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竜と居合と中身のおっさん  作者: たぷから
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第3章 1-2 やらないよりまし

 原因は、自分でも分かっていた。後はクロタルの云う通り、慣れるしかない。


 (型を破って形となり型破り、型通りに戦うわけは無し、型無しなのに戦おうとすることなかれ)


 なんとか落ちつこうとそればかり考える。


 (六段にもなって、型無しだったとはねえ……いや、型にこだわりすぎてるのか?)


 こんな所で居合と自分を見つめなおすとは、思いもよらなかった。あの謎の道場で一人稽古でもしていれば、心境が変わったのかもしれないが、あんな外国の? ドラムに襲われたのではそれどころではない。


 (待て……よ……)

 ここに来て、桜葉はふと思い出した。

 (おれ……アイツと戦って、初戦を少し有利に進めてなかったか?)


 その後の機能停止事件や、帰って来てからの申し合いの日々にすっかり忘れていた。もっともあれは無我夢中で、ほとんど無意識にやったものだが。


 「気負ってるんですかね」

 桜葉が、何とはなしにつぶやく。


 「……え、ええ、そうかもしれません。もっと肩の力を抜いてください。イェフカの性能で、負けるはずがありません。力を出し切れていないのでしょう」


 「それも、実力です。あたしはまだ、実力がまったく足りない」

 「イェフカ、来年もまたありますよ。一年かけて、感覚をつかんで行きましょう」


 桜葉が、クロタルを顔をまじまじと見た。クロタルがたじろいで、イェフカを見返した。


 「な、なんですか」


 「来年なんかありませんよ。今年の大会で賞金を得ないと、スヴャトヴィト式ドラムの開発はきっとお蔵入りです」


 クロタルが息をのむ。桜葉め、滅多に見せないやる気が珍しく出てきた。六段を受けようと決めて一念発起して以来だ。


 (ただ惰性的に稽古したってためだ。申し合いも、このままじゃ向こうも時間の無駄だ。魔力の流れをつかまなきゃ……ドラムと一体化しないといけないんだ。おれはまだ……ドラムと……この身体と、一体化してない……!)


 桜葉は控室を片づけ始めた。椅子をテーブルをどかして、スペースを造る。

 「ど、どうしました」

 クロタルが動揺した。


 「少し……一人でこの刀を使う練習をします。今更……とお思いでしょうが、身体の中で魔力がどう動いているか……つかみたいんです」


 「な、なるほど……!」


 ふつう、そういうものは実戦の中でつかんで行くのだろう。クロタルの云う通り、だいたい一年ほどでつかめるのかもしれない。しかし桜葉は、それでは遅い。もう選手権は来週だ。この選手権で結果をつかまなくては、零零四型の開発は中止となる。


 「で、では明日と明後日の申し合いを取り消してきます」

 「最後の日だけ、もう一度アークタとやらせてください」

 「頼んでみます」

 クロタルが出て行く。

 (たった二日でなにができるか……)


 それこそ、文字通り「付け焼き刃」だ。ただ、付け焼き刃だろうがなんだろうが「やらないよりまし」とも云える。


 前の世界で自身が所属していた連盟の定めている居合の型十四本と、古流武術として習っている無想影心流(むそうえいしんりゅう)居合七十四本(二人で行う相対型十八本を含む)をじっくりと繰り返す。技の向上が目的ではない。いまさら向上なんかするわけが無い。身体の中の魔力の動きをとらえ、技と自分の魔力の発動を一致させる。


 今までは、魔力炉が……すなわちドラムが自分の技や攻撃へ勝手に魔力を発動させているのだと思っていた。が、どうもそれでは遅いのではないかというのは、何となく分かっていた。アークタが最も速い。こちらが動いて魔力が発動、ピークへもってゆく前に、(せん)(せん)で攻撃を叩きこまれる。アークタ達は、どういうわけか桜葉より魔力ピークへ到達する時間がとても短いのだ。

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