13
僕は彼女に言われるままに、
そのアクアボイジャーとか言う変な機械のゴーグルを、
頭に被った。
彼女はそのゴーグル擬きに手を伸ばすと、
何かのボタンの様なものを押した。
途端にそれまでピーピー、キーキー言ってただけの、
イルカの声が聞こえてきた。
「つなみ」「つなみ」
二頭同時に何かを言ってきている。
「フィーフィー」「フィーフィー」
「変わって」「変わって」
「つなみ」「つなみ」
なんだかわからず僕は機械を外すと、
彼女にイルカの声を告げた。
「イルカ達がなんだか変わってくれて言ってる」
そう言って彼女に機械を渡した。
不思議そうにそれを受け取った彼女は、
それを被りイルカと話をし始めた。
『うんうん。
沖合いの。
うん。
本当なの?
距離は?
うん。わかった。
大丈夫。
うんうん。バカで、ロリコン。
うん。大丈夫。
聞こえてない。
完璧!』
聞こえてるよ・・・
彼女は神妙にボイジャーを外すと静かに僕に告げた。
『津波が来るって』
えっ!?
「なんで津波が!?」
『沖合いにいるイルカの群れがそう言ってるって』
のんびりした彼女のテンションに、
なんだ津波かと思いそうになるが、
その事実は決して軽視できるものではない。
「大変じゃないか!
すぐに逃げなきゃ」
そう言った僕を彼女は制止した。
『落ちついて』
そう言った彼女の声はとても落ちつき、
僕の反応のほうがおかしいのかと思ってしまう。
『大丈夫。
世界が滅ぶだけだから』
大問題だあ!!!
落ち着け。落ち着け。落ち着け。
てっ!?
世界が滅ぶんじゃ逃げようがないじゃないか!?
彼女はそんな僕の反応を楽しむ様に見つめつぶやいた。
『冗談』
へっ?冗談なの・・・
助かったのか?
『世界が滅ぶのは冗談。
津波が来るのは本当 』
助かってなかった~~~!?
「すぐに逃げなきゃ。
沖合いのイルカが言ってるって、
そんな声が聞こえるって事はすぐ近くまで
来てるんだよ 」
『大丈夫。
それにイルカの声の1つ、
低周波音で警告してきてる。
イルカは遠くと話すときに低周波音をよく使う。
高周波音は一回で送れる情報量が多いから、
近くで話すときはイルカは高周波を使っている。
でも遠くまでは届かない。
わざわざ低周波音を使って来てるのは
遠くから話している証拠。
イルカの声は25キロ離れた仲間と会話出来る 』