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傭兵と琥珀姫  作者: 大石次郎


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朝露の針 前編

復元させたフェザーフットの春営地からリラ方面で1番近い郷メリメッサは小柄なフェザーフット族の多い郷だった。

元々はオイソンとその先のデニーアの街の中間にあったある程度規模のある祓い所に過ぎなかったそうだが、遊牧生活に見切りを付けたこの辺りのフェザーフット族が祓い所を拡大して宿屋等を始め、やがてそれが1つの郷にまで発達したらしい。

春営地を復活させたことを報せるとメリメッサのフェザーフット族達は大喜びで、報酬も弾んでくれたが酒場で宴会も開いてくれた。

小さな郷だが、オイソンとデニーアに挟まれたメリメッサには旅人や冒険者が多く、誰が誰だかわからないがかなり盛りあがった。


「あら不思議っ! 人形なのにエールがグビグビ入るっ!!」


店員に迷惑がられながらテーブルの乗った姫号のディッカが木のジョッキでエールを一気飲みしてフェザーフット族や他の客達から「琥珀姫ちゃんっ!」「よっ、琥珀姫っ!!」「いい呑みっぷりだっ!」とやんやの喝采を受けていた。

悪目立ちは避けた方がいい気はするんだけどな・・。


「・・私は先に部屋に引き上げます。頭が痛くなってきました」


「おお、部屋の保冷箱(ほれいばこ)にミントポーション冷やしてあるから飲んだらいい」


「はい・・」


カウンターで囁いて、ふらふらと宿になっている酒場の2階に引き上げてゆくメイニー。瓶底眼鏡の向こうでゲッソリしていた。人混みもバカ騒ぎも苦手らしい。


「ちょいと兄さん」


眼帯をしたフェザーフット族の男が隣に座ってきた。メリメッサの冒険者ギルドで見掛けた男だな。


「なんだい? ギルドにいたな」


男はメリメッサのギルドのサポーターカードを出した。

俺はスゲェ確認し、酒場の店長と近くにいた、ほろ酔いメリメッサギルドの事務員にも確認したりして情報屋に苦笑された。


「いや、疑い過ぎだろ? 俺はサポーターだ。昔は盗賊で正規登録していたが、もういい年だからな。情報屋をやってる。霊木の琥珀を買い付けてんだろ? いい話があるぜ? これでどうだい?」


指を1本立ててくる眼帯の情報屋。


「10万ゼムか」


「100万だよ」


「高っ? 高過ぎるだろっ?!」


めちゃくちゃ吹っ掛けてきた情報屋と交渉し、俺はどうにか70万ちょっとで情報を買った。



というワケで翌日、魔除けの香を焚いた俺達は馬と騾馬でポクポクとメリメッサ近くの森を進んでいた。

林道はないが、特にモンスターが多い気配はなかった。


「この森、魔力はそこそこ強いのに、結構管理が行き届いてる感じだわ」


「そうか?」


「・・ピクシー・・は・・勢力・・まると・・強壮・・すよ」


「うん」


言わんとすることは大体わかった。この森にはピクシー族の里が2つのある。俺達はその内の1つグリーンビートルに向かっていた。

ピクシー族は里を組むまで増えると一気に組織力が向上するものらしい。

暫く進むと、生きた草木でできた門があった。門に扉は無く、門の先は霧深い森が見えるが、他の景色と繋がっていないように見える。


「グリーンビートルのピクシー! メリメッサから来たっ」


呼び掛けると、よくみると門のアーチに掛かっていた鳥小屋のような物から武装したピクシーが2人飛び出してきた。緑の髪と瞳。植物の加護を受けたピクシーだ。


「あーん? 何者だぁ?」


「冒険者か? カード見せろっ」


俺達はメリメッサで登録し直したサポーターカードを取り出してみせた。


「サーチっ!」


「サーチっ!」


2人掛かりで鑑定魔法をカードに掛けるピクシー兵。


「本物だな! 人形が意味不明だがっ」


「でもサポーターだぜ?」


「ん~、何しに来た?!」


「あたし達はメリメッサで情報を買ったんだ。貴方達の聖地がトロールと悪霊に荒らされてるんでしょ?」


「・・報酬は霊木の琥珀を下さい。たくさん蓄えていると聞きました」


メガホンで話すメイニー。


「仕事はできる方だぜ?」


ピクシー兵2人は顔を見合わせてから、腰に差していた杖を振るった。門の中の景色の霧が晴れて日が差し、草木が退いて林道が現れた。


「グリーンビートルに通してやる! 悪さするなよっ?」


「門が魔除けになる。馬はここに繋いでけっ! 木の葉を食べちゃうからなっ」


小さなピクシー兵はそう言い放ってきた。



グリーンビートルは低木の林の木々の枝に多数のミニチュアハウスが張り付いたピクシー達の里だった。


「ピクシ・・里とし・・大き・・ね」


「あれ? 羽根付いてないのもいるな」


小さなハンモックで寝たりしてた。


「ずっと羽根があると邪魔でしょ? ピクシー族は任意で羽根、消せるんだよ」


「へぇ~」


観光気分だったが、ピクシー族達からすると怪しい巨人3体だ。あまり歓迎されてる感じはなかった。


「ウロウロするな! 家を壊すなよっ」


「あんまりドシドシ歩くのもダメだぞっ?!」


里の中にいた兵士と門番の役目を交代してピクシー兵2人は案内役をしていた。


「へいへい」


軽く怒られながら、俺達は里長のツリーハウスの前まで案内された。


「ちょっと待ってろ」


「ちょっとだぞ?」


ピクシー兵はツリーハウスの中へと飛んでゆき、暫くしてツリーハウスのバルコニーに身形のいい女性のピクシー族がピクシー兵2人やお付きのピクシー達と共に現れた。

意外と若く見えるな、里長。


「私はグリーンビートルの里長、エルトンチャです。大きな人達よ、私達グリーンビートルのピクシー族の誕生の聖地、輝きのブナ林を悪霊とトロール達から解放してくれるのですか?」


「任せてっ! 巣くってるんだよね? ボッコボコにするからっ!」


パワーアップしたばかりでとにかく暴れたいらしいディッカ。凶暴。


「・・報酬に霊木の琥珀をたくさん下さい」


メガホンで要求する目的に忠実なメイニー。


「ちょっと事情も聞かせてくれないか? 悪霊とトロールとピクシーの聖地がごっちゃになってるってのもかなり特殊な気がする」


「・・・」


里長は少し俯いてから、顔を上げた。


「悪霊は、私の兄です。兄が聖地に呪いを掛け、トロール達を呼び寄せました。とても強い呪いで、これを解くには朝露の針という特別な魔法道具が必要です」


「込み入ってそうね」


姫号のディッカは腕を組んだ。


「全ては私達この森のピクシー族の、つまらない意地の張り合いから起こったことです・・」


里長は苦し気に語りだした。

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