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蒼き臨界のストルジア  作者: 夜神 颯冶
海から来た少女
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                                5        

 

僕はそんな青白き輝きに()いられたまま、

つぶやいていた。



海蛍(ウミボタル)、本当にいたんだな・・・ 」



彼女はそんな僕に(うなづ)く。



『うん』



無垢(むく)なその声に。



(だま)って僕を見つめる無防備な瞳に、

僕は()いられ思わず抱きしめたくなる。


そんな僕を不思議そうに見つめ、

彼女はたずねた。



欲情(よくじょう)しているの?』



一瞬その意味が(わか)らず考える。



浴場?浴場?欲情!?



人生のボキャブラリーに無いその会話に、

パニクになりかけた僕を見つめたまま、

彼女は再び(つぶや)いた。



子作り(こうび)?』


その言葉が、

彼女の容姿(ようし)とあまりにかけ離れていて、

彼女が何を言っているのかわからなかった。



深夜の海岸で男女が二人。


(ささや)かれた言葉。



      ─子作り(こうび)


      ─子作り(こうび)


       ─交尾(こづくり)




リフレインする声がいつまでも耳に残る。




目眩(めまい)する世界の中で押し(だま)った僕を、

彼女はいつまでもその答えを待つように

見つめ続けていた。



(あせ)る僕の心情さえ見透(みす)かすような

透明な視線が、僕を(とら)えて離さなかった。



「あの・・・」



僕は生唾(なまつば)を飲み込み言葉を(つむ)ぐ。



「女の子がその・・・

 だからその・・・

 子供は・・・ その・・・ 」



彼女は首を(かし)(つぶや)く。



『子供には?』



そのあまりに無垢(むく)な姿によからぬ妄想(もうそう)(よぎ)る。



このまま欲望の(すべ)てを吐き出す妄想が・・・



僕は大きく首を振り、その妄想を振り払った。



「うん。

 むっむっむっ・・・ 」



『む?』



無理かな・・・



彼女が首を(かし)げる。



邪念(じゃねん)が最後の言葉をつまらせ、

なかなか言葉を出させてくれなかった。



「子供がそんな言葉使ったらダメなんだよ」



ようやく(しぼ)り出したその言葉を、

彼女はあっさり受け流した。



『うん、わかった』



少女はそう言うと興味(きょうみ)を無くしたように

ポッドの(はし)に腰かけ、

足首を海水につけていた。



その余韻(よいん)にひたるまもなく無関心(むかんしん)に。



僕は一人その言葉に苦悶(くもん)する理不尽(りふじん)さに、

(いきどお)るのだった。



子供って残酷(ざんこく)だ・・・



そんな僕の手の上に小さな温もりが(かさ)ねられた。



小さな手から幼き体熱が伝わってくる。



彼女はまるで一人遊びするように、

扁平足(へんぺいそく)の小さな足で水面を蹴っていた。

 

 

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