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談笑

 「ほう。剣聖のみならず大天魔導士もおるのか」


 「そうだよ!サーニャちゃんって言ってね。凄い魔法が好きなんだよ」


 「儂も魔法は好きじゃな。一人で黙々と出来るのが良い所じゃ」


 そのボッチ気質な所は何なんですか。

 セルシィさんとミリアの会話に思わず心でツッコんでしまうが、仕方がない。

 現在、森を歩くこと四日目で疲弊が溜まっている中で、セルシィさんとミリア、タマだけは元気な様子で談笑している。

 一つだけ分かった所はセルシィさんはボッチ気質だ。

 一人の時間が多かったのかは定かではないが、何事も一人で出来る事ばかりして、誰かとしようとする考えが無いのだ。


 話すのすら久しぶりだというのは本当に驚きだが、この辺境の農村の森の中で過ごしていれば一人なのも頷けてしまう部分もある。


 「サーニャちゃんと話してみてよ!絶対に気が合うよ!」


 「大天魔導士の子か。興味が無いと言えば嘘になるんじゃが…そもそも、儂は森の道案内だけの筈なんじゃが」


 「私はもう悪い人には見えないよ!昨日は色々と相談に乗ってもらったし!最初はごめんなさい!エルフは悪い人だって勘違いしてたよ」


 ミリアがセルシィさんに謝罪している姿が見受けられる。


 いつの間に相談に乗ってもらっているのだ。

 知らない新情報が山ほど出てくるが、俺としては三日間も殆ど休みなしで歩き続けて喋る元気があるのに驚きを隠せない。

 俺とファインは歩いた後はもう爆睡して明日に備えているのだ。


 今も隣を歩くファインの顔には笑顔はなく、汗を拭いながら無心で歩いているように見える。


 「ファイン、大丈夫?」


 「大丈夫です。ご主人様こそ大変でしたらファインが背負います」


 この状況で背負ってくださいなどと言えるわけもなく、


 「大丈夫だよ。後、どれくらいなのか分からないけど頑張ろう」


 今だからこそ言えるが、魔物が村に行ってくれて本当に助かっている。

 無心で歩き続けて、尚且つ周囲に何時襲い掛かってくるか分からない魔物を警戒しながら歩くのは無理だ。

 森を舐めてはいけないという教訓を知れてよかった。


 「アレン!限界だったら私が背負うよ!」


 「全然大丈夫」


 「嘘だよ!私を頼って良いんだよ!」


 ミリアが腰に手を当て、胸を張ってエッヘンと元気らしさをアピールしているが、俺が求めている頼るのとはまた違う。


 「幾ら剣聖でも同い年の女の子に背負われるのは俺のプライドが嫌だから大丈夫」


 それに、隣でファインが必死に歩いているのに俺だけミリアに背負って楽して歩くとか絶対に駄目だから!

 ファインにカッコイイ主としての姿を見せないとね!


 「もう、意地っ張りなんだから」


 ミリアが溜息を零しながらも、これ以上は追及しないのか一人で颯爽と歩きながら森をキョロキョロと見渡している。


 「無限大の体力が羨ましいな…」


 「小僧はもう少し体力を付けるんじゃな。剣聖は化物じゃがそれでもまだ男ととしては情けないぞ」


 背後で話していたセルシィさんが隣に並ぶ。


 「寧ろ、セルシィさんは元気なんですか?」


 「この森は儂の庭じゃからな。でないと、道案内が出来るわけもないじゃろ」


 納得はするが、女の子二人に体力でも劣っているのは流石に情けない気がする。


 「……俺も体力を付けよう」


 ミリアが今も満面の笑みで進んでいる姿を見れば、まだまだ歩けそうだ。


 「因みにですけど森を出るまでにあと何日ぐらい掛かりますか?」


 「最短距離で進んどるからな。まあ、早くて三日じゃな」


 今日も合わせて合計一週間か。

 ……本当に森を舐めるのだけは駄目だ。


 セルシィさんが居るから一週間で出られるが、道案内がいなければ何カ月でも彷徨える自信がある。

 因みにファインがいなければ森を出る前に食料が尽きて三日で俺達はその場を動けなかっただろう。

 本当にありがとうございます!


 ~四日後~


 「……ようやくか…ようやくだ!!」


 「ご主人様!ファインたちは生き残りました!」


 「ああ!森を抜けたぞ!!」


 何日歩いたかも自分の中では曖昧でひたすら食事と歩き続けるだけの日々、その生き地獄からようやく解放されるのだ。

 森を抜けた先に広がる荒野、しかし目視できる距離に都市の様な街の風景が見える。


 久しぶりの日光を直接浴びる心地よさ、もう彷徨わなくても良いという解放感に俺とファインの気分は絶好調だ。


 「もう、二人とも大袈裟だよ。七日しか歩いてないよ」


 ミリアが腰に手を当て、呆れ混じりに溜息を零しながら呟くのだが、剣聖と普通の一般人を同列に扱わないで欲しい。


 「七日もだ!ミリアみたいな体力無限大お化けと一緒にしないでくれ!」


 ミリアの隣を灰色のローブを身に纏い、幼い身でありながらもおばさんを匂わせるセルシィさんまでもが俺達に哀れむような視線を向けてくる。


 「確かに大袈裟じゃな。儂も楽勝じゃな」


 「森を庭とか言ってる人と同列にもしないでください!俺達が普通なんです」


 「あちしも平気にゃ」


 「タマに限っては浮いてるだけだっただろ!?」


平気ではない人が少数派で俺達がおかしいと言わんばかりだが、誰が見ても七日の月日を平気な顔をして談笑しながら歩いているのは化物としか言いようがない。


 「まあ、ここまでじゃな。儂は森に戻るぞ」


 森までの道案内と言う事でセルシィさんとの約束も終わっている。

 何の感情の揺らぎも無く、セルシィさんは何事も無かったかのように森の奥に歩いて行く姿を見て俺は声を出さなかった。


 俺が言うのは簡単だが、今回、セルシィさんと一緒に短い間だが旅をしている間の俺の約束も忘れないで欲しい。


 「え?――――来ないの?」


 「は?」


 ミリアがセルシィさんの手を掴み、キョトンとした表情で首を傾げて尋ねる姿を見て微笑を浮かべてしまう。


 「もう友達だよ。一緒に中央都市に行こうよ。私はまだまだ話したいよ!セルシィちゃん」


 「……」


 満面の笑みを浮かべたミリアの言葉にセルシィさんが初めて感情を動かした。

 目を見開き、ミリアの言葉が信じられないのか放心状態だ。


 「ふぁ、ファインも来て欲しいです!セルシィさんにはご主人様もファインもお世話になりました。中央都市でファインが色々と手助けしたいです」


 ファインが俺の前に立ち、深々と頭を下げながら満面の笑みで歓迎している。


 「ファインちゃんも言ってるよ。森に帰ったら次に会える日なんて分からないよ。なら、一緒に行こうよセルシィちゃん」


 人は変わらない。

 それは、絶対にあり得ないのだ。

 小さなきっかけで夢を見つける人、諦める人。

 一つの出来事で価値観を変えることもある。


 目の前の現象は確かに人の価値観を変えた瞬間だ。

 エルフは全員が悪い人間ではない。

 それを正しているのだ。


 「じゃが……」


 セルシィさんの根は深いのか、ミリア、ファインの言葉に迷い、揺らぎがあるのか目を伏せてしまう。


 「私は――セルシィちゃんと一緒に居たい」


 ミリアが微笑を浮かべて呟く言葉にセルシィさんが大きく目を見開き、ミリアを見つめる。

 本当に……ミリアの言葉は響くよな。


 純粋無垢で思ったら即実行するような天然だが、その言葉は全てが事実だ。

 虚言を吐かず、何時も笑顔で優しい彼女の言葉は何時だって真実しか伝えない。


 「私達の村が焼かれて落ち込んでいる時にアレンが言ったんだ。この先、楽しめるかどうかは自分達次第なんじゃないかって。セルシィちゃんが居たら私はもっと楽しめると思うんだ。だから――行こうよ」


 ミリアが優しく手を伸ばす。

 強引ではなく、セルシィさんが手を伸ばせる範囲に手を近づける。

 セルシィさんは手を挙げる。

 しかし、その手は震えミリアに近づこうとする度に迷っているように見える。

 彼女に何があるのか、何がそこまで他人との関りを断つきっかけになったのかは分からない。


 それでも…手を挙げたという行為がまだセルシィさんの何処かに他人との関りを持ちたいという意志表所が見える。

 何分、迷ったのかは分からないが――――最後にセルシィさんはミリアの手を掴んだ。


 ミリアがその行為が余程嬉しかったのか満面の笑みに変わる。


 「中央都市に行こう!」


 「……ああ。久しぶりに足を踏み入れてみるんじゃな」


 セルシィさんもまた微笑を浮かべてミリアに手を引っ張られる形で歩いてく。

 ……良い話だな。


 「因みにじゃが次にちゃんと言ったら焼き殺すから覚悟するんじゃな」


 「え!?可愛くない!?」


 「儂は子供じゃない!」


 駄目なのか。

 ロリっ子おばさんをちゃんで呼ぶなんて可愛くて俺も賛成だったけど焼き殺される可能性があるので口には出さない方が良い。

 ……この人の場合は冗談では済まないからね!

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