一話 怪物<モンスター>
「R−15」と「残酷な描写有り」が入っていますが、そういった描写はまだ先になります。
『目標目視確認、現在位置──』
一人の斥候が声を上げる、それは空気振動の音声伝達ではない。
思念波による意思伝達魔術<スペル・ウィスパー>、それは速やかに遥か後方の軍司令部へと伝えられた。
その斥候が瞳に写すのは少女、木々の間をすり抜ける黒髪の少女。
『A−45、D−56。 繰り返す、A−45、D−5──』
そうして最後まで繰り返されず、尋常ではない速度で迫り寄った少女に蹴りを入れられ、斥候兵の意識が刈り取られた。
深い密林、そこに生息する獣でも成しえない速度で駆ける人型。
膝裏まである長い黒髪を激しく揺らしながら右腕を力強く振った。
振りぬいたそれは、黒光りする長い刃、薄く研ぎ澄まされた刃。
似ている形状の物で例えると『東洋の刀<ブレード>』、その刀の握り手、柄も刀の切っ先にしたような双刃。
無論そんな全て刀身である武器など誰にも使えない、振り回す所か握る事さえ出来ない。
だがそれを使う少女には関係ない、なぜならその刃が『彼女の一部』であったからだ。
手の先は刃で、肘から突き出すのも刃で。
右腕自体が『武器』、鋭利な刃物であった。
人ではない、右腕が武器など人間ではない。
「ハァッツ!」
ボンっと地面が凹む位に踏み込み、30メートルほど飛び上がる。
弾丸のように跳ね上がった体は樹木の枝と葉で出来た天井を切り裂き、蒼天の空を瞳に写した。
そうして眼下に収める森、その森を抜けた先には平原。
ずらりと並ぶのは武装した兵士、距離は約1500メートルと言った所。
「多いわね……」
万有引力、全てのものは大地に引かれ、重力に引っ張られる。
人ではない少女も同様に引っ張られ、落下し始めた。
無論、ただの人間が30メートル落下して地面に叩きつけられれば、最善で瀕死、その他即死な高さ。
やはり無論、人ではない少女は地面を陥没させるだけで傷一つ、骨にひび一つ入れないで着地した。
反動でバウンドしたかのように飛び上がり着地と同時にまた駆ける、標的を狙って平原へと向かって走った。
「……来るな」
「目的は明らかに此方ですので」
平原の中心に置かれた天幕、その中に届けられたスペル・ウィスパーを聞いていた二つの人影。
ずっしりと重厚な鎧を着た壮齢の大男と、逆に身軽そうな薄い鎧を着た妙齢の女性がいた。
「勝てますか?」
「勝つしかあるまい、それしか命じられておらんのでな」
「まぁ負けますね、多分あの右腕でぶった切られるんじゃないでしょうか」
「人の形をした化け物か、これならジャイアント<巨人>を相手にした方が楽だろう」
「えー? なんでAA<ダブルエー>モンスターと比べるんですか?」
「しょうがねぇだろ? そん位の能力があるって資料にあったんだからよ」
心底嫌そうに、大きくため息を吐きながら女は口を開いた。
「何ですかAAとか、そんなの相手にしたくないですよ。 隊長でもAなんでしょ? なら隊長クラスがあと10人は必要じゃないですか」
「だからお前が付いてるんだろ、俺だけじゃ間違いなくぶっ殺されるからって」
「私が付いてるからって確実にやれるわけじゃないですよぉー、せめてもう一人AA級……」
副隊長らしき女性が言い切る前に、天蓋の入り口から慌ただしく兵士が駆け込んできた。
「隊長! 出ました!」
「分かってるよ、手を出すなってしっかり命令しといたか?」
走りこんできた兵に視線を向けながら、めんどくさそうに言う。
「あんなの馬鹿しか手を出しませんよ」
「そりゃそうだ」
苦笑しながら立てかけていた斧槍を手に取る。
「本気でやるんですか? 逃げられたって言えば上も文句言いませんよ」
「そうですよ、隊長に死なれたら俺たちどうやって飯食っていくんですか」
「文句なら絶対出るだろ、俺たちにそこまで期待しちゃ居ないだろうが。 飯の心配は自分で考えろよ、お前等の人生だろうが」
斧槍を肩に担ぎ、づかづか、ドスドス、ガチャガチャ、音を鳴らして天蓋を後にする。
「……いつもどおり馬鹿な人」
「あーあ、死んで欲しくねぇよ」
呆れながらも二人は男の後を追った。
天蓋から出て、歩く。
平原に設けられた陣営、並ぶ将兵に手を上げ挨拶。
「目標は北西の密林を南下中、抜けるまで後数分だと思われます」
駆け寄ってきた士官、本来なら副隊長であるあいつが受け持つ仕事なのだが。
『めんどくさい』
その一言でこの士官が副隊長の仕事を一手に引き受けていた。
「また放り出しやがって、すまねぇな」
「いえ、それより隊の配置は……」
「待機だ、一切手を出すなよ。 撤退の準備もしとけ、それと斥候もしっかり回収しとけよ」
「了解」
敬礼、そうして命令を他の隊に伝えるため走り出していく。
それを見送りまた歩き出す、天蓋の近くには小高い丘。
平原を一望できる位置まで上っていく。
「向こうか?」
「じゃないですかね」
「向こうですよ、もうそろそろ出てくるかと」
いつの間にか後ろにいた二人、いつもの事なので突っ込まない。
「もう一度聞きますけど、本気でやるんですか?」
「くどいぞ、やるってんだからやる」
「ねぇ隊長、止めましょうよ。 本気で死にますって」
「お前等さっさと撤退準備しに行け!」
「『俺に構わず引け!』とか格好よく言っても無駄ですよ。 と言うか隊長がそんな事言っても格好良くないし」
「似合いませんよ、寧ろ『全軍突撃!』とか言ってる方が似合いますって」
「お前等な……」
気が滅入る、何でこいつ等がうちに配属されたんだか……。
「一騎打ちでもして、俺がやられればそれで撤退できるだろうが」
「報告じゃ殺さないって上がってますけど、絶対殺しまくってますって!」
「やばいって! 本当にやばいって! 私の第八感が『無理無理! 死ぬって!』と囁いてます!」
「何だ第八感って、んなもんあるか!」
そんな漫才してると、森側から歩いてくる一つの影。
「っ、出て来ましたよ! ほら、逃げましょうよ!」
「お前等だけで逃げろっての」
こいつらうるせぇ、と疲弊して丘から歩みだす。
「はぁ……もう。 何でこうも頑固なんですかね? 鍋のそこに付いた黒ずみ見たいに頑固ですよ、この親父」
「お前黙れ、いい加減気が散る」
「黙りませんよ、隊長がやるってんなら私もやらなきゃいけないし」
「俺は足手まといなんで見てるだけですが、隊長。 本当に死なないでくださいよ」
「相手次第だろうが」
渡された兜を被ろうとすれば。
「鉄も真っ二つなあれ相手に兜を被るなんざ、自殺行為ですよ」
そう言われ、奪われた兜を奪い返し被る。
「これで良いんだよ、余計な事して調子狂っちゃ堪らん」
「視界潰してまで守れませんよ」
「守る、じゃねぇ。 これが『一番』なんだよ」
フルプレート、重厚な戦士。
『重戦者、オグマ・グラフト』が戦に立つ。
「お前等絶対に手ぇ出すなよ!」
「お気を付けて!」
怒号に近い、それを聞いたオグマの部下たちが一斉に敬礼をする。
「ま、やれるだけやって撤退ですよ。 それが最大の譲歩ですから」
白銀色に光を放つ刺突剣<エストック>、それを腰の鞘から抜き取ってだらしなく手に持った。
「AAって信用できるんですかね? Aランクを10人以上ノしたってなら、まぁそれ位だろうと思いますが」
「今まで得られた情報から、総合的なランクはAAらしい。 もしかしたらA程度かもしれんし、AAAかもしれん」
「げぇ、もっと早く聞いておくんだった」
「ま、格上か格下か。 結構強いのは間違いないらしいがな」
「はぁ、気合入れてやりますか」
手元でエストックを回す『魔術賢士、エリア・ハールトー』が魔力を練り始める。
「お前は後衛だ、良いな」
「私が前衛とか言い出したら正気を疑いますよ」
二人して笑う。
「やるか」
「やりますかね」
見る先は、女。
大人と少女の狭間の年齢、少女と言うには遅過ぎて、大人と言うには早過ぎる。
蒼を基調としたブレザー、右袖は裂け、右腕である部分は異形の黒い刃が生えるようにくっ付いている。
紺を基調としたスカート、所々切れ目が入り、スリットのように太ももが見え隠れしている。
顔は老若男女が振り返る整った顔、髪色は黒く長い。
「……予想以上じゃないですか、これ?」
「だから何だよ、やるしかねぇのさ」
人の美しさの上限を超えて存在する存在。
見惚れるとかじゃない、見るだけで鳥肌が立つような存在感を放っている。
周囲を囲む兵も、視線が釘付けになるか、直視できないか。
とてもまともな物を見る目ではない。
「貴方たちが隊長、指揮官?」
「……ああ、おめぇさんを捕まえに来たのさ」
「そう、お願いがあるんだけど……」
やはり人なのか、人語を解して喋っている。
しかしながら、その右腕は人のものではない。
「引いてくれってンなら無理だ」
「そうじゃなくて、戦うなら一騎打ちでもしませんか?」
「……なに?」
唐突過ぎる提案に、一瞬だけ呆ける二人。
「それで、負けた方が勝った方のの言う事を聞くってのはどうでしょう?」
「……なんだ、おかしな提案だな」
「こっち向けじゃないですか。 私たちが勝ったら私たちについて来る、貴女が勝ったら私たちは逃げ帰るって事でどうでしょ?」
「……受けてくれるとは思いませんでした」
「まさか、以前もこんな提案したんじゃないだろうな?」
「しましたよ、そうしたら一気に襲い掛かられましたけど」
……頭沸いているのか?
「そんな余計な被害出す意味無いじゃないと思いませんか? 死んだ人にしたって誰かが片付けないと、疫病の苗床とかになりますし……」
「そりゃあ……、たしかにな」
「上はそこら辺全然考えてないですよねぇ、戦いが終わったらそのまま、さっさと帰って戦場の放置とか考えられませんよ」
「下の事考えてないんだろうよ、戦だけを楽しむ阿呆どもばかりだ」
「……自分勝手で、他人を省みない人たちばかりなんですよね」
うんうん、と頷く3人。
「って、何でこんな話してるのかな?」
その言葉に、驚いたように三人が顔をあわせる。
「っ、フフ。 残念」
「……まぁ、残念だ。 一騎打ちってのは無理だが、俺とこいつが相手をさせてもらう」
「良い友達になれそうなんだけどねー」
武器を構える。
俺たちの任務は『化け物を捕らえるか殺す事』、つまり目の前の嬢ちゃんと戦う事。
そう認識しなおして、爆ぜた。
「オォォッ!」
自身に膂力増強魔術<スペル・パワー>を掛け、大地を駆ける。
さらにエリアから強度増強魔術<スペル・ディフェンス>が掛けられ、攻守共に強化された肉体が奔る。
「チィィヤッ!!」
粉砕衝波<スキル・ブレイクパワー>を発動、オグマが持つ斧槍が大地を裂く。
それを鮮やかに避けきり、踏み込んでくる少女はオグマを顔目掛けて左手を伸ばす。
「無理、させないよ」
電光がオグマを迂回して、誘導雷撃魔術<スペル・リードライトニング>が少女の左腕に落ちた。
閃光を生み、対魔力の低い箇所なら炭になる一撃。
さらに麻痺効果も誘引する攻撃、生物なら殆どに効果的である。
だがそれもこの少女には効果的ではない、落ちた場所に小さな火傷を付けるだけ。
「ッ」
電撃で少女は痛みを感じ、動きが鈍る。
隙と見てショルダータックル、そのまま石突と穂先の斧で少女を撃つ二重倒打<スキル・ダブルパウンド>を放つ。
「ジアッ!」
尖った石突が少女の腹を打ち、返しの斧が頭部目掛けて振り下ろされる。
当たれば頭を割る、それが確約された一撃。
渾身、会心の一撃。
脳漿をぶちまけて目の前の少女は倒れる、それを確信して。
「グッウッ!」
穂先の斧が当たる前に、少女の左掌がオグマの鎧を打った。
自動車に跳ね飛ばされたように、重鎧を着た大の男を大きく打ち飛ばす。
「スペル!」
跳ね飛ばされるオグマとすれ違いに、高速で駆けるエリアが接近戦に持ち込んでくる。
攻める、既に前衛後衛など括る必要が無くなっている。
「疾風を纏い重ねよ<ウィンドランダー>!」
その身に風を纏い、攻撃速度を上げる風の身体強化魔術。
速さは疾風、通常でも非常に速い刺突が、魔術の底上げにより閃光のように放たれる突き。
胴を中心として連撃、とめどなく打ち出される刺突。
「これまで戦った人たちより、断然速いわ」
「ッ、スペル!」
どの一撃も人の胴を貫通する威力を持ったそれ、撃ち抜かれて穴だらけになっていて当然の攻撃が『どれも効いていない』。
動いた少女の左手が全てを止め防ぐ、そのまま伸びてくる腕に危険を感じて風圧捕縛魔術<スペル・バインドエア>、動きを封じるために風の縄が少女の体に巻き付く。
その戒めを、剛力により難なく打ち破った腕がエリアの首目掛けて迫る。
「やらせん!」
飛び退くエリア、入れ替わるように踏み込むオグマ。
「ヌオォ!」
大振りながらも速度を持った一撃。
人を横に両断する、食らった者は上半身と下半身が回転しながら離れ離れになるであろう一撃。
「これまで戦った人たちより、断然力強いわ」
そうして、少女の右腕は『変形した』。
刀を思わせるフォルムの右腕が、分厚く、黒く、重いであろう『西洋の大剣<ソード>』へと刹那に変化した。
「正しくッ!」
化け物、1.5メートルは有ろうかと言う長い刀身を作り出し、少女はオグマの一撃を受け切る。
スペル・パワーにて膂力の底上げされたオグマが、一回り以上小さい少女を押し切れない。
寧ろ押し返され始める始末、その状況に歯軋り。
Aランクの自分とAAランクのエリアを平然と押し返すその姿、どこがAAランクか。
AAA<トリプルエー>、そのランクで通用するほどの実力。
「スペル!」
エリアがエストックを振るい、切っ先を少女に向ける。
それと同時に暴風、切っ先から大地を抉る竜巻が蛇のように這い出る。
「風よ、噛み抉り取れ<エアサーペンバイト>!」
圧縮された風の牙と顎、大岩さえ噛み砕く風蛇が少女に向けて吐き出される。
横向きの竜巻、その表現が一番しっくり来る。
オグマの右側面から地面を抉り進む風蛇と、それを撃ち放ったエリアがオグマの左側面から攻撃を仕掛ける。
『人足らず、武器足らずには、人でなし』
少女が右腕を振るう、大剣がオグマごと斧槍を弾く。
少女が左腕を振るう、2メートルを超える黒色に広がった楕円形。
それは盾、叩き潰す『武器』。
右から迫るエリア、それより早く風蛇が大顎を開けて突っ込んでくる。
それを正面から迎撃、天高く掲げた左腕を、盾を蛇に向かい斜め上から振り下ろした。
「うっそぉ……」
正面から魔術を打ち据えた。
頭を潰された風蛇が解け、解れた風は暴風を生み、砂煙を舞い上げる。
広がる砂煙は驚愕して足を止めたエリアと、5メートルは吹っ飛び、3メートルほど転がり何とか起き上がっているオグマさえ包み込む。
「終わり」
「なっ、ッ!」
エリアが飛んできた何かをエストックで弾いた時には、別の方向から伸びてきたモノに手足が絡め捕られる。
「なん、キャッ!?」
「エリア!」
立ち上がり体勢を立て直したオグマは、悲鳴を上げたエリアが居た方角へ走り出す。
ガチャガチャ、ドスドス、構えたまま砂煙を掻き分け、見たものは縛り上げられたエリアだった。
「余り抵抗しないでくれると助かりますが」
黒く細い何かが、少女の右腕や肩から何本も生え出ている。
それに絡め捕られたエリア、恥ずかしそうに俯いていた。
「凄い失態ですよこれ、と言うか色々恥ずかしいんですけど!」
黒く細い何かは、エリアの鎧の下まで張っている。
「すみません、直接触れてた方が力加減間違えにくいんですよ」
「……えっと、力加減間違えたら」
「こうなります」
一本の黒く細い何かが地面に落ちていた拳大の石に巻きつき持ち上げ、バンッと砕いた。
「参った! 負けた! 降参! 死にたくない!」
それを見た途端にエリアが喚き出す。
「離せって言っても離さねぇんだろ?」
「いやー! 助けてー!」
「そうですね、負けを認めて下がってくれるなら離します」
「お父さんお母さん! まだそっちに逝きたくないです!」
「……わかった、わかったからエリア、お前ちょっと黙れ」
耳を劈く声に斧槍を下ろし、構えを解く。
「物分りが良い方で助かります」
「一応それでも部下だしな……」
「ほら! 隊長が武器下ろしましたよ!」
「いえ、まだ部隊が下がっていないので」
「いやぁー! そんなこと触らないでぇー!」
「……はぁ」
スペル・ウィスパーで撤退開始を命令する。
「……直ぐに下がる」
「分かりました」
絡め捕られ持ち上げられているエリア、それを持ったまま歩き出す少女。
「え? ちょ、なんで歩くんですか!? お持ち帰り!?」
「移動の時間を少しでも短縮しようと思っただけですが」
出てきた森とは反対方向へ進み少女。
歩いて歩いて、小高い丘へと上る。
既に撤退する準備をしていたのか、大人数が隊列を整え東の方向へと移動していく。
「……約束通り」
一瞬で引っ込む黒く細い何か、持ち上げられていたエリアが足を着ける。
「感無量、生きているってすばらしいですよ」
「……そうですね、それでは失礼します」
「ちょっと待て」
「……なんでしょうか」
「その……お前さんが『普通じゃない』ってのは分かったが、お前さんは一体何なんだ?」
「それを知ると、死にますよ」
視線を細め、少女がそう言った。
「お前さんが殺すってのか?」
「いえ……、それすらも知らない方が良いです」
そう言って一礼、弾かれたように少女は飛び上がり、遠くに着地後、高速で駆け走り去っていく。
「……あの娘を捕まえろって? AAAが何人も要るって、無理無理」
「なぁーんか、嫌な予感がするな」
「死の予感なら今さっきまで感じてましたけどねー」
オグマが大きなため息、戦士の予感とでも言うのか。
危険が纏わりついて来そうな悪寒が背中に奔っていた。
平原を抜け森を駆ける、凹凸の激しい森であるにも係わらず異常に速い。
それに付いて走る存在が一つ。
「……あの子達を守ってあげて」
『……守ろう、だからお前も死ぬな』
「うん」
返ってくる返事、これ以上の会話は必要なかった。
付いて走る存在は離れ、知覚外へと抜けていく。
また一人になる、そう思って失わぬよう思いを込める黒髪の少女だった。
多分更新はかなり遅いです。