第3章 2-6 第2試合 ユズミ対ランツーマ
そもそも、この世界の魔法攻撃が未だにピンと来ぬ。桜葉の認識では、魔法というより格闘ゲームの気功弾やバリアなどの特殊攻撃に近い。呪文を唱えて、火の弾や稲妻、防御魔法がどうの……というものではない。
(何をもって魔法としているのか、定義が良くわかんねー)
と、奇妙なファンファーレが鳴り、ゲームスタート! とたん、観客のどよめきが競技場を揺らす。桜葉も驚いて、思わず声が出た。
「すげえ!!」
二人の攻撃は、申し合いの時の倍近い速度で飛び回り、ランツーマのすさまじい光線連射を続けざまにかわしたユズミが長弓を自由自在にドラゴンの上で構え、実戦だったら金属鎧も貫通できそうな速度の弓を放ちまくっていた。桜葉に、あれらを避ける自信はなかった。
申し合いでは実力を隠していたか、自分の感覚をつかむ程度でやっていたのだ。それにすら、桜葉はほとんど勝てなかったが。
(やっべ……!)
対飛び道具戦の戦術を緊急に練る必要があった。もう、明日だが。
ちなみに、両者とも外した魔法や矢は観客席へ飛んでゆくのだが、競技場自体が防御魔法でおおわれているとのことで、跳ね返って客席には落ちない。
さらにランツーマがそれを利用。ドラゴンの速度を上げてユズミを急激に追いつめるや強烈な光線を放ったのだが、ユズミがそれを見事にかわした瞬間、光線は防壁に跳ね返って弧を描いてひん曲がり、避けたユズミの斜め前から直撃した。
バアン! ガ、ガ、ガ……! 衝撃でユズミのドラゴンが吹き飛ばされ、光と煙のような効果を伴って地面へ向けて流れた。白のゲージが三割近く減った。ちなみに、貴重なドラゴンにも防御魔法がかけられており、元より頑丈なこともあってドラム程度の攻撃ではびくともせぬ。
(うっわ)
桜葉、声も出なくなった。あんな立体攻撃に槍でどう対処するのか想像がつかない。
さらに追い打ちをかけるランツーマめがけ、流されながらすかさず弓を構えたユズミが先に射かける。ランツーマが魔法を発動する直前に、その弓がまともに胴をとらえた。不意打ちクリティカル! すさまじい爆発がして、ランツーマのゲージの四割近くが減る。
しかも衝撃でランツーマがドラゴンより落ちた。やはりそのまま成す術なく落下したが、着地寸前、地面へ向けて光線を発し一瞬浮き上がってそこから転がって着地、ダメージを防いだ。観客が完成とどよめきを発したので、初めて行ったようだ。
「イェフカの戦略が、七選帝侯国のハイセナキスの常識を変えつつあるのです!」
クロタルも興奮して話す。
(そんな、大層なことかね……)
「アアッ!」
クロタルや観客の悲鳴と驚声で桜葉が身をすくめる。見ていなかったが、なんと着地した瞬間を狙い、ユズミが上空から対地攻撃を行ったのだ! バアン! 正確に射られたランツーマ、爆発で転がった。ゲージを見ると、一段目は全て赤くなり、二段目も一割ほど減っている。
だがランツーマの対空射撃が二撃めの矢を弾き、さらに防御壁で三撃めを防いだ。これではきりがないし、面白くも無い。ユズミも大きく回ってドラゴンを下ろし、飛び降りると弓を放して腰の剣を抜く。片手で扱える大きさの剣だが、柄が長く両手持ちもできる。いわゆる、バスタードソードだ。
ランツーマはユズミへ向けて両手を合わせた構えのようなものから、続けざまに光線銃めいた青白い弾丸を発するが、ユズミがパッ、パッと位置を変えて避けてゆく。
(おいい! あんな高速マジックミサイル、どうやって避けるんだ!? 予知かよ!? 余地!? 余地能力!? 十秒先を見通す電気スタンド!?)




