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ステータス

 「アレン、まだー?」


 「もう少し待って」


 次の日、午前中にミリアとの魔術の勉強を始めるのだが俺はヴォルさんから受け取ったステータス表を見つめる。


 Lv.1 名前 アレン

 種族:人族

 力:C

 敏捷:C

 耐久値:C

 器用:C

 知力:C

 魔力:C

 【能力】

 ・斬撃[1/5]・変幻自在[1/5]

 【魔法】

 ・水魔法(Ⅱ)[1/5]・風魔法(Ⅱ)[1/5]・土魔法(Ⅱ)[1/5]・光魔法(Ⅱ)[1/5]・闇魔法(Ⅱ)[1/5]


 ステータス表と、昨日ミーシャに伝えて受け取ってもらった冒険者の本、世界の常識に関する本を見て色々とこの世界の謎に関する常識が解決していく。


 世界の謎に関して。

 ・この世界は五歳で『開眼の儀』を行うまでは何事も働くことを禁じられている。

 ・『開眼の儀』で自分の親と同じ職業である場合は手伝う事を許可されている。

 ・魔法を親から教えてもらう事を禁じられているのは、『開眼の儀』で不具合が起きないための決まりだと言う。

 ・『開眼の儀』で親や親族に教えてもらった場合、魔法の名前の横に書かれてある(Ⅱ)という数字が(Ⅲ)になり、処罰を受けるらしい。

 ・母が俺に魔法を教えなかったのは世界の禁止事項だったからだ。

 ・数字の(Ⅱ)は他人から教えてもらった証拠らしい。


 ふむ。

 大体の謎に関しては解消することが出来たかな?


 次は冒険者に関してだ。

 ・冒険者は自分で魔法を覚えることが出来ない。

 ・誰かに教えてもらう事で初めて使えるようになる。

 ・魔法、剣術に関する能力は五分の一のレベルから四までしか上がらず、五には絶対に成長しない。


 ……と言うことろだろうか。

 俺が初めに魔法を使えない理由に関してようやく解明出来たのは有難いが、するともう一つ疑問が浮かぶ。


 俺は――――職業はない筈なのに、どうして冒険者として認定され魔法が覚えられないのか。

 一つの仮説として考えられるのは俺はこの肉体に前世の魂を宿している状態だとする。

 その場合だと肉体は冒険者としての器だ。

 冒険者として初めに認定されたのと繋がるし俺は冒険者の器の中に魂をいれられた状態と考えれば魔法が覚えられないのにも辻褄が合う。


 そもそも、前世の頃の肉体などを持って行けば異世界転移としてこちらの世界に来るだろうし、日本の肉体だと俺には魔力を宿していない。

 今の話を繋げれば俺が魔法を覚えられない事にも繋がる。


 後は能力に関してだけだ。

 レベルを上げる方法や、どの様に使うのかも全く分からないから困り果ててしまう。

 レベルに関しては能力、魔法だけではなく自分自身のステータスのレベルもあるのだ。

 遣り甲斐はあるが、もう少し説明が欲しい所だ。


 「とりゃあ!」


 「おしいわね!もう一回いくわよ!」


 「オッケー!」


 現在、一人でステータスと本を両方見ながらこの世界の情報を頭の中に詰め込んでいると、中庭ではサーニャとミリアが対峙している。

 サーニャが魔法を放ち、ミリアが魔法を斬る練習をしているのだ。


 因みに一番殺傷能力の少ない水魔法での練習だ。

 これだと俺がいない間も練習が出来るし、文句は言われないだろう。


 「アレン、私も実践がしたいわ」


 「はい?」


 「だから、私も魔法で実践がしたいわ」


 昨日、何かを考えている様子だったがミリアと俺の対戦を見てミーシャも対戦がしたくなったのか。


 「……流石に厳しいと思うなぁ。魔法は殺傷能力も有るし木刀みたいに傷が出来ない訳じゃないから」


 「お爺ちゃんに相談しても同じことを言われたわ。けど、アレンなら何とかできない!?」


 この世界で俺の何倍も人生経験のあるディオスさんでも分からないのに、俺に頼むのはおかしいだろ。

 ……だけど、サーニャの発言にも一理あるのだ。


 剣術は相手がいれば適当にその辺の木の棒でも扱い対戦することは可能だが、魔法に関しては人を傷つける可能性が高いので練習が難しい。


 ……一つの判断として魔物と戦うのも有りかと密かに思っている。

 父が最近は魔物が活性化していると述べていたし、森の中に入れば魔物と対戦することが出来るだろう。

 まあ、その辺は今考えても仕方がない。


 目の前の環境で少しでも魔力の向上をしたいと言うのは分からないでもないので、少し考えてみよう。


 「考えてみるけど難しいかな」


 「ええ。私もミリアやアレンが戦ってたみたいに競い合いたいわ!」


 ――――競う?

 サーニャの一言に脳が活性化し、一つの答えに導かれる。


 「ちょっと待ってて」


 二人に言い残し、慌てて近くの誰も利用していない草原に向かう。

 ここなら何をしても怒られることはないよな。


 異世界の葉っぱなどは詳しくは無いが出来るだけ硬くて頑丈になる様に葉っぱを絡めて縄の様に仕立て上げる。

 今は三つぐらいが丁度良いかな?


 三つほど綺麗に草の縄を作り、再び家に戻る。


 「母さん。何か鉄の丸い物ってない?」


 今朝から元気に復活した母。

 その要因は父ではなくミリアの母であるテリサとの雑談だった。

 昨日はミリアが泊まりに来ると言う事でミリアの母も泊まり色々と話したことで元気になったようだ。

 結局父は何もせずに少しだけ不貞腐れたように今日も農業の仕事をこなしている。


 「……うーん。古いけどお料理用のフライパンとかで大丈夫?」


 「それでいいよ!」


 母から少し錆びたフライパンを受け取り、次はどうするか。

 良し。

 次はもう一度草原だ。


 母から受け取ったフライパンを大木の傍に置いてもう一度草原へと足を踏み入れ、頭の中でどのような物を作るかを想定する。


 「…うん。多分出来る」


 今まで色々と経験した技術は駄目にはならない。

 草を再度編みながら、丸い円状を描きながら違う草で間の繋ぎ目を結び、少しずつ完成形に近い形へ変化する。


 「良し!完成だ!」


 丸い円盤が完成し、後は結び目様に三っつほど草を編んで、自分の家の中庭まで戻る。


 「ごめん。少し遅くなった」


 「何を作ったの?」


 「まあ、見てろよ」


 自分の力作をお見せする為に大木に登り、一番近い枝に一つ目のフライパンを編んだ縄もどきの草を吊るす。

 次に、違う枝に丸い円盤、丁度バスケットゴールを意識してボール二つ分の大きさで作った円盤を同じく縄もどきで縛って吊るす。


 最後に手ごろな枝を折り、円盤の隣に縄もどきで縛り三つの的が出来た。

 大木から降りてサーニャたちの戻り、説明を始める。


 「まずは簡単に説明すると、三つの的に魔法を当てるゲームだ。鉄の円盤に当てると十点だ。掠めても良いし、兎に角当てればオッケーだ。次に丸い円盤の中に魔法を入れるんだ。二番目は当てるんじゃなくて間を通さないとポイントは入らない。因みに二十点だ。最後に枝にウインドカッターで横でも縦でも真っ二つに折ることが出来れば、五十点だ。まあ、最初だし十m離れた場所から試してくれ」


 懇切丁寧に説明したが、サーニャの顔色が晴れることはない。


 「私は…対人戦がしたいんだけど」


 うん。

 まあ、これは対人戦ではないな。

 サーニャの競うという言葉からダーツや、弓道、バスケットボールが浮かび、全てを組み合わせて作り上げたのだがお気に召すことはなかった。


 「対人戦の前に物に当てることも出来なかったら無理じゃないか?」


 「こんなの簡単よ。ウォーターボール!」


 十m離れた場所からサーニャがため息交じりにフライパン目掛けて魔法を放つが、


 「あれ?」


 ウォーターボールはフライパンの横を通り過ぎた。


 「十m離れた場所ですら当てられなかったら対人戦は出来ないだろ?」


 「……う、うん」


 「そうだなぁ……。二十発で二百点を出せば次は二十m、最後に三十mで全ての的に当てて二百点を取れば対人戦は出来ると思うよ」


 「分かったわ。頑張ってやってみるわ。アレンも魔法の勉強しなさいよね」


 簡単に言えば『私の為に作ってくれてありがとう。アレンは自分のやりたいことをやって良いからね』と言う事だろう。

 お言葉に甘えて色々と試すことを終えてからサーニャと一緒に俺も的あてに挑戦しよう。


 「ねえ、アレン」


 背後でミリアが近づいて耳打ちするのだが、年頃の女の子が急に顔を近づけるんじゃない!

 ドキドキするだろ!


 「どうした?」


 「二百点って難しいんじゃないの?」


 「うーん、確かに難しいかもしれないけど魔導士なんて魔法を当てて初めて戦えるだろ?二百点とは言ってもフライパンに二回の内に一回当てれば達成できるからな。魔導士が二発に一発でも当てればこの先も大丈夫だと思えるだろ?」


 「うーん。難しくてよく分かんない!」


 説明しながらこの子に理解出来るのかと疑っていたが本当に分かって無かった。

 何で聞いたんだろ。

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