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蒼き臨界のストルジア  作者: 夜神 颯冶
海から来た少女
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                                6        

 

彼女はいられた様《よう|に足元の海面を見つめたまま、

歌い始めていた。



『ラーラーラーラーラー』



どこまでも透明な声は、

深淵(しんえん)の夜空に響き渡り闇夜を(いろど)る。



(なみ)()旋律(せんりつ)に包まれ流れる(おさな)歌声(メロディー)



そんな優しいメロディーを口ずさむ少女の横顔を、

海から()れた(ほの)かな燐光(りんこう)が、

青紫の妖艶(ようえん)の中に包み込んでいた。



子守唄こもりうたようなどこか(なつ)かしいメロディー。



夢に たゆたゆように。



永遠に (いざな)うように。



それは世界を調律(ちょうりつ)する歌声だった。



波の音がその(つたな)き声を優しく溶かしていく。



僕はそんな彼女の幼き横顔を見つめ、

いやされてゆくのを感じた。



温かな抑揚(よくよう)



どこか(なつ)かしく(せつ)なくなる声。



渺漠(びょうばく)と広がる海原(うなばら)ひびく声はどこまでも透明で、

幼気(いたいけ)なく、優しかった。



そんなセイレーンの声にさそわれるようにして海原(うなばら)で、

何かが鳴く声が「ピュウピュウ」と聞こえていた。



その優しき歌が世界に溶け込み終わる頃には、

その余韻(よいん)を残す様に、

辺りを潮騒(しおさい)の優しさが包んでいた。



彼女は満天の星空を見上げポツリともらした。



『私あそこから来たの』



一粒ひとつぶ雨粒あまつぶ(よう)にこぼれ落ちた彼女の鼓動こどう



そう言ってだまってしまった彼女の視線しせんの先を辿たどる。



彼女の見つめる先には満月があるだけだった。



不思議ふしぎの海の少女。



そんな神秘的しんぴてきな少女の顔が、

どこか(うれ)いを帯びて見えるのは気のせいだろうか。



彼女は虚空(こくう)を見上げたまま続けた。



『私が宇宙人だと言ったら信じる?』



僕は彼女の不思議な容姿(ようし)を見つめその真意をはかる。



月面保管計画げつめんほかんけいかく・・・

 そこで産まれた最初の子供・・・  』



彼女は付けすように、

腰かけたポッドに手を()え続けた。



『このポッドは宇宙船なの』



どこか夢見るような遠いひとみで、

彼女は静かにそう()げた。



僕はそんな彼女に()いられたまま静かに答えた。



「信じるよ」



そうそれが彼女の空想だろうと真実だろうと、

僕は彼女の言葉を信じる。



彼女は僕に向き直りその真意をはかるように、

じっと僕を見つめ続けた。


 

 

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