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獣魔の力

 「言うよりも先に見せた方が早いと思うにゃ。初めにウォーターボールを使ってみるにゃ」


 「オッケー。ウォーターボール」


 タマの言う通りにウォーターボールを使用すると、普段の大きさの約二倍のウォーターボールが完成して放たれる。

 木に命中して消えるが、今までとは大きさも威力も変わっている。


 「あちしの能力は契約した人の魔力増強、威力上昇があるにゃ。後は契約した人が使う魔力の消費量が減るにゃ」


 「便利すぎるなぁ」


 「そうにゃ!あちしは凄いんにゃ!」


 今までで初めてタマが腰に手を当てて誇らし気に呟くが…二倍に膨れ上がるのは普通に凄すぎないか?


 「最後にもう一つあるにゃ。アレンはもう一度ウォーターウォールを使うにゃ」


 「ウォーターウォール」


 唱えると同時に先程のウォーターウォールよりも分厚さが増したものが現れた。


 「ここで、あちしが触ると永久保存が可能にゃ」


 「ん?」


 先程は直ぐに消えた水の壁が今度はずっとその場に存在している。


 「永久保存って事はずっとこの場にあるのか?」


 「惜しいにゃ。例えば壁に何度も衝撃を与えて原型を留めることが出来なくなったら消滅するにゃ」


 「ほうほう」


 整理しよう。

 タマの能力

 ・魔力増強とはシンプルに俺の魔力の量が増える。

 ・威力上昇は先程も見たように魔法の威力が二倍に上がる。

 ・魔力消費量減少も簡単で魔法を行使する際の魔法の魔力が減少するのだ。

 ・永久保存はウォーターウォールなどの魔力の物質を永久的に保存が出来る。


 「永久保存か…。何かに使えないかな?」


 「あちしとしては逃げる際に土の壁や色々使って妨害することに役に立つと思うにゃ」


 「ふうん」


 確かに俺がどうしても勝てないと踏んだ時に逃げる算段としては悪くないけど…もっと何と言うべきなのだろう。

 壁としてただ使うのだけではなく、攻撃で使えないか。


 頭の中ではまだモヤモヤとした形だが、何とか攻撃に転じられるという漠然な考えがある。

 永久保存と言うのは絶対に便利だ。

 それは間違いない。

 だけど、その有効活用が思い付かない。


 「この壁は自由自在に移動して相手に襲い掛かる」


 「魔力に自由な意思なんてないにゃ。アレンは稀に賢くて通常が馬鹿すぎるにゃ」


 適当に思いつく限りのことを言っただけなのに予想の二倍の罵倒が返ってきた。


 「あの、攻撃には関係無いんですけど…」


 「ん?どうした?」


 ファインが遠慮気味に手を挙げるので意見を聞いてみよう。


 「これを並べたらミーシャさんの炎魔法の練習に使えませんか?これなら、炎魔法を当てても燃えることはないですし」


 「おお!確かに!」


 「それは出来るにゃ」


 ミーシャは全属性の魔法を扱う事を夢に見ているし、叶えることは出来るのはお昼にでも伝えるとして、何とか攻撃に…。


 「あ!この壁を斬って分割して相手にぶつけられる!」


 「だから崩したら消えるって言ったにゃ!そんな自由自在に扱える物じゃないにゃ!」


 ですよねー。

 そんな自由自在に扱える能力なんて――――自由自在?

 待てよ。


 自由自在ではないけどそれに近い能力が俺にはあるのではないか?


 「な、なあタマ。これは、俺が消えろって思ったら消える感じで俺の意思で扱えるのか?」


 「その通りにゃ。簡単に説明するとあちしとアレンが契約して魔力を混合させている状態にゃ。あちしがアレンの魔力に干渉してウォーターウォールを永久保存してるにゃ。これを崩すのも維持するのもアレンの意思で出来るにゃ」


 初めての能力を試してみよう。

 よく、ミリアには魔法を使うときはイメージが大切だと聞いた。

 能力も同じだと考えて間違いない筈だ。


 俺が想像するのは五十発の弾丸。

 ウォーターウォールを分割して圧縮した球を作るイメージで……、


 「アレン?何するにゃ?」


 ウォーターウォールに近づき、手を添える。

 確かに何か俺が自由に動かせる感じがする。

 消滅しろと考えるとスッと地面に落ちて消えるような感覚が掌に確かにあるのだ。

 では、これを能力で変換すれば……、


 「【変幻自在】」


 目を瞑り、想像を膨らませ言葉を唱えると水の壁が分割し何発の弾が…あるような感覚が…、


 「な、何にゃ!?」


 「え!?」


 タマとファインの驚きの声が聞こえ、目を開けば眼前には――――五十発の水の弾丸が確かに俺の前に存在した。


 「良し!成功だ!」


 不思議な感覚だ。

 俺の頭の中に確かに五十発の弾丸があるような感覚に囚われる。

 ……試してみるか。


 集中する為に目を瞑り、五十発の弾丸を俺の頭上に持っていく。

 目を開けば確かに頭上に五十発の弾丸がある。


 心臓が高鳴り、興奮が収まらない中でまだ試すことはある。


 「あ、アレン。これは何が起きているにゃ?」


 「ちょ、ちょっと待ってくれ。最後まで試したい」


 タマが状況説明を求めるが、俺はまだやり切っていない。

 五十発の弾丸を俺が手を使えば操れるような…例えるならFPSゲームの拳銃だ。コントローラーでボタン一つで弾が出るのを俺が頭で打つ形だ。


 「まずは一発目」


 五十発の一つの弾丸を森の中にある木に狙いを定めて打てば真っすぐ小さい分、ウォーターボールよりも速く木に衝突する。


 「次!!」


 興奮が溢れ、次々に五十発の内の一発を木に打ち続ける。


 「これは…凄い!超楽しい!!」


 本当にマシンガンでも打ってるように頭上から次々と五十発の弾丸が木に当たっていく。

 しかも、これだと俺がイメージして打っているから普通に魔法を当てるよりも簡単だ。


 「ハハハハ!しかも威力が高いぞ!!」


 水を圧縮して作っているのでウォーターボールよりも範囲は狭いが威力は更に増加している。

 これは、楽しすぎる!


 「ちょ、アレン!?こ、これは」


 「ご主人様!危ないです!」


 「へ!?」


 二人の慌てた声が聞こえ、我に返ると集中して打ち続けたことにより、木が先に限界を超えて俺達の方に倒れ掛かってきた。


 「「ギャアアアアアア!!」」


 俺とファインは悲鳴を上げ、全速力で駆け抜けギリギリで木に当たらずに生還できた。


 「…ファイン、無事か?」


 「だ、大丈夫です」


 やばい!

 ゴブリン戦より今ので死にかけた!

 流石に自分の新しい力に浮かれて遊んでたら死にましたとなるとヴォルさんに笑われてしまう。


 だけど――――俺が強くなれる道筋が見えた気がした。

 タマの永久保存を使い、俺の変幻自在を使えば…俺は更に強くなれると確信が持てる。

 それこそ、大天魔導士も剣聖も超える――特別な何かに変化している気がする。


 「良し。帰るぞ」


 「は、はい!」


 「この木どうするにゃ?」


 「大丈夫だって。子供が倒したなんて絶対に思われないから」


 バレなければ大丈夫だよね!

 ここに来たのもバレなかったら…と思ったけどはい。

 そんな都合のいいことはありません。


 ファインとタマと共に森を抜けると母が仁王立ちして待ち構えている。


 「二人とも、さっきのは誰にも言わないでね。全部、完成してから伝えるから」


 「わ、分かりましたけど…クレアお母さんが」


 「安心して。俺に作戦があるから」


 ファインは俺の秘密よりも目の前の母さんの表情に怯えている。

 うん、怖いね。


 母が睨みつけて待ち構え得ている中で俺達は堂々と塀を超え、母と対面する。


 「あなた達…昨日の話を」


 「ひっ!?」


 ファインが母の寄進の如き表情に怯えを見せるが安心して良い。

 俺には秘策がある。


 「母さん」


 「なに?」


 穏やかながらも頭に二本の角が生えている幻覚が見える母の表情を見て咳ばらいを一つして、作戦を実行する。


 「また行っちゃった!てへ!」


 可愛らしい子供を演じて拳を頭に付けて舌を出してやっちゃいました、アハハと呟くと母の拳骨が――全力で振り下ろされた。


 「ううう。奴隷商人たちの攻撃よりも痛いです…」


 「愛が籠ってるからよ」


 「まさか、可愛い子供の表情が通用しないとは」


 俺達は再度母に首根っこを捕まえて家に強制送還されている現状だが、納得が出来ない。

 母には通じると思ったが無理だったか。


 「お前さん、やっぱり馬鹿にゃ」


 「天才と馬鹿は紙一重だよ」


 「ちょっと、何を言ってるのか分からないにゃ」


 タマに呆れられた表情を見たが、俺はまだ興奮が収まらない。

 何度怒られても絶対に明日も行きますんで!

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