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竜と居合と中身のおっさん  作者: たぷから
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第3章 2-3 桜葉の作戦

 急降下爆撃機でもあるまいし、ブワーン! という嫌な風切り音を立ててガズンドラゴンが急接近する。桜葉はガズ子の機首ならぬ首を上げ、豪快に羽ばたかせるとそのアークタめがけて逆吶喊(ぎゃくとっかん)を仕掛けた!


 「……こいつ……!」 

 チキンゲーム! 互いに極限まで集中する。どちらも逃げぬ!! 

 「うおおおおおあああ!!」


 互いの槍先が互いの胴を取らえ、すさまじい爆発音とともに二人とも宙へ投げ出された!


 ほぼ同じほど、互いにゲージが四割近くも減る。ダブルクリティカル!


 二十数メートルの上空より二人は闘技場の地面へ落ち、防御魔法により躯体にダメージはほぼ無いがゲージが減る。豪快に背中から落ちて地面へバウンドし、アークタのゲージが一割ほど減って上段ゲージのほぼすべてが真っ赤に染まった。しかし……。


 桜葉は指笛を吹いて、地面へ落ちる寸でのところ、ぎりぎり五メートルほどの高さでガズ子に拾ってもらった。そのまま着地し、ドッドッド、と制動中のガズ子の上から飛び降りた。なんとノーダメージである!


 「……な、なんだって!?」


 アークタが驚愕に固まった。ハイセナキスの常識では、ドラゴンより落ちた場合はそのまま落ちるに任せる。その際のダメージは、互いに負うものであって考慮されないとされてきた。それがどうだ。桜葉はいつの間にかドラゴンを訓練し、落ちた際の救出を可能にしていた! まったくそんな発想は無かった。


 むしろ桜葉にしてみれば、当たり前のことだった。なんで落ちたままダメージを食らうのか分からなかった。竜場でその訓練をしていた時にも、なんで誰も見に来ないのか不思議なくらいだった。


 「なんか、曲芸やってるわよ、あいつ」


 ユズミのばか(・・)にしきった言葉を、アークタは思い出した。こちらの住人の発想では、曲芸飛行をやっていると思っていたのだ。


 「だから気にすんなって、気晴らしだろ?」


 そう答えた自分を、アークタはぶん殴りたい衝動でいっぱいになった。今更ながら、イェフカを舐めていた自分に腹が立った。


 もう、桜葉は刀へ両手を添え、抜刀の構えのまま真一文字にアークタへ突っこんでいた。アークタがショートソードを両手で抜いた。が、落ちた衝撃か、金具か何かがひっかかって左が抜けなかった。


 「チィ!」


 こんなリスクもある。それなのに、落ちるに任せていた自分の浅はかさ、無思慮さをアークタが嫌でもかみしめる。


 桜葉の……イェフカの眼光が光った。それを右手剣のみで迎え撃つアークタ、普段なら大振りで上段から剣を叩きつけるのが常道だが、桜葉の、あの刀を抜きざまに攻撃してくる謎の動きではその右手を狙われることがよくあった。桜葉の接近を待ちに待って……一気に突きかかった。


 桜葉は、その攻撃を読んでいた。いや、無意識に身体が動いた。これぞ「型」が「形」となった瞬間と云えよう。融通(ゆうづう)無碍(むげ)。突きを避ける動作は、何種類もの動きがそれぞれの技の中に内在し、嫌というほど稽古してきた。それが無意識に出る。


 アークタの右片手付きを右足を斜め前方に出しつつ右手で抜刀、サッと左足を少し引きつつ体を開いて鞘引きし、突きを避ける動作と抜刀が同時。アークタが、いきなり眼前から桜葉が消えたように見えてつんのめったその後頭部というか延髄めがけ、桜葉は抜刀からパッと手首を返して高々と袈裟気味に刀を八相で振りかぶり、左手を柄へ添えて両手持ちの「引き斬り」で袈裟に振り下ろした。


 バグァンン……!! 衝撃でアークタが前のめりのうつ伏せに地面へ叩きつけられる。生身だったら首が落ちているか、深々と背中を斬られるタイミングだ。


 急所攻撃+不意打ちにより超クリティカル!! アークタのゲージがさらに三割半ほど減った。一気に残り一割半くらいとなった。


 「このやろ!!」

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