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少女の言葉に、
僕はふっと港町に残して来た婆ちゃんの顔が過った。
「婆ちゃん無事だと良いけど。
町の人は逃げ延びたかな?」
彼女はそんな僕を見つめつぶやく。
『心配?』
「それは心配だよ」
『家族を心配するのは当然。
でも町の人は浜辺に住み着く害虫よ。
心配じゃない・・・ 』
僕は彼女の言葉の意図がわからず、
彼女の真意を探ろうと彼女を見つめた。
彼女は静かに続けた。
『私が浜辺にいたのは、
はぐれたピーピーとキーキーを助けるため。
町の人を助けるためじゃない』
そう言った彼女はまるで、
矜持を纏った戦災孤児が、
隠せない原罪を背負って佇んでいる様で。
その言葉のその先に深い闇がありそうで、
僕は何もな言えず、
ただ彼女の次の言葉を待ち続けた。
『ピーピーのパパとママは・・・
私のパパとママは、
町の人達に殺されたのよ・・・ 』
そう言ってから彼女は、
何かに気づいたようにハッと我にかえり、
慌てて窓の外を見てアクアボイジャーを外した。
ピーピーが何か言いたそうにピーピーと泣いていた。
『ごめんピーピー。
ピーピーに聞かせるつもりはなかったの。
ごめんねピーピー 』
そう言って彼女はうつむきすすり泣いていた。
繋いだ手が強く強く握りしめられていた。
何かの絆を繋ぐように硬く強く。
僕はそんな彼女を恨む事は出来なかった。
ただそっと彼女が落ち着くまで僕はその姿を見守った。
彼女は俯いたまま話を続けた。




