前語り
クリスマスが誕生日。
こう言うと、少し特別な感じがするが、実際のところメリットなんて一つもないし、子供の頃であればプレゼントが減るなんてデメリットまである。
まして、それに因んだキラキラネームなんて付けられた日には、虐めの原因にすらなり得る。
実際に僕がそうであったように。
まぁ名前だけが原因だったわけではない。
少し神経質な性格とか、恵まれない体格とか、甲高い声とか……祖母譲りの、青い瞳とか。
クォーター。
単語だけ聞くと、美形を想像しがちだろうけど、みんながみんなそうってわけじゃない。
僕の場合、顔立ちは普通の地味な日本人だし、髪の色は黒。
肌の白さと瞳の色だけが変わっていて、けれどただそれだけが受け入れられなかった。
結果として僕は集団から排斥され、居場所を失い、中学校の卒業と共に普通の人生を諦めた。
それから色々とーーちょっとしたやらかしで家を追い出されたりーーしつつ、現在ではどこに出しても恥ずかしい自宅警備員。
親の金で借りたアパートの一室で、飯食ってクソして寝るだけの毎日を過ごしている。
いや、まぁ正確に言うなら、アニメみたりゲームしたり漫画読んだり、ちょっとだけバイトなんかもしていたりするのだが、それはまぁいい。
さて、そんな無意味で無価値でむしろ有害ですらある僕だけれど、それでも生きていれば歳を取る。
明日で僕は三十になる。
誕生日で、クリスマス。
この時期になると、僕は少しだけいつも何かを期待してしまう。
だって、そうだろう?
せっかく特別な日に産まれて、良いことが一つもないなんて、あまりに悲しい。
だから、今年こそ何かいいことありますようにと。
そう祈って、僕は眠りについた。