表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
竜と居合と中身のおっさん  作者: たぷから
74/97

第3章 3-4 まだ1勝1敗

 なんにせよ、かなり気分転換となった。美味しい食事は大事だ。ただの餌ではない。人生の潤滑油だ。水も飲み、また酒もいつもと違う味のものが出てきた。他の国の酒だろう。グルメブームに栄光あれ。


 「負けました」

 食事が終わり、人心地ついてようやく敗北を受け入れられた。

 「どうしましょう。どうしたらいいんですか」


 「まだ一勝一敗です。午後のアークタとユズミの結果を待ちましょう。ユズミが勝ったとしても、明日、アナタがユズミヘ勝てば二勝一敗同士です」


 「そ、そうか」


 「もしアークタが勝てば、一勝一敗で四人が並びます。そしてどういう結果になろうと、明日二勝一敗が二人となり、決勝戦が行われます。みな、喜びますよ」


 「なるほど……」


 桜葉は明日のシミュレーションをする前に、刀をチェックした。相当派手にやられた気がしたが、刀そのものは魔法がかかっていて、損傷が無い。しかし、鞘が割れている。


 こんなこともあろうかと、バストーラに替え鞘は大量に作ってもらっている。控え室にも、五本あった。古い鞘は捨て、丁寧に油を浸したドラゴン革で拭った刀を新しい鞘へ納める。両手で水平に掲げ、目の高さで一礼し、同じくバストーラ工房製の不格好な刀懸けへ懸けた。


 それから二人でしばし作戦会議を行い、またクロタルが例のマジックカードを取り出して、


 「そろそろ時間です」

 「あ、あの、クロタルさん」

 「なんですか」

 「それって……あたしももらえるんですか」

 「魔力を持っていれば」

 「魔力を」


 「しかし、ドラムは自然魔力(クラント)をハイセナキスへ強制的に回しているので、そのまま(・・・・使える人は見たことがありません」


 そういうこと。桜葉はあからさまに幻滅した。

 「必要なのですか?」

 「いや……その、時間がわからなくて……」

 「時間を知りたいのですか!?」


 久々にクロタルの驚愕しきった顔を見た。桜葉は泣きそうになり、

 「すみません、もういいです」

 「では、行きましょう」

 「はあい」

 この世界へ慣れたつもりでいたが、やっぱり慣れない。

 


 また専用通路から関係者席へ出ると、周囲の客からヤジが飛んだ。

 「惜しかったな!」

 「ざまあみさらせ、この木偶(デク)!」

 「お前のおかげで大儲けだ!!」

 「おれは大損だ、新参が!」

 「もっと気合入れろボケ!」


 どこの世界も似たようなものだ。桜葉は苦笑した。

 「なに笑ってやがるんだ、まじめにやれ、まじめに!」


 桜葉は、芸能人や政治家、役所の人間、店員などが訳の分からないことでいちいち訳の分からないクレームをつけられる理由が分かった気がした。訳の分からない人間が云ってるにすぎないのだ。


 さて、アークタ対ユズミ戦へ集中しなくては。


 アークタはユズミの遠隔攻撃をどう捌くのか。それが、明日のユズミ戦での非常に参考になるはずだった。クロタルからもそう云われていた。


 (魔法じゃねえんだから、ランツーマみたいな自在な攻撃はないはず。なんたって弓なんだからな)


 しかも、長弓だ。威力はデカイが、連射は難しいはず。

 (それより、ユズミは剣のほうが恐いぞ……)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ