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蒼き臨界のストルジア  作者: 夜神 颯冶
そして新世界へ
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       33         

 

イルカは何キロも先までも仲間と話せる。



その様子(ようす)を聞いている。



 知っている。


 記憶している。



その様子(ようす)を仲間に(かた)()いでいるかも知れない。


最近になって、

急に人間を襲うイルカの事例が出て来たのも、

そんなところだろう。



だからと言ってイルカの(すべ)てが、

悪いわけじゃない。



人間にも殺人者もいれば善人もいる。


日本人にも殺人者がいれば善人もいるのだ。



日本人の一人が殺人者だったとして、

日本人全員が悪人のわけはない。



白人の一人が殺人者だとして白人の全てが、

黒人の一人が殺人者だとして、

その全てが悪人じゃない。



だが人間は人を世界をカテゴリーで見がちだ。



我々(われわれ)国籍(こくせき)や肌の色、

所属する組式などでカテゴライズして、

その組式が不正を働けば、

その全員を悪人とみなしがちだ。



それこそが国家紛争や戦争を引き起こす、

要因(よういん)だとも知らずに。



   人は (おろ)かだ。


  世界は (おろか)かだ。


  大人は (おろ)かだ。



   世界は (きたな)い。


   人間は (きたな)い。


   大人は (きたな)い。



 だかそれでも・・・



それでも、ごく一部の

良心(りょうしん)ある人間がいると信じているから、

僕は生きていられる。



世界を(にく)まずにすんでいる。


世界を(ほろ)ぼそうと思わずにすんでいる。



だがそれさえも信じられなくなれば・・・



僕は彼女を見て思った。


もしかしたらこの津波を起こしたのは、

彼女かも知れないと。



もしこれが(じん)()的天災(てきてんさい)だったとして。


だが、だとして誰が彼女を()められる。



責められるべきはそれを(ほう)()した国家であり、

黙認(もくにん)した社会であり、

それが当たり前だと思っている

国民一人一人なのだ。



それを悪だと気づかない個人なのだ。


その価値観を(うたが)わない日本人なのだ。



その価値観が大量の人の命を(うば)っていると、

気づかない(ゆが)んだ利己主義の集団なのである。


そう言った人間が、

そう思わない人間まで()き込んでいるのである。



(さば)かれるべき人間が(さば)かれず、

裁かれるべきでない人間が裁かれている

この日本なのである。



だがそう言った人間は自分の罪を(かえり)見ず、

相手を()(なん)する。



彼女は自分の家族の命を守っただけなのだ。



先に(うば)ったのは我々なのだと反省しない。



奪われた事だけを、

何の()じらいもなく非難する。



どこまでも利己的で(みにく)い集団なのだ。



 

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