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一年最高峰のパーティ

 残り――――四日。


 俺は今日も今日とて暇なので昨日はボッコボコに痛めつけられたので安静にしながら二人の様子を見させてもらう。

 メイの方はサーニャとエレイナが付き、カリナの方にはファイン、ミリア、カリンの三人が付いて教えるという豪勢なメンバーだが、当事者の二人は半泣き状態だ。


 「今、攻撃しなさい!」


 「はははは、はい!」


 「遅いですわ。一秒でも遅れればそれが命取りになると昨日も」


 「すみません。申し訳ありません。ごめんなさい」


 二人に叱責されるメイが謝罪の限りを尽くして二人に頭を下げながらも少しずつ反応が良くなり攻撃を仕掛けるように心がけている。


 反対にカリナの方は三人が順番に攻撃を受けるのをひたすら盾で防ぐという客観的に見れば苛めにも思える行為が繰り返されている。


 「――――ッ!!」


 「カリナさん、もっと腰を落として力を入れて下さい。かと言って、地面に置いては次の行動に踏み出せないので相手の動きを読んでください!」


 「難しいよー!!」


 ファインの説明の元、涙目でありながらも今日は文句を言わずに耐え続けているカリナに感心してしまう。


 二人の訓練を午前中の間に見続け、全員でお昼休憩を取る。


 「アー君は練習しなくても良いの?」


 「俺はカリナの動きに合わせるしかないからね。兎に角、カリナが盾を使えるようにならないと」


 俺は今は動くことが出来ないのだ。

 カリナが盾を使えるようになり、初めて行動が出来る。


 俺の言葉は想定の範囲内の様でカリナは腕を組み、首肯する。


 「だよねー。盾って使えば使う程に奥が深いって言うか難しいんだね」


 「どの武器でも同じですよ。ファインも爪を自由自在に振るのには苦労しました」


 確かにその通りだ。

 昨日の二の舞になりたくないので黙るが、ファインも爪を扱うようになるのにそれ相応の努力をしたのだ。

 しかし、今回の場合はカリナはそもそもの素質がある、メイに関しては召喚獣を出せるのであともう少しの筈だ。


 「そうだ!私、凄い良い案を思い付いたんだけど!」


 カリナが急に手を叩いて笑みを浮かべるが、天然の良い案に不安要素を覚えるのは俺だけなんですかね?

 全員が興味深そうにカリナの方を見ているけど、普通に再開しません?


 「私たちってまだ本格的な3対3の戦いとか見たことないじゃん?だからさ、ここにいる私とメイを除いた六人で対戦してみてよ」


 「……成る程」


 不安要素かと思いきや意外と良い案だ。

 俺も中衛としての立ち位置に絶対的な自信がある訳ではない。

 ここで少しでも試し、更にカリナやメイに3対3を見せることが出来るなら願ったり叶ったりだ。

 一つだけ不満があるとすれば、


 「カリナはサボりたいだけだよね」


 俺の一言に全員が首肯すると、カリナは慌てた様子で両手を広げて目を泳がせる。


 「ち、違うって!まあ、疲れたのは事実だけど見たいのは本当だし!剣聖と大天魔導士、更に言えば剣聖に勝った人も居るしこの六人が戦うとどうなるのかなって」


 確かに俺達は協力し合ってきたが全員で対戦することなど今まで無かったな。


 「良し、カリナの意見を参考にして3対3でもやってみるか」


 「面白そう!」


 「何気に初めてよね」


 「ご主人様と本気で戦うのは何年ぶりですかね」


 三人も同意見の様でやる気を漲らせ、笑顔を見せるので俺は残りの付き人の二人であるエレイナとカリンに目を向ける。


 「良いですわよ。剣聖と貴方ともお手合わせしてみたいので」


 「私も大丈夫」


 二人からも了承を得れた所で今度はチーム編成だ。


 「まずは、実力差を分けるために剣聖のミリアと大天魔導士のサーニャは分けるとして、ファインは今回は中衛を任せても良い?」


 チーム編成をするにしても、前衛三人、中衛一人、後衛二人では微妙にずれるので今回はファインに任せたいと頼むと、微笑で首肯が返ってくる。


 「はい。大丈夫ですよ」


 「そう考えると俺かファインがどちらか……ファインよりも俺の方が力は強いし、ミリアに対抗できると考えると俺がサーニャチームでファインがミリアの方かな」


 ファインをサーニャのチームに入れると既に勝負が見えてしまう。

 俺とミリアでごり押しで攻めれば呆気なく終わってしまうので意味はない。


 「そうですね。ミリアさん、よろしくお願いします」


 「うん!頑張ろうね!」


 ミリアもファインも反対はない様で既にやる気を漲らせているが、俺としてはもう一つだけ企みがある。

 ファインには中衛の素質があると思っている。

 俺は今まで援護に回っていたが、自分の中の方針としてはミリアと前衛で戦いながら水の弾丸などを利用して相手と戦いたいので…ここで、ファインの中衛の素質を見極める良い機会でもある。


 「アレン、やるからには負けは許さないわよ」


 「分かってる。全力で勝ちに行こう」


 「そうなると、私が剣聖のチームですわね。サーニャお嬢様と真正面から戦うのは些か気が引けますが手加減しませんわよ」


 エレイナが不敵な笑みを浮かべているが、サーニャも負けじと笑みを浮かべている。


 「当たり前じゃない。手加減なんてしたら許さないわよ」


 互いに火花を散らす中で何も気にした様子を見せないカリンがゆっくりと歩いて俺達の方へ来た。


 「よろしく」


 俺とサーニャの間にカリンが現れるが、常に無表情なので本当に何を考えているのか分からない。


 「まずは、作戦会議を少し取っても良いよね?」


 「勿論です。ファインもミリアさんに説明するのに必要ですから」


 ファインの頭の中で既に説明し作戦を考える術もある様で笑みを浮かべているので期待させてもらおう。


 「俺達も作戦会議をする前に陣形に関して少し説明するよ」


 ミランさんに言われた陣形に関して説明すると、サーニャは神妙な顔つきで何度も首肯する。


 「……成る程ね。確かに私達は陣形の前にミリアが突撃するからそれを援護して戦ってるわね」


 「今回はミリアがいないから俺達はカリンが前衛、俺が中衛で、サーニャが後衛の立ち位置になる。それは良いよね?」


 「ええ。文句はないわ。問題はミリアの化物級の力よ」


 サーニャは…本当に凄い奴だ。

 今の短期間で既に陣形に関しても理解を示しているし、今回の戦いの一番の難関を理解し打開策を考えている。


 「そうだね。カリンはミリアの力に対抗できる?」


 「自信はない」


 ……まあ、ミリアの力を剣士クラスで体感している人間が大丈夫だと言えるわけも無いか。


 「私はアレンが前衛、私が中衛で援護するのが良いと思う」


 その作戦は確かにメリットもあるが…、


 「駄目よ。その場合、相手にはファインが居るから直ぐに対処に来るわ」


 俺が喋る必要も無いか。

 サーニャの言う通り、ファインにはミリアにも負けない速度がある。

 少しでも危険になればファインが直ぐに援護に回るだろう。


 ……あれ?これってもしかして最初から厳しくないですか?

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