説教
「……あの、どうして俺の場所が…分かったんでしょうか?」
俺とファイン、ファインの服に隠れていた猫を合わせて俺達は朝ご飯抜きとリビングで二人と一匹仲良く正座をさせられていた。
母が家事をせずに大人しく座っているが、不服そうな表情で俺達を見下ろしているのに尋ねなければならない。
普通に考えたらおかしい。
農村とは言っても流石に朝だけで俺の居場所が特定できるわけがない。
何か特別な能力でもない限り絶対に不可能だと断言できる。
「ミリアちゃんが教えてくれたの」
「え?ミリア?」
椅子に座って俺の分の朝ご飯を堪能しているミリアを見るが本人は何も気にした様子も見せず朝ご飯を貪り尽くしている。
「アレンとファインちゃんを起こしたミリアちゃんがいないことに気付いて、私も初めはここに来たばかりのファインちゃんに色々と朝から見せて回ってるのかと思ったわよ」
そうだよね。
何でバレてるんだろ。
「だけど、ミリアちゃんがこの辺にアレンの気配が無いから森にいると思うよって教えてくれて、待ってたらあなた達が来たのよ」
……いや、待って。
納得出来てないよ?
それで納得すると思ってるの!?
どんな超人的なセンサーだ!
俺が街にいるかいないか判別できる能力なんてミリアは持ってなかったよな!?
「全くあんたたち何してんのよ」
母が怒っている中でサーニャが朝ご飯を皆の元に届けながら溜息交じりに呟かれる。
バレるとは思っていなかったんだ。
当初の予定としては母にマヤのお父さんにお礼を伝えに行ったという言い訳を考え、ファインが一緒に来ると決めた時には一緒にランニングをしていた、もしくはファインに色々と見せる為に街に行ったと言えば誤魔化せると考えた。
だが、流石に森から出る所を見られてランニングをしてましたは通用しない。
「もう、サーニャちゃんも怒って」
「私も連れて行きなさいよ!魔物と戦うなんて実践じゃない!ファイアーボールを使えるチャンスだったのに何で二人で行くのよ!」
母の言葉を遮る形でサーニャの見当違いな言葉に母が静かに立ち上がる。
サーニャは俺達の方を見て気付いていないが、先程の不穏な気配が再来し俺は無意識に身体が身震いする。
父など、見ていないふりをしているが足が震えている。
「今度は私も」
「サーニャちゃん」
「ん?なに……ひっ!?」
全く気付かない様子で喋り続けるサーニャの背後に修羅が立ち、話しかけた途端にサーニャの顔色が変わる。
「炎魔法をこの辺で使ったら駄目だって注意した…わよね?」
「あ、じょ、冗談で」
「危ないことをしたら駄目だって何度も」
「正座してます!」
何時もはツンデレの様子を見せるサーニャが姿勢を正して何も反論せずに俺の隣に綺麗に正座をする。
「…全く、何でこんなことを」
「アッハハハ。アレン、魔物と対戦してどうだった?」
「俺が戦ったのが弱かったから大丈夫だったよ。あー、余裕だったなあ」
大丈夫だから次も行かせて欲しいという気持ちも込めてチラチラと母の方を見ながら伝えるが全く動じた様子も考える仕草も無い。
「アレンは強いなあ。俺もお前の戦いを見て見たかっ」
「お父さん。貴方は何を言っているの?」
父が豪快に笑いながら失言をするのを見逃す母ではない。
後ろから鋭い目が父を捉え、父は俺を見つめたまま硬直する。
「……いや、まあ俺の息子だし」
「そもそも!お父さんは放任主義過ぎるのよ!アレンが森に入って魔物に襲われて帰ってこなかったらどうするのよ!」
「まあ、それは大丈夫だと信じて」
「まだ五歳よ!?まだこれから――――」
永遠と続く母の説教に何時しか父も俺達の隣で正座をして一番怒られている。
「全く…何でこんな大変な時期に疲れなきゃならないのよ」
「「「大変な時期に散々働いてたくせに」」」
俺とサーニャ、父が同時に反射的に答えると、母の鋭い眼光が俺達を射抜く。
「何か言ったかしら?」
「「「何でもございません!!」」」
恐ろしすぎて反論する機会も生まれない。
怖いよ……。
「良い子なのはミリアちゃんだけじゃない。ねえ?ミリアちゃんは森には行かないわよね」
仲間を求める様にミリアに問いかけると、家族全員分の朝食を食べ尽くしているミリアが直ぐに首肯した。
「うん。もう森には行かないかな」
「もう?」
ミリアの発言に気になる点を見つけ聞き返すとミリアは手を合わせて俺達の元に来た。
「アレンに負けて町の人とも戦った後に、じゃあ次はって考えて森に入って魔物と戦ったんだけどなんか一撃で何処かに消えちゃうんだよね」
可哀そうだ。
ミリアと戦った魔物に同情してしまう。
出会い頭に一発お見舞いされてさようならとは今度は魔物に生まれないことを祈るしかない。
「森に一人で入ったの?」
「うん!」
「あ、危ないじゃない!もしも、迷子になったらどうするのよ!」
「大丈夫だよ!アレンの気配を感じれば家に帰れるから!」
それ本当にどういうこと?
俺から加齢臭でもするの?
ファインが気を遣って言わないだけで本当は村全体に匂う程の異臭を放っているのだろうか。
「でも、今日はアレンの気配を感じれなかったって」
「うん。流石に遠すぎるとね」
「もしも、ミリアちゃんが森に入った時にアレンの気配が感じれなかったらどうしてたの?」
確かにその通りだ。
ミリアは何を考えていたのか。
ミリアを見ると何も考えていなかったのか首を傾げて、
「気合で乗り越えられると思う!」
ゴンと鈍い音を立てた拳がミリアに振り下ろされた。
「いったー」
悶絶したミリアと共に俺達は全員正座の罰を受けてしまう。
「今後森に入ることは禁じます。良いわね?」
「そもそも入ってないのに…」
「私は帰れたのに」
悶絶している女の子二人に苦笑いを浮かべてしまうが…母はまだ分かってないな。
俺は諦めが悪いぞ!




