表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
竜と居合と中身のおっさん  作者: たぷから
23/97

第1章 3-3 アナタ、本当に

 ひょいと雑多な物影より出したものに、桜葉は驚いた。丸まっていたが、手にとって広げてみる。まさに刀の(つか)に巻く鮫革……鮫といいつつそれはエイの革なのだが……であった。


 「あっ、これ……これです! ちょっと違うけど」

 「なんですか? これは」

 クロタルも興味深げにその革を見た。


 「レルバドラゴンの、喉の革だよ。こちらの方の云う通り、これを武器に巻く地方があって、その武器を使う人のために在庫を常に持っているんだ」


 「そうですね、これを柄に巻いて、その上に軟らかい鞣革(なめしがわ)を紐状にしたものをこう、グルグルって巻いて……ほんとは編むんですけど……巻くだけでもいいです。で、刀の(なかご)に穴をあけて、それへ柄ごと丸く細く削った固い木を通して止めにしてください。それから大事なのは(さや)です。鞘は柔らかめの木から削りだして、こう、刀身に合わせて両側から何か接着剤で貼ってください。それへ、樹液か何かの塗料を塗ってください。柄頭(つかがしら)は……」


 桜葉は必死になって、手持ち黒板へ図を書きながら説明した。クロタルはほとほと感心して、そんなイェフカをジッと見つめ続けた。


 「よし分かった」

 ひとしきり桜葉の説明を聴いた後、バストーラがうなずいた。


 「ここの施設で再現できそうだ。いんや……ここでなくちゃ、無理だろう」

 「ほんとですか!!」

 桜葉がホッとする。


 「でも、コロージェン村には、それを作っている職人がいるのでしょう?」

 突然のクロタルの指摘に、桜葉がしゃっくりのような声をだす。


 「まあ待て。こんな武器、聴いたことも見たこともない。あったとしても、おそらく名も知れねえ天才的な職人がかつて生み出したんだろう。それも、既に亡くなって、作られなくなって久しい……違うか」


 「え……ええー、そうなんですよ!」


 桜葉のひきつった笑顔に、バストーラは満足げにうなずいた。クロタルは、半信半疑の色を遠慮なく浮かべている。


 「ええと……まあその、その、祖父の知り合いの友人の知人のツテで……村からさらに奥の山の中に、その戦闘術と刀剣の作り方を引き継いでいた職人が……おりまして……もう、何年も前にいなくなってしまい……その……そういうわけなんです、ハハハ」


 手振り身振りを大げさに行い、最後は乾いた笑いをだすのが精一杯だった。しかし、バストーラは腕を組んでうむうむとうなずき、


 「たいしたもんだなあ。やれるだけやってみるから、あんたも協力してくれ」

 「もちろんですとも!!」

 桜葉が、さらに熱心に解説し、バストーラも違う黒板へ図を書いて質問する。


 「……ベルトへ吊るす固定具はどこへ?」

 「あ、固定具はいりません。腰に……布を巻いて、そこへ差します」

 「ええ?」

 「こんな感じで……」

 さらに身振りをそえて説明を続ける桜葉を、クロタルはついに猜疑心の眼で見つめ始めた。

 


 「とにかく、明日からさっそく試作してみる。おれ専用の工房は、ここの奥だ。作業のついでに呼ぶから、来てほしい」


 「分かりました」

 バストーラと別れ、ちょうど夕刻になったので桜葉は食堂へ向かった。

 (……よしよし、なんとかなるかもしれない……良かった……)


 なにとはなしに、上機嫌だった。珍しく桜葉の後ろを歩くクロタルの、次の言葉を聞くまでは。


 「ねえ、アナタ」

 「え?」

 「本当にスティーラなの?」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ