表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
9/15

日常3

バイトの時間は、朝の5時まで。


それが終われば次のシフトの人と交代して、帰宅する。

もちろんよく調教された(エリート)ひきこもりであるところの僕は、寄り道なんてしない。

……まぁ寄り道しようにも、店とか開いてないのだけれど。


気が向けば早朝の綺麗な空気の中、ランニングとかをすることもあるが、今日はそんな気分じゃない。

ちなみに、自称ひきこもりであるところの僕は、割と散歩とかランニングが好きだったりする。

完全に自室に篭りきりだったのは過去の話で、今の僕は単なるフリーターと名乗るべきなのかもしれない。

社会に適合出来ず、逃げ出した結果を『自由』と呼んでもいいのならば。


なんだかネガティブなことを考えているうちに、我が家へとたどり着く。

築30年の古ぼけたアパートは、予算ではなく趣味で選んだものだ。

僕が住むのは、二階の角部屋。

廊下を歩き、鍵を取り出したところで、階段を登る音が聞こえてきた。

何気なくそちらを見ると、見知った姿。


「あれ?先輩?……あぁ、バイト帰りっすか」


なんて、軽い調子で話しかけて来るのは、バイト先の後輩。

肩にかかるくらいの黒髪を、一筋だけ赤く染めていたり、片耳に大きなリンゴのピアスをしていたりと、何かと特徴的な外見の美少女(本作に登場する人物は全て20歳以上です)だ。


そんな彼女に返事をしようとして、僕は少しだけその姿を観察する。


「うん。そっちは……あぁ、そっか、朝帰り……」


紅潮した頬に、少し乱れた衣服。


その姿に情事……もとい、事情を察した僕は、生暖かい微笑で言葉を濁した。


「ちょっ…!?何言ってんすか!セクハラで訴えますよ!?」


なんて、元々赤かった顔を更に真っ赤にして、ライブの打ち上げっす!

と叫ぶ彼女の背には、確かにギターケースがあった。


まぁ、わかっていてからかったわけなのだけれど。


「冗談だよ。ライブ、どうだったの?」


一頻り文句を言った彼女は、笑顔で大盛況っす!と笑う。

彼女ーー鈴木紗奈は僕の勤め先の後輩で、ついでに地元ではそこそこ有名なバンドのギターボーカルをやっているらしい。

白雪姫と七人の小人をモチーフにしたと言うそのバンドは、最初こそ色物扱いだったそうだが、確かな実力と、ボーカルである紗奈の容姿のよさも手伝って、今ではメジャーデビュー間近と言われているのだとか。


まぁ、そう言われてから一年以上経つらしいけれど。


人気と実力があっても、成功するとは限らないなんて、本当に難しい世界である。


なんて、そんなことをつらつらと考えているうちに、彼女は一つ大きく欠伸をして、


「ふぁ……折角なんで少し話をしたいとこなんすけど、もう眠くて……じゃ先輩、おやすみっす」


なんて言いながら手を振り、部屋へと入っていった。


それに僕もおやすみと返し、自分の部屋へと帰って、とりあえず1時間ほど仮眠をとることにした。




評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ