ポースカットミッチな夜
少年は雑誌をパラパラとめくっていた。文字も内容も特にわからない。でも、この言葉だけは目に留まった。
ポースカットミッチな夜
その響きは何かロマンティックな響きに思えた。まだ、ロマンテックがどういうものかあまりよくわからないが、なんとなく理解ができたのだ。
「おじさん、ポースカットミッチって知ってる?」
「昔そんな言葉を聞いたことがあるな」
ある学者は言った。
「ポースカットミッチか。懐かしい。昔行ったことがあるよ」
ある酔っ払いは言った。
「昨日もそいつと一緒だったよ」
少年は布団に入り、今日出会った人たちについて考えてみた。あのおじさんはスーツを決めこんでカッコよかったな。でも、僕の質問にはほとんど興味がなさそうだったな。家に帰って僕のこと思い出すかな。あの学者さんは色々考えを巡らせて忙しそうだったな。でも、昔を思い出して嬉しそうだったからよかった。あの酔っ払いのおじさんはとても楽しそうだったな。でも、どこか寂しそうだったけどどうしてだろう。布団にくるまり次第にまどろんでいき、その暖かさに心が安らいでいった。これこそがポースカットミッチなのだ。ふと少年はそう思った。今日はポースカットミッチな夜だ。
「こんばんは。私はランパルロです。突然のお知らせ失礼いたします。このままいい気持ちで帰っていただくことも可能だったのですが、それでは物足りないかと思いまして登場させていただきました。えぇ、業務連絡。業務連絡。今しがたこのお話に登場した男の子は、」
「おい、ランパルロ。お前また邪魔しているのか」
「な、な、なんですか。邪魔だなんて失礼な」
「だってお前、特に何も芸なんてできないじゃないか。むやみに出てくるんじゃない」
「そんな、私だってできますよ。皆様を楽しませることなんて」
「じゃあやってみろ」ギロリとランパルロを睨みつけた。
「あぁ、もう、うるさい。レイバン」どこすかと二人は立ち去って行った。少年の眠りは深い。