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第9話 次の転生

 しばしの休憩のあと、相賀は次の転生に向けて準備をする。

 その間、女神は先ほどの世界のシード値をメモに残していた。


「それ、メモして何かあるんですか?」

「十分にあるわ。今後の生成において、解析することができるわね」

「わざわざ紙に書いてですか?」

「今はね。それにこのパソコンでもメモは残しているわ」

「それじゃあ紙に書いてる意味ないじゃないですか」

「こういうのはね、手で書いて理解するのが一番なのよ」

「……神様って時々人間くさいこというんですね」

「うるさいわね。ぶん殴られたいの?」

「暴力はんたーい」


 そんなことを言いつつ、二人は次の転生のための準備をした。


「次の転生先は少しシード値いじった世界になるけど、いいかしら」

「僕は大丈夫ですけど、本当にいいんですか?」

「いいって、何が?」

「また変な惑星に転生させたりしませんよね?」

「あったり前じゃない、多分」

「今多分っていいましたよね?大丈夫じゃないですよね?」

「うるさいわねぇ、さっさと転生させるわよ」


 そういって、女神は問答無用でエンターキーを押す。

 すると、相賀の視界は暗転し、次の世界に転生する。

 また若干の浮遊感のあと、地面に降り立つ感覚がした。

 しかし、その時に多少の違和感が生じる。

 多少どころではない。ものすごい違和感だ。

 それは体全体に響き渡る。


「ぐっ……、体が重い……!」


 そう、この惑星では体で感じる程に重力が強いのだった。

 動けないほどではないため、相賀は周辺の探索を開始する。

 この辺は前回の転生と同じ感じだ。

 しかし、今回は多少の障害になるほどの体の異変を伴っている。

 そのため、何をするにしても体に重りをつけているような感覚を味わっているのだ。


「くそ、こんな状態じゃ、まともに移動することもできないぞ」


 重力の変動は、相賀の体をしばりつける。

 そして今回転生した場所は山の中と、なんとも言い難い場所だ。

 途中急斜面なんかを移動するため、体が重くなっている現状では最悪の環境と言わざるを得ないだろう。

 相賀は途中、何度も体を休めながら移動を続ける。

 そうやって歩き続けること数時間、太陽が地平線の向こうに沈む時間になってしまう。


「くそ、今日はもうどうしようもないな……」


 相賀は現在見えている中で、一番安全そうな場所を探す。

 結果、少し登ったところの木の幹が二股に分かれているところが一番安全そうに見えた。

 相賀は、その重い体に鞭打って必死に登る。

 こうして登った所で日は完全にくれた。

 あたりは星明かりのみで、周辺は全く見えない。

 そのため、相賀はこのまま動かずに眠りにつくほかなかった。

 相賀は、念のために時間を確認する。

 この世界の一日の長さを確認するためだ。

 それの確認が終わると、体に重力を感じながら、相賀はそのままゆっくりと眠りにつく。

 しばらくして、相賀はまぶしさを感じて目を覚ます。

 空を見てみると、太陽はすでに比較的高い場所に出ていた。

 相賀はスマホの時間を確認する。

 そして驚愕した。


「夜の時間がたったの6時間!?」


 正確には相賀が寝ていた時間であるため、本当の夜の時間はこれより短いことになる。

 仮に夜の時間を一日の半分として、6時間と設定したとしても、一日の時間は12時間。

 実際にはこれよりも短いため、この惑星の一日はかなり短いことがうかがえる。


「こんな世界で生活なんかできるかよ」


 相賀はほぼ自暴状態に陥る。

 それでも、相賀はこの世界で生きていくしかないのである。

 相賀は、喉の渇きを癒すため、水を求めて移動することにした。

 しかし、こんな広い山の中では、移動することもままならない所もある。


「一回頂上まで登ったほうがいいかな……」


 このままでは延々に山の中をさまようことになる。

 それなら、一回山の頂上を目指して移動し、今後の予定を組んだほうが有益であると考えたのだ。

 早速相賀は行動に移る。

 今は体の不調を言い訳に行動をためらっている場合ではない。


「とにかく行動あるのみ」


 相賀は自分自身にそう言い聞かせて山を登る。

 数時間程度の登山を行う。

 すると、山頂が見えてきた。

 相賀は無事に山頂に到着する。


「はぁ、はぁ、はぁ」


 息も絶え絶えに、相賀は山頂に手を乗せる。

 こんな弾丸登頂も普通の人間ならしないだろう。

 相賀は息を整えて、周辺を見渡す。

 見渡す限り、山が続いていた。


「ここは何かの山脈かよ……」


 相賀は思わずつぶやく。

 その言葉通り、山の頂上付近に雪のようなものが積もっている山もちらほら見える。

 相賀は周辺を確認すると、本来の目的の川を探す。

 周辺を見渡すと、隣の山のふもとに、川のようなものを発見した。

 しかし、そこまで行くには、かなり距離が存在する。

 行くにしても、中々難しいだろう。


「どうするかな……」


 相賀は山頂でうなだれる。

 川までは距離があるが、水を手に入れない限りは死ぬ。

 途中果物の果汁を入手する方法も考えたが、あまりにリスクが高すぎる。

 結果として、どうしようもないというのが現状だ。


「まるで転生ガチャだな」


 そんなボケも、誰もツッコミを入れてくれない。

 その時、相賀の体に異変が生じる。

 体が急な痙攣を起こし始めたのだ。

 呼吸もまともに出来なくなり、胸が苦しくなる。


「ぐ、うぅ……」


 何とか呼吸を整えようと、深呼吸を何度か行うものの、症状はひどくなる一方である。

 胸の痛みに続いて、眼にも痛みが走る。

 そして次第に意識を遠のいた。


「ん、うぅん?」


 次に気が付いた時には、女神の目の前であった。


「やっと気が付いた。今回は前回に比べて早かったわね」

「僕は……」

「あの山頂から転がり落ちたことによる転落死よ。残念だったわね」

「あの症状はなんだったんだろう?」


 相賀は死因よりも、自分を襲った症状に興味をそそられていた。


「ログによると酸素中毒って出ているわ」

「酸素中毒?」

「スキューバダイビングをしている人がなりやすい病気みたいなものよ。あの世界、重力が強かったでしょ」

「えぇ」

「それが影響して酸素が圧縮、それがあなたの体に影響を与えたみたいね」

「……やっぱり転生ガチャじゃないか」

「転生ガチャって失礼ね」


 しかし、相賀にはそれ以上に思う所があった。


「気軽に転生したいとか言っちゃだめなんだなぁ……」


 そんな状況を体験しているからこそ、相賀は身に染みて感じたのだった。

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