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蒼き臨界のストルジア  作者: 夜神 颯冶
海から来た少女
4/37

                                4        

 

僕はその中に()い上がり、

その少女を抱き(かか)えた。



途端(とたん)に腕の合間(あいま)から彼女の幼い体熱(たいねつ)(つた)わり、

僕の胸を熱く()がした。



そして意識(いしき)(うしな)って脱力(だつりょく)するその体が、

思った以上に華奢(きゃしゃ)なのに気づく。



()れた髪が、

愛らしい卵型の輪郭(りんかく)をなぞり()り付いていた。


そんな幼き少女の顔が、

彼女がまだ年端(としは)もいかないのを物語っていた。



蒼白(あおじろ)燐光(りんこう)(いだ)かれ眠る少女は、

まるで深海の妖精だった。



彼女の息づかいがその鼓動が、

僕の動悸(どうき)を速めてゆく。



まるで海の妖精を見つけた様な喜びで、

彼女の寝顔を見つめていると、

腕の中の妖精はうっすらと(まぶた)を開け、

僕と目線があった。



彼女は放心した(よう)に僕を見つめ続けた。



僕は何と言い訳していいか(わか)らず、

ただ時間が止まったように

彼女を見つめ続けた。



悠久(ゆうきゅう)の時間、固まった世界が突然(とつぜん)動き出す。



一際(ひときわ)大きな波が船体にぶつかり、

波しぶきを上げ二人の頭上に()(そそ)いだ。



夜気(やき)(まと)った水飛沫(みずしぶき)が、

火照(ほて)った体に染み込んで、

急速に五感が()え渡るのを感じた。



その冷気に視界が鮮明(せんめい)になる感覚と共に、

(いそ)の香りが鼻腔(びくう)()した。



どこか(なつ)かしく、海の(さち)を思わせる匂い。



彼女はそれで魔法が解けた様に(あた)りを見渡(みわた)し、

そして(ふたた)び僕を見つめた。



幼き顔を(かたど)る濡れた銀髪(ぎんぱつ)から、

悲しげに水滴が(したた)っていた。



(わず)かに動く幼い唇。



『ルシフェリンが酸化(さんか)している』



ルシフェ・・・ ?



(わけ)(わか)らず僕はただ彼女を見つめる。



彼女は青く光る海面を指差し(ふたた)びつぶやいた。



海蛍(ウミボタル)。 酸化(さんか)。 ルシフェリン』



うみボタル!?



そう言えばお婆ちゃんから聞いた事がある。



この辺りの海辺(うみべ)には海蛍というのがいて、

夜中に蛍のように光るんだと。



青白く光るそれはまるで、

クリスマスのイルミネーションなんだと。



両親が亡くなって、

落ち込んでいた僕を(はげ)ます(ため)に祖母がついた

昔話なんだと思っていた。



そんな昔話の果実は、

クリスマスのイルミネーションというより、

海原(うなばら)(ただよ)う銀河のようだった。



海の中に広がる星屑(ほしくず)銀河(ぎんが)

 

 

 

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