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第一話 再会

「ここはどこなんだ……?」


 遥か上空を暫く飛んでいた二人だったが、瑠璃るりが目的地に着いたのか、それとも疲れたのかわからないが、どこかの丘に降りた事で漸く地面に降りる事が出来た。


(これほど地面が恋しいと思った事はないな……)


 強くなったと自負していた守だったが、流石に上空から万が一にも落ちたらと思うと気が気じゃなかった。飛んでいる最中は恥ずかしがりながらも瑠璃にくっついていた。


 そんな瑠璃は今、守の方を向いておらず、どこか遠くを見ていた。


(聞きたい事はたくさんある。あのケースの事もそうだし、今生えている翼の事、ゾンビを元に戻した事……。だけど――――)


「るぅ」


 守に呼ばれた瑠璃は守の方へゆっくり振り向いた。その表情は少し寂し気で、なぜそんな表情になってしまっているのか、守にはわからなかった。


「まぁくん」


 二人の沈黙の時間は続く。守も瑠璃も口に出そうと何度も口を開くが言葉が出ず、その度に口を閉じてしまう。


(俺から話すべきだ)


「るぅ、まずは生きててよかった。そして、俺はゾンビになってしまっている。それはわかってるよな?」


 ちなみにるぅからは死の匂いはしていない。生きている匂いとよくわからない匂いが混ざっていた。守が初めて嗅ぐ匂いだった。


「まぁくんも生きててよかったよ。わかってる。この前それで助けてもらっちゃったしね。あっ、この前はありがとう。突然の事でビックリしちゃった……。ごめんなさい」


 突然頭を下げて謝る瑠璃に守が慌てて肩に手を置き、頭を上げさせる。


「頭を下げないでくれ。俺が怖がらせるようにわざとああやったんだ。俺はもうゾンビでるぅは人間だ。あのまま一緒にいたらるぅに迷惑をかけると思ってな」


「そんな事――――」


「いや、るぅなら俺がゾンビだろうと、話さえしていれば一緒にいようとしただろ?」


「うっ」


 長年付き合いのある二人なので簡単に隠し事も出来なかった。そもそも二人ともそれほど表情を隠せるタイプではない。今も瑠璃の瞳は泳いでおり、わかりやすく鳴らない口笛を吹いていた。


「ぷっ」


「むぅ。笑わないでよ」


 頬っぺたを膨らませて拗ねていると守が人差し指で空気を抜く。間抜けな音を奏でて元に戻った瑠璃は、昔の優しい表情に戻っていた。


 昔を懐かしむ二人だったが、今の状況がそのままでいる事を許してくれない。


「なぁ、何でるぅ達はショッピングモールに向かったんだ?」


 真剣な表情になった守につられて瑠璃も真剣な表情に切り替わる。


「バスで逃げた後、みんなで話し合ってショッピングモールへ行こうってなったの。人が籠城してる可能性があるのと、物資は必ず必要になるから」


(確かにショッピングモールに向かうのは理にはかなっていると俺も思う。だけど――――)


「ちなみに誰が提案したんだ?」


「忘れたわ。最後は多数決で決めたもの」


 一瞬無表情になった瑠璃の顔に守は怯みそうになる。瑠璃の表情はすぐに元の真剣な表情に戻ったが、どこか作られた仮面にしか見えず、守は拳を握るしかなかった。ここで引く訳にもいかないからだ。


「そういう事だったのか。俺はてっきり()()に向かうと思ってたんだがな」


(瑠璃の父親は県議会議員だ。最初の自宅への籠城ならともかく、普通に考えたら県庁に向かうだろ。ショッピングモールより近いしな。備蓄も災害用の物資が大量に保管されてるって聞いた事がある)


 なるべく平静を装っている守の言葉に瑠璃の眉がピクリと反応した。守は当然それを見逃す筈がなく、溜め息を吐きそうになるのをぐっと堪えた。


「勿論、県庁も候補にあげてたんだけどね? あれよ、既にたくさんの避難民がいて、迷惑は掛けられないってパパが……」


(バレバレなんだよ、るぅ……)


 瑠璃が嘘を付いている事に気付いてる守は、ただただ、悲しい想いに耐えるだけだった。


「一番大事な質問だ……。なぁ、清華家は何を知ってるんだ??」


 二人の髪が乱れる程に強く吹く風が二人を包み込んだ。

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