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蒼き臨界のストルジア  作者: 夜神 颯冶
海から来た少女
18/37

                               18        



『大丈夫よ』



いつか見た記憶の彼方の母親のぼやけた顔が、

忘れていたその声が鮮明せんめいによみがえった。



その幻影の輪郭りんかく徐々(じょじょ)にはっきりしてくる。



「母さん・・・ 」



その顔が輪郭りんかくがじょじょにぞうむすぶと、

そこには不思議そうに僕を見つめる幼女の顔があった。



『大丈夫?』



人間、死期が近付くと昔の幻影が見えると言うが、

忘れていた記憶の残像の母に会えるとは

思ってなかった。



僕は幻でも母に会わせてくれた彼女に感謝した。



「ありがとう」



彼女は戸惑とまどったよううつむき無表情でうなづいた。



『うん』



多分人生のあさい彼女には、

その方法がわからないのだろうと思った。



人との距離が。



その温もりのかわしかたが。



なんだ僕と同じじゃないか。



無表情に固まった彼女の表情を見て、

急に親近感がわいた。



僕は好きな子にちょっかいを出す男子の心情が、

少しわかった。



僕はいたずらぽく彼女に話しかける。



「お礼に僕は君を守る」



『えっ?』



キョトンとした彼女に僕は続けた。



「僕は君を守る。君は僕を守る。

      約束      」



そう言って小指を出した。



彼女は僕を真似まねる様に小指をたてると、

僕の顔をのぞき見た。



『約束?』



小指をたてたまま不思議そうに僕を見つめる彼女。



『約束?

 契約けいやくじゃなくて?』



「そう約束。

 契約じゃなくて約束。

 約束は契約より重いんだよ」



彼女は少し考えてからうなづいた。



『ピーピーとキーキーにも同じ約束するならいいよ』



「うん約束する」



そう言って逡巡しゅんじゅんする彼女に微笑ほほえむ。



「日本では約束する時はこうするんだ」



そう言って彼女の指と指をからめた。



びくんとする彼女に僕は微笑み、

約束の言葉を告げる。



「指切りげんまん嘘ついたら

 針千本ハリセンボンの~ます。

 指切った!」



彼女は不思議そうに自分の指を見て僕を見ると、

『ハリセンボン飲むの?』そうたずねた。



彼女が言ってるのは多分動物のハリセンボンだけど、

僕はまあいいかと思いうなづいた。



「約束やぶったらハリセンボン飲まないと

 いけないんだよ」



彼女は途端とたんに痛そうに口をすぼめると、

涙目で僕をにらんだ。



『うん。やぶらない』



そのとき船体に「キューキュー」と言う、

ひときわ大きな声が鳴り響いた。


 

 

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