蒼き臨界のストルジア

そして新世界へ

３４

『メガドロン・・・　』

彼女は千切《ちぎ》れたケーブルを見つめたまま、

そんな事を呟《つぶや》いていた。

それは１５０万年前に滅《ほろ》んだ海の王者。

巨大ザメ。

今まで見つかった化石の中で最大の物は、

全長１８メートル。

まさに規格外《きかくがい》の化け物だ。

「メガドロンって・・・

　１５０万年前に滅《ほろ》んだサメのこと？」

僕は自然と疑問《ぎもん》が口をついて出ていた。

『うん。

　メガドロン・・・　』

深海《しんかい》を見つめたまま呟《つぶや》く彼女の目は本気だった。

本気でその存在《そんざい》を示唆《しさ》していた。

『ケーブル』

彼女は唐突《とうとつ》にそんな事をつぶやいた。

『カーボンケーブルは特殊《とくしゅ》な炭素原子《たんそげんし》で出来てる。

　この世界の海洋生物に噛《か》みきれるものはいない。

　ただ１つの例外《れいがい》メガドロンを除《のぞ》いては。

　メガドロンの咬合力《こうごうりょく》は２０トン 』

それは太古《たいこ》に滅《ほろ》んだ幻《まぼろし》の怪物の影を滲《にじ》ませていた。

「存在《そんざい》するの！？」

当然の疑問《ぎもん》だった。

『うん。

　存在する。

　いえ存在させたの』

DNA操作か！？

まさか！？

『メガドロンは復元《ふくげん》され逃げ出し、

　今もこの海域《かいいき》に潜《ひそ》んでいる。

　この舟が壊れたのも襲われたから。

　ただ水深1万メートルの水圧に耐《た》える船体を

　噛《か》み砕《くだ》く事は出来なかったけど、

　エンジンは壊された 』

それは衝撃《しょうげき》の告白だった。

映画でしか見たことのないメガドロンが存在する！

だが、そんな事が本当に可能《かのう》なのか？

僕は少し考え結論《けつろん》を結《むす》ぶ。

可能だ。

DNAの破片《はへん》さえ残って入れば、

DNAの近いその先祖《せんぞ》のサメの受精卵《じゅせいらん》に、

その細胞組識《さいぼうくみしき》を植《う》え込み受精《じゅせい》させる。

この方法で人工的にメガドロンの子供を生ませれば、

５０%はメガドロンの子供が出来る。

その５０%の子供に再《ふたた》び１００%のメガドロンの

組識を交配《こうはい》させれば７５%。

これを繰り返せばほぼ１００％のメガドロンは完成する。

既《すで》にこの方法でマンモスを復活させる

プロジェクトは進んでいる。

だが既にメガドロンで成功してたとなると、

その何年も前から彼女の組式はその計画を進め、

そのゲノム技術をもっていた事になる。

いや技術事態はその頃からある。

ただその発想があったと言う事が凄《すご》いのだ。

彼女が所属《しょぞく》するアレフとは何かと言う疑問《ぎもん》が、

新たにわいた。