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第七話 因縁の戦い

 いつものように『血操』によって内部にいるゾンビ達を処理していくナナコ。だが、今回は今までと違い、抵抗してくる者がいた。


「抗ってくる愚か者がいるわね。おそらくそれがあいつらよ」


 ナナコの予想は当たりだった。ナナコの『血操』に抵抗という事はそれだけの脅威でもある。四人は気持ちを引き締めながら歩いていた。


 すっかり廃墟のようになっている屋内の一部に地下へと繋がる部屋があるようで、そこまで向かったが、そこには社長室のような豪華な部屋で、その先は行き止まりになっていた。


「行き止まり……?」


 訝し気に周囲を『紅鉈クレナイノナタ』で壊し始めるナナコ。物騒な女である。


「落ち着こう。この先がどこかにある筈なんだ」


 四人がそれぞれに散らばって周囲を探索していく。


 暫くすると、


「みんなっ! なんかここの下から少しだけど風が吹いてくるよ」


 未羽のところへ集まると、確かに風の流れがあり、下に道が続いているようだった。


「どこかにここが開く仕掛けがあるのかなっ?」


 周りをキョロキョロしながらちょっとワクワクしている未羽を見て頬が緩む守。年齢相応の姿が見えて嬉しく感じていたのだ。だがこの状況をいともたやすく打ち砕く存在がいる。


 そう、ナナコだ。


「仕掛けなんて関係ないわ」


 両手に持つのは『紅鉈』だ。その姿を見て全てを察した未羽。悲し気な表情になるが、ナナコにはその姿は見えない。目の前にある障害を叩き潰す事しか考えていないのだから。


 一閃。『身体強化』をしている状態の未羽ですら全てを視る事が困難な程に鋭い斬撃は、床を豆腐のように切り刻んでいく。


「ママ、凄いなの!!」


 ナナコの斬撃を見て興奮している瑠璃。こちらもどこかズレているが、ナナコが気をよくしているので、誰もそこにツッコむ事はない。


「ありがとう、瑠璃♪」


 ナナコが瑠璃の頭を撫でると気持ちよさそうに目を閉じている。ひとしきり撫でて満足したナナコは自らが壊した先に注目した。


 そこにはやはり下り階段があった。そこから流れてくる冷えた空気に背筋が冷えてくるを感じた守。


(俺が恐れてるのか? 怖がっているというのか?)


 この身体になってから恐れるモノなど殆どなくなった筈なのに(ナナコを除く)、今回の敵に本能的に危険を感じているようだ。それは他の三人も同じなようで、先程の和やかな雰囲気が嘘のように空気が張り詰めていった。


「じゃあ行こうか」


 意を決して守が一歩を踏み出す。それに続いて、他の三人も歩き出したが、その一歩一歩が非情に重く、目的地に近づけば近づくだけ全身にそのプレッシャーが襲い掛かってくる。


 それでも四人は一歩も引かなかった。引く訳にはいかなかった。全ての元凶であり、因縁の続いている相手から逃げる訳にはいかない。ショッピングモールから続く因果をここで断つのだ。


 そして辿り着いた先には、二人が待っていた。


 今まで訪れた先と同じような何もない広い部屋。まるでこれから起きる事を観察する為にあるようなそんな部屋の中央で、待ち合わせしていた友人のように気軽な様子を見せている眼鏡男とけんじぃ。


 だが、その雰囲気に反して発している威圧は今までの敵とは一味も二味も違った。


「お待ちしておりましたよ」


 前と変わらず、飄々とした雰囲気の眼鏡男。一歩、眼鏡男が守達に踏み出そうとしたその時――――。


「ふぇっふぇっふぇっ」


 危険を察知した四人は一気は全力状態に入る。


 守は瞳が真紅に染まり、全身が紫色に変化する。血管は仄かに赤く輝き、脈動は蠢き、『全身硬化』を張り巡らせた。


 未羽も瞳を真紅に染め、銀色に変化したポニーテールを靡かせながら『身体強化』を木刀にも馴染ませ、漆黒に染めていった。


 ナナコは『血操』によって身体から血液を発散させる。そこから『紅鉈』を無数に張り巡らせた。


 瑠璃は漆黒に染まった翼を瞬時に開き、空中に飛び立つ。


 どれもがだが、常人ではとらえきれない程に早い動きだったが、けんじぃの動きはそれを容易く上回る。


 ナナコの目の前にいつの間にか立っていたけんじぃは『紅鉈』を片手で握りつぶし、もう片方の腕でそのままナナコに殴りかかろうとする。それに気づいた未羽が後ろから上段蹴りを放つも初めから予想していたかのように頭を下げただけで避けられてしまった。


 その一瞬の隙にナナコは後ろに下がり、守がそれに代わり、前へと走り出した。そのまま渾身の力を持って正拳突きを放つも、いつの間にかけんじぃの足元からは無数の黒い鎖が姿を現し、守の拳を掴んでいた。


「ほぉ、中々の連携じゃ」


 ナナコの『紅鉈』を遥かに上回る速度で増えていく鎖は、まるで大蛇のように自在に動き回る。


「血を操るとは面白い発想じゃな。お主らのおかげでまた一歩前進させてもらえたわい」


 けんじぃの血液から生まれた鎖はそのまま守を掴んだまま、ぶんぶんと振り回されていく。それを断とうと、瑠璃が上空からかまいたちを発生させ、その隙間を未羽は走りながらけんじぃに黒刀を振り下ろした。


「お母さんの仇!!」


 全方位からの攻撃に、流石のけんじぃも防御の体勢に入り、繋がれていた鎖が離れた。振り回されていたままの勢いで守はそのまま壁に飛ばされたが、瞬時に壁を蹴って反転、そのままの勢いでけんじぃに迫った。


 前後から守と未羽の挟撃、上からは瑠璃のかまいたち。逃げ場はない、そう思った三人だったが、けんじぃの周囲を蠢いている黒い鎖が突如けんじぃの周囲を囲み、球状となる事で三人の攻撃をはじき返してしまった。


 一旦、三人とも距離を取る。


 ゆっくりと鎖が解け、無傷で姿を現したけんじぃ。その顔には余裕ともとれる笑みに包まれていた。

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