めさせ続けるのであった。



俺達はピクシーの森からリラ方面への街道沿いで日暮れまでで馬でたどり着けた、やや規模のある祓い所に来ていた。

簡単な城壁と東屋がいくつか、井戸もあった。

俺達の他に行商が2人、配置換えらしい若い衛兵が3人、数名のパーティーを組んだ中級冒険者が3組と居合わせていた。

ここでは姫号のディッカはまだ修理が完全でない豆号の調整をしていた。

琥珀像の方は人目があるので出さず、霊木の琥珀1キロ! だけ後に錬成し易いようにいくつか素材と合わせ一次加工のみだった。

メイニーはこれも人目を気にして、普通に収納魔法で所持していた飛行箒(ひこうほうき)で祓い所の上空に上昇して、例やアバ閥の歌を歌って発生練習をしていた。

アッチとソッチは居合わせた他の旅人達に相手が戸惑うのもお構い無しに話し掛けまくって森の外の世界の社会勉強に専念。

で、俺はというと、


「スパークっ!」


電撃系魔法の基礎魔法、小規模な放電を操るスパークの魔法をいつかの耐電カカシ相手に行っていた。手解きはすでに魔女2人に散々してもらった。順番はあべこべどけどな!

これを覚えればイエロージェム無しでも4割くらいの力でサンダーボルトを撃てるらしいし、ジェムを使えばこの間のトロール戦みたいにデカい的に外しまくる、なんて間抜けもちょっとは避けられるだろう。


「スパーク! スパークっ! スパークっっ!!」


俺は魔石の欠片を十数個は使うくらい連発しまくり、へとへとになって座り込んだ。恩賞懐中時計を見ると、もう午後10時を過ぎていた。

まぁこんなもんだろ? ケムシーノくらいだったらスパークだけで100体は昏倒させられそうだぜ?

と、背後に近付く気配を感じた。このモフっとした歩き方、冒険者パーティーの1つにいた猫人(ワーキャット)族のハーフだかクォーターらしい冒険者の女だ。


「お疲れニャン」


後ろからピーチポーションの小瓶を差し出してくれた。


「あ、ども」


振り返って受け取ると、屈んでいた相手の緩めの襟口から胸の谷間がガッツリ見えてしまった。


「あっ」


「おっ! いやいやっ、違う違うっっ」


「5000ゼムは取るよぉ?」


ワーキャットの人は笑って俺の隣に座ってきた。


「勘弁してくれっ」


「ニャハハっ、飲んでいいよ」


「ああ、まぁ」


俺はピーチポーションを半分程飲んだ。桃の甘ったるい香り、冷えてる! 沁みる~っ。


「お兄さん、戦士職だよね? 基礎魔法の練習してるの?」


「いやまぁ成り行きで・・」


「へぇ、でも魔力強いよね? こんなにムキムキなのにっ、ニャハ」


腕の筋肉を尖った爪の指先でツンツンしてくふワーキャットの人!


「固っ、すご~~い。太いね!」


「いや、まあ、その、商売道具だから、へへへっ」


俺が易々とふにゃふにゃにされていると、


「テレポォオオーーートォッッッ!!!」


俺達の前に姫号のディッカが瞬間移動してきたっ。


「ニャっ?!」


「おぅっ?!」


姫号のディッカは殺戮機械のような挙動で素早く俺からピーチポーションを奪うと残り半分を流し飲み干してしまった。


「ふぅ~っ、ゲフっ」


ゲップする姫号のディッカ。アレだぞ? ほんと、アレだからな!


「御主人様、同胞ノ豆号ノ修理ガ済ミマシタ。御確認下サイマセ」


急に傀儡人形口調になるディッカ。


「ああ・・わかった。それじゃ」


「・・・」


ジト目で姫号のディッカを睨んでるワーキャットの人! 姫号のディッカは構わず俺の腕を取って引き摺るように作業場にしている東屋に連れていった。


「おいっ、ディッカ! 剣呑だろ? ポーションくれたんだぜ?」


ディッカは応えず、姫号の隙間から多数の荊を出して俺に絡み付けてきたっ。


「イテテテっ! ディッカっ。刺が痛いってっ」


「ダイスケ~、ダイスケ・フユキさんよぉっ、君ってヤツはよぉっ! 隙あらば脇が甘いよね?!」


「甘くないってっ、ポーションくれたし」


「ポーションポーションうるせぇわっ! 買えよっ。なんなの? オッパイが付いてたらなんでもいいの?」


「そんなオッパイに拘って生きてねーしっ!」


「生きてるでしょうがぁああーーーっっっ??!!!」


「ぐぅっ」


そこまでじゃないよっ! なんだよっ、俺、普通だよね?? そこに谷間があったら吸い込まれるもんなんだよっ!!!


「・・・っっ」


「・・・っっっ」


修理された豆号が静かに横たわる東屋で、俺と姫号のディッカは魔境(まきょう)で遭遇してしまった赤鱗竜(レッドドラゴン)三頭冥獣(ケルベロス)が対峙したように威嚇し合っていたが、突如っ、


爆裂っっ!!!!


祓い所の正面の門が周囲の城壁ごと爆破されっ、吹き飛ばされた!

騒然となる祓い所内っ。ディッカは俺の荊を解いた。


「なんだ?!」


「行くよっ、マリオネット!」


俺と、操作魔法で豆号を操った姫号のディッカは東屋から飛び出した。


「あらあらあら~~~、くっさい裏切り者の臭いがすると思ったら、惨めったらしくガラクタの中に入った死に損ないの魔女がいたねぇっ!」


中型の銅の傀儡人形(カッパーゴーレム)の肩に乗った長身の魔女が、飛行箒の上に立ったアイマスクをした魔女3名と共に祓い所の中に侵入しだす。

魔女達の敵意に反応して、入り口を破壊された不完全な祓い所の魔除けの陣が反応したが、アイマスクの魔女達がファイアボールの魔法を連発して、城壁に仕込まれた魔法式をあっという間に破壊して、無効化させた。

行商や経験の浅そうな衛兵3人組や銀毛種の騾馬以外の馬達等は相当慌てている。


「ディッカ、エルバエン閥か?」


「・・銅の摂理のシュカー。嫌なヤツだよっ」


ディッカは姫号に荊で纏わせて強化しながら、油断無く言った。

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