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おつかい

 「――――豪邸が欲しいのか?」


 「え?」


 「いや、何も言わなくていいぞ。ファインのお願いとあれば例え地の果て海の底でも働いて稼いでくる」


 「アレン、何言ってるの?」


 「今、大事な話をしてるんだよ」


 ミリアが首を傾げているがファインのお願いとあれば俺は何でもしよう。


 「あ、あのそんなお金を使うお願いじゃないんですけど…出来たらご褒美を貰えますか?」


 「ああ。豪邸でも何でも買ってあげる」


 「豪邸は大丈夫です」


 ……ち、違うのか?

 豪邸じゃなかったら何が欲しいんだ?


 「流石にこの国の全部が欲しいと言われると俺も直ぐには」


 「ご主人様はファインを何だと思ってるんですか!?」


 ファインが驚いている姿を見るが国でもないのか……。

 何が欲しいのだろうか。

 全く想像は出来ないが、


 「ファインのお願いなら何でも聞いてやる!と言うか、換金しなくても」


 「大丈夫です!ファインに任せて下さい!」


 大丈夫と言うよりも先にポーチをギュッと握りしめるファインが強く訴えてきた。


 「…分かった。なら、お願いしようかな」


 「はい!行ってきます!」


 ――――十分後。


 「なあ、ファインはいつ戻ってくるんだ?遅くないか?」


 「アレン、それさっきから何度も言ってるよ?」


 ミリアとタマは呑気に話しながら待っているが、


 「ミリアとタマはもう少し心配しろよ。ファインだぞ?まだ四歳の子供だよ?」


 「アレンと殆ど変わらないにゃ」


 いや、俺は永遠の20だからファインよりも何倍も年上なんだと言いたいが言えるわけもなく…だけど、ファインが頑張りたいって言うから送り出したけど怖いな。

 初めてのおつかいで心配する父親や母親の気持ちが分かってしまった。


 「悪い奴に絡まれてないかな。もしかして、あんなに魔石を持つわけねえだろ、何処かから盗んだのかっていちゃもんを付けられたり…冒険者みたいな奴に襲われたり」


 「……アレン、心配過ぎだよ。危ない時の為に厳しい特訓を乗り越えたんだから大丈夫だよ」


 「ミリアはまだまだだね。ファインが対処できるとしても相手が複数だった場合どうするの?流石にファインでも逃げられない可能性があるんだ」


 ミリアはアハハと笑っていた顔が硬直し動きが固まる。


 「ど、どうしよう!今すぐ行った方が良いんじゃないの!?」


 ミリアが顔を真っ青にして俺の身体を上下に揺さぶるが、ミリアの場合首が飛ぶ可能性があるから辞めよ?などと言っている場合ではない!


 「だからそう言ってるだろ!ファインには悪いが今すぐ迎えに行って」


 「――――どうかしたんですか?」


 「「ファイン!!」」


 背後から聞こえた声に振り返るとファインがキョトンとした表情で帰ってきたので、俺達は慌ててファインに寄り添う。


 「大丈夫か!?怪我とかしてないか?」


 「大丈夫です!」


 「ファインちゃん、怖い人に絡まれたりしなかった?」


 「はい。優しいお爺さんが換金してくれました。20金貨と3銀貨です。ご主人様、これを」


 ファインが渡してくれたポーチの中に金色の金貨が入っているのを確認しファインがきちんとおつかいを達成できた喜びもあるが、もう二度と一人でお使いに行かせるのは辞めることを心に決める。

 俺の身が持たない。


 「ファイン、ありがとう。良し、後でファインのお願いを聞くとしてサーニャの誕生日プレゼントを選ぶか」


 「え」


 「ん?」


 ポーチも受け取ったのでサーニャの誕生日プレゼントを選ぼうと思ったのだが、ファインは若干落ち込んだ様子を見せる。

 え!?何かした!?


 「アレーン」


 「なに……ヒッ!?」


 ミリアの声に横を見ると、ミリアが怒気を孕んだ瞳が俺を捉えている。


 「え!?なに!?」


 「私はね、アレンに手を挙げるなんて嫌なんだよ」


 まるで悲劇のヒロインの様に悲しみに憂いる姿を見せるミリアに全く感情が浮かばずに真顔で頷いてしまう。


 「うん。手を挙げたら死んじゃうからね」


 「だけどね、殴らないと分からない馬鹿なんだってアレンに気付いて」


 「うん。取り敢えずミリアに馬鹿って言われるのは傷つくから勘弁して」


 「『何で分からないのチョップ』と『許さないキック』と『馬鹿パンチ』どれがいい?」


 三つほど数えているが、一つ目は俺の頭が爆発し、二つ目は俺の胴体が真っ二つになり、三つめは世界の彼方に消える映像しか思い浮かばない。


 「何かした?」


 こっそりとミリアに耳を近づけて尋ねる。

 暴力だけは駄目!NGだから!


 「ファインちゃんは褒めて欲しいの!」


 「は?褒めたじゃん」


 「撫でてないでしょ!もうあの特訓の日々を忘れたの!?」


 ……おかしいな。

 あの日以降もファインに厳しくしたことなどなく寧ろ褒め絶やしているのだが、撫でるのも今では当たり前にしている筈なんだけど。


 「それで良いの?」


 「勿論!」


 ミリアの助言を聞いて振り返りファインと対面する。

 心なしかまだ少し悲しそうな表情を見せている。


 「あー、そのあれだ。俺の為に頑張ってくれてありがと。本当に助かるよ」


 優しく撫でるとファインの顔が満面の笑みに変わる。

 あれ?天使かな?


 「ファイン、凄い嬉しいです」


 あっぶねえええええ!

 危うく天使に天国に連れて行かれて成仏するかと思った!


 「お願いって撫でて欲しかったの?」


 もしも、撫でるのがお願いなら俺はこれから365日24時間でもファインを撫で続けられるけど、俺のご褒美ではないか?

 ただ、ミリアのこの勘の鋭さは何だ。


 本当にファインは頭を撫でられて嬉しそうだ。

 今だから分かるが恐らくマヤちゃんの頭を撫でた姿を見て自分も撫でて欲しくなったのだろう。

 ファインの事なら永遠と見ていた筈なのに気付くことが出来ず、ミリアに気付くことが出来るとは俺が本当に馬鹿なのか?

 天然純粋無垢なミリアよりもお馬鹿になったの?


 「あ、あのお願いなんですけど…嫌でしたら良いんですけどファインと朝に走ってくれませんか!」


 「ん?」


 豪邸でも国でもなく走ること?


 「それは世界中を俺に走ってくれってこと?」


 「違います!朝にファインと走って欲しいんです!」


 ファインと走ることがお願い?

 え、俺のご褒美になってるよ。


 ファインは頬を赤らめ俺の言葉を待っているが、そんなの俺からお願いしたいのに一緒に走ることがファインにとってのお願いだったのか。


 「良し、魔物と戦う前に一緒に走るか」


 「はい!」


 「私も走る!」


 「はい。ミリアさんも一緒に走りましょう」


 お願いを聞き、サーニャの誕生日プレゼントを買うために歩き続ける。

 ファインが満面の笑みを浮かべてタマと一緒に街の方を見てはしゃぐ姿を見せるが、何がそこまでファインにとって嬉しいのかが分からない。


 「アレン、今度は何を厳しい顔をしてるの?」


 「ファインが何で走りたいのかなって。あれだけきつい思いをしたのにわざわざ走りたい理由があるのかな」


 「走るのが目的じゃないと思うよ」


 ミリアがファインを見ながら微笑を浮かべて喋るのだが、


 「いやいや。走りたいからお願いしたのに走りたくないってどういうこと?」


 「女心が分かってないアレンには分からないよ」


 ……な、なんだと。

 俺がファインの事で分からないことなどある訳がない!


 「走った後が気持ちいいから!」


 「外れだよ」


 「俺と走りたいから!」


 そうであってくれ!


 「それもあると思うけど、まだ外れだよ」


 「え、ええと後は皆で走りたいから」


 「遠くなったよ」


 全く分からない!

 俺がファインの事で分からないことがあるとは。

 世の中は不思議で満ちている。


 隣を歩くミリアがファインの方を見ながら歩くが…その横顔は天然である筈なのに何でも見透かして…いや、違うな。

 ミリアは確かに馬鹿だ。

 大抵の事は理解することもしないし、考えない。

 剣術の時に時折見せる才能は頭と言うよりは感覚で行っているのが回答として間違っていないと思う。


 ミリアは馬鹿で天然だけど――――大事な事だけは分かっている様な気がするのは俺の考え過ぎか?


 「答えを教えて」


 「じゃあ、ギュッとしてくれたら教えてあげる!」


 「え、何で?」


 ミリアが俺の方を向いて手を広げて俺を待ち構える態勢を整えている。

 状況判断が追い付かないけど、俺がミリアに抱きつけというのか。


 「最近はサーニャちゃんが私から抱きつくのは女の子として駄目って言うからアレンからなら問題ないでしょ?」


 「そうなのかな…?」


 俺も良く分からないが、ファインの為に抱きつけと言われたら何百回と抱きつこう。


 「それじゃあ…」


 「うん」


 ゆっくりとミリアに近づき抱きつくけど…恥ずかしい!!

 何時もはミリアから乱暴に抱きつかれる挨拶みたいな形なのに、今は俺から抱きついている。

 やけに頬が熱く、体全身に熱が溢れ返っている様な気がする。


 「えへへ。温かいね」


 「お、おう」


 抱きついているので表情こそ見えないが、ミリアが満面の笑みを浮かべている気がする。

 この子、将来は間違いなく小悪魔なあざとい女の子になるに違いない。

 男子の服の裾を無自覚に摘まんだり、今の様に抱きつくことを他の誰かにもするのだろうか?

 想像すると少しだけ心にチクリと針が刺すような痛みが走る。


 「よーし!元気も注入したところで教えてあげるよ。ファインちゃんは褒められたいんだよ」


 ミリアが頬を染めたまま離れ一本の指を差して答えを出した。


 「……いや、俺は特訓が終わった時から自分でも過保護と言わんばかりに甘やかしてるよ」


 「それも良いと思うよ。私もファインちゃんは甘やかしたい。だけど、ファインちゃんも特訓の最後に言ってたでしょ?アレンに褒めてもらえるのが嬉しいって」


 「……そうだね」


 あの日の後景は忘れもしない。

 ファインが俺が褒めてくれるから嬉しいって言ってたのは絶対に一言一句忘れてない。


 「アレンが何でも撫でてくれるのは勿論ファインちゃんも嬉しいと思うよ。だけど、それ以上にファインちゃんにとって頑張ってアレンに褒められるのが一番ファインちゃんが頑張れる一番の活力だよ」


 ミリアは本当に分からない。

 いや、分からないから天然なのか。

 何を考えているのか、何を想いファインの真意に気付けるのかは不明だがその答えは正しい気がする。


 「だから二人で沢山ファインちゃんを褒めようね!」


 「そうだな」


 ったく、今日だけはファインに勝る可愛さ100%を出している。

 俺はミリアに何度教えられるのか…答えは分からないな。


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― 新着の感想 ―
[一言] ミスというよりミーシャって名前に釣られてるだろって思えるww サーニャの名前今回全部ミーシャになってるw
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