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第二話 生存者

 その男がいたのはとある店舗の二階だった。鍵を閉め、扉の前には出来る限りの棚を置き、ゾンビが入れないようにしていた。食糧は二階の一部が倉庫になっていた為、多少の備蓄を用意出来ていた。


 だが、男は今の状況に絶望していた。食糧は今のところ一か月以上はもつだろう。だが、その後どうすればいいのか? それが全くわからなかった。外を見るとゾンビが道の真ん中を闊歩し、生き残っている人間は一人も残ってやしない。


 孤独と絶望が男を襲っていたが、自殺する勇気も男にはなかった。


 そんなある日、男はいつものように窓から外をぼーっと眺めていた。そこから見える風景はいつものようにゾンビが我がもの顔で歩き回っている姿だった。


 隠れ始めた当時はまだ人々の悲鳴やどこかから聴こえてくる爆発音に驚かされていたが、今ではそれすら懐かしく感じてくる。


 涙を浮かべていたそんな男だったが、ふと曲がり角から変わったゾンビ達が歩いてくるのを見つけた。


「ん? ありゃ何だ?」


 男一人に女三人。男は青いツナギの作業着を着て、その隣の妙齢な女性がピンクのツナギを着ている。その作業着を着ていた女性の隣にはポニーテールを左右に揺らした中学生位の女の子と、その三人の前を腰まで伸びた髪が風に靡いて遠くからでもキラキラ輝いている小学生位の女の子が歩いているのがわかった。


 一見、仲の良い家族にしか見えないが、状況がおかしかった。今までのような日常であれば微笑ましいそんな様子も、ゾンビに囲まれたこんな世界ではあきらかに異常だった。


 最初男は、この四人を生存者だと勘違いしたが、よく見たら、まず顔色が悪い。ゾンビ達は動いている物を襲う傾向があるらしく本来であればあんな街道のど真ん中を歩いていたら数秒で襲い掛かられているだろう。じっと観察していてもこの四人がゾンビ達が襲い掛かる様子もなく、スルーしていた為、ちょっと不可解な部分があってもゾンビだと判断していた。


 そしてこの男は、他のゾンビ達と違うこの四人から目が離せなくなっていた。


 他のゾンビに見つからないように物音を立てず、じっと隠れるように見ていた男だったが、ふとどこかから視線を感じる。ふと後ろを振り向くがそこは何もない。


 首を傾げ、もう一度四人の方を見た時、男は思わず悲鳴を上げてしまう。


 ツナギを着ていた男があきらかにこちらを見ていたからだ。


「ぐ、偶然だ。そ、そ、そんな気付く訳ない。あれはゾンビだ。ゾンビにそんなわかるはずがない!」


 自分にそう言い聞かせるように再び窓から四人の方を見てみた。すると四人の姿はそこになかった。


「あれ? どこ行ったんだ?」


 窓に張り付くように周囲を探す男。すると一階から轟音が響きわたった。


「うわっ!! な、な、な何だ!?」


 地面へと座り込んで頭を抱える男。暫くする揺れがひどくなり、一階が崩れていく。


「うわあああああああああ!!」


 男は床と一緒に下へと落とされていく。


 ろくに受け身も取れず落ちてしまった男は動く事が出来なくなっていた。意識が朦朧とする男の目の前に先程のゾンビがやってきた。


「ナナコさん、やりすぎだよ……」


 そのゾンビは呆れた様子で女のゾンビに話しかけている。男はその様子に何か言おうとしたがそこで意識が無くなってしまった。






「あれ、この人気絶しちゃったよ。やっぱナナコさんやりすぎだって」


「知らないわ。瑠璃ちゃんがぬいぐるみを欲しがったのに道の邪魔をしたそこのゾンビが悪いのよ」


 指を指した先には細切れになったゾンビ達がいた。そしてナナコの右手には『紅鉈』がある。犯人はナナコだ。


「ママかっこいいなの!!」


 その姿に瑠璃が大きな拍手を贈っていた。満更でもない様子のナナコに溜め息をつく守。


「ねぇ、このお兄さんどうするのっ?」


 未羽が男をつんつんしているので、それを止め、守は考える。流石の守も自分達が原因で人が死ぬのは見過ごせなかった。


「適当な近所の空き家に置いて行けばいっか。あとは……ナナコさん、後始末を頼むよ」


「はい、あ・な・た♡ 『血操』」


 一気に拡がるナナコの血に逃れる術はない。周囲のゾンビを含め、ナナコが全てを飲み込んでしまうのであった。







「んっ……? お、俺は何を」


 男は目が覚めると周囲を見回す。そこは知らない場所だった。寝ぼけながらも最後に自分が何をしていたか思い出そうとする。


 寝ぼけたまま男はとりあえず下へ降りた。


 そして男は下の光景を見て再び意識を失う。そこにはゾンビ達の死体が山のように積み上げられていたからだ。


 ナナコが全てを吸い上げてしまった為、幸いにも男が次に目を覚ますまでゾンビがやってくる事はなかった。


 だが、再び目が覚めた時に男の悲鳴が聴こえてきたのは言うまでもない。

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