やる気
本日、地獄の遊びを終えて自宅へと戻る。
家は三部屋あり、一部屋は全員共同の居間、一部屋が母と父の寝室、最後が俺の部屋だ。
流石に夜遅くまで動いて死ぬほど疲れたので、夜ご飯を食べ終わり自室へと戻り直ぐに寝ようと試みるが、簡素な布団の中にもう一人、ミリアが先程から俺の肩を揺さぶり寝かせてくれない。
「ねえ、おとぎばなしよんで」
「もうつかれた」
「よんで!!」
畜生。
喧しくて寝れない。
俺より元気なこの子は一体どこに体力が残されているんだ?
その小さな体の百倍の体力とか持ってない?
「なんのほん?」
「りゅうきしのはなし!」
「もうじゅっかいはよんだよ!?」
ミリアは生粋のお伽噺マニアだ。
もう何度読んだか分からないお伽噺。
この件に関しても最初に失敗したのだ。
初めてミリアが俺の家に来た時にお伽噺の本を持ってきたが字が読めないと言っていたのだ。
しかし、俺には前世の記憶があり明らかな補正と考えるが字が普通に読める。
永遠と眠らずに俺の部屋を半壊させると言わんばかりに動き回るミリアを寝かし付ける目的で一度読んだのが失敗だった。
その日から泊まる度にお伽噺を読み聞かせているが、段々とミリアの体力が増えて寝る時間が少なくなっているのだ。
結局時計が無いので体感だが朝の三時ぐらいまで俺の隣で絵本を読んでいる。
……もう勘弁してくれ。
「いっかいだけだよ」
「ひゃっかい!」
…この子は俺を舐めているのかな?
いや、この目はマジだわ。
キラキラと満点の星空の様に目を輝かせ、拳を握りしめて頑張る姿を見せている。
普通に百回は読ませる気だ。
流石に日が沈み終わるまで剣術をさせられ、挙句の果てに朝の三時までお伽噺を読み聞かせる体力は俺には残されていないので何とかしよう。
「あら、二人とも。汗を掻いているんだから寝る前にお風呂に入りなさい」
「「はーい」」
母のカリナが俺の部屋に頬を高揚させて入ってきて窘めるのでまずはお風呂で時間稼ぎをするか。
お風呂は家の中に存在せずに原始人かとツッコめる五右衛門風呂が備え付けられている。
リビングに入ればお酒特有の匂いが充満しており、先程も母の頬が高揚していたので二人でお酒を飲んでいるようだ。
「お、アレン。お前たちが最初か?ゆっくり浸かれよ」
「うん。お父さんありがとう」
「ありがとう」
父であるジダンがお湯を沸かしてくれたので俺は汗を直ぐにでも拭きたいので直ぐに服を脱いで五右衛門風呂へと浸かる。
ああ、癒される。
「わたしもはいる。アレン、ふく」
自分の欲を満足させるために先に入ったが…ミリアはまだ四歳だ。
一人で服を脱ぐのも嫌なのか。
「はいはい」
これが大人の女性であれば恥ずかしくて今すぐ部屋の中に引き籠るが、同い年の天然系女子の同い年だ。
全く気にすることも無く服を脱がせて一緒にお風呂に入る。
ああ、何度味わっても心安らぐ空間に一歩でも出る気が失せてしまう。
「アレン、あがったらおとぎばなしよもうね」
……ああ、癒された気持ちが一瞬にしてかき消された。
この子は一体何度読めば満足するのだろうか。
いや、満足する時が来ないのかもしれない。
もうお伽噺を読むことは決定しているので、それよりも気になるのはミリア自身だ。
隣で満足気に入っているミリアを見ると普通の四歳の子供だが…華奢な体からは程遠い力がその腕には宿っている。
男子よりも女子の方が先に成長するのは哲学だが、それだけでは測れない強さがあるのだ。
同い年でありながら圧倒的な力の裏には異世界特有の――――ステータスが関係していると俺は踏んでいる。
「ミリアはどうしてそんなにつよいの?」
「うーん、わかんない。けど、アレンもつよいからいっしょだね」
一緒なら一度は勝ちたいものだ。
別に強くなりたい向上心を持ち合わせている訳ではないが、俺が四年間生きていて夢などを持って生活している訳ではない。
しかし、一度も勝てないと言うのは素直に悔しいし剣術をもう少し頑張ってみるか。
後は異世界の情報だ。
今まで少しずつ調べようと試みたが、毎日ミリアが来るので村長の家に本を借りに行くことも出来ない。
父と母は朝から晩まで畑仕事をしているし、村長の家に行って本を取って来て欲しいと言うのは心苦しい。
だが、ミリアの強さの秘訣が分かれば俺にも希望が見つかるかもしれない。
これまで何度もステータスオープンや、魔法などを唱えようと試みたが何も出来ないまま四年の月日を迎えた。
本当にステータスがあるのか、否か。
まだ真実は何も分からないが今は深く考えずにミリアに勝てるように頑張るか。
「つぎはかつよ」
「まけないよ!」
どうせ何もすることはない日々だ。
ミリアが飽きるまでは俺が剣術で勝つまで努力することにしよう。